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現代アメリカ政治を見る眼 保守とグラスルーツ・ポリティクス みんなのレビュー
- 吉原 欽一 (編著)
- 税込価格:2,530円(23pt)
- 出版社:日本評論社
- 発行年月:2005.4
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紙の本
終わりなき保守「革命」
2009/02/24 21:47
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、2000年に刊行した『現代アメリカの政治権力構造--岐路に立つ共和党とアメリカ政治のダイナミズム』の「改定新版」としての性格をもつそうである。
また、第4章は『G・W・ブッシュ政権とアメリカの保守勢力 現代アメリカ共和党の分析』に編著者が執筆した論文を加筆・修正したものだ。出版社は異なるが、『G・W・・・・』の続編的な性格をもった本でもあると思う。
一部に説明不足の点もあるが、文章は平易で読みやすい。帯文の「日本人の常識的アメリカ政治観を覆す本」というのはおおげさだが、アメリカの現代政治に関心のある方にとっては押さえておきたい本の一つだと思う。
第1部「保守とグラスルーツ・ポリティクス」では、2002年中間選挙~2004年大統領選挙で一つのピークをむかえる保守勢力のポリティカルパワーの伸長を、主に1990年代以降の動きに比重をおいてていねいに分析している。
著者は1994年の中間選挙を、現代アメリカ政治における「一大転換点」として位置づけている。メディアによる喧伝ふうにいうなら「ギングリッチ革命」とも呼ばれたものだ。それはまさに・・・
《ギングリッチによる「共和党改革のシナリオ」は、「改革」と呼ぶにはあまりにも大胆なものであった。あたかもそれは、保守による共和党の「乗っ取り」であったといってもよい。》
共和党を支持する強力なグラスルーツ連合を創りあげた中心人物であるグローバー・ノーキストの存在も大きい。ノーキストが主催する「水曜会」が核となり、クリスチャン・コアリション、全米ライフル協会、全米独立企業連盟などの保守系グラスルーツ団体を大同団結させることになる。
共和党はが下院議会で念願の多数派になったのだが、このあと紆余曲折ある。メンバーの離反、ギングリッチの退場といった人間模様だ。足の引っ張りあいは、権力のあるところどこでも見られることではあるが。
それでも2000年には大統領府をも「奪還」し、これを中心とした「円環構造」を保守勢力は形成するにいたる。著者は、《その様は、まさに「終わりなき革命」を希求する「運動体」のようである。》と表現している。
2009年に戻ると、オバマ大統領の「超党派路線」もつまずきをみせているようである。ここ数年傷つき「円環構造」は崩れたとしても、いぜん保守派の地盤は強固である。「ひとつのアメリカ」の実現は簡単なことではない。
いや、アメリカは本来「多元的な社会」であるのだから、「ひとつのアメリカ」は半分は単なるスローガンであってもいいのだ(民主党と共和党とのぶつかりあいは避けられない)。残りの半分で「おたがいの歩み寄り」を体現する。それがどうなるかで「多様性のなかの共存」、またはレイプハルトのいうところの「分断社会共存型デモクラシー」の実現度が決まるのだろう。
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