紙の本
がんばれ、サラリーマン
2005/05/28 20:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jis - この投稿者のレビュー一覧を見る
サラリーマンってなんと、辛く、悲哀に満ち、だが時には爆発できる商売なんだろうか。一昔前、高度成長時代「サラリーマンほど気楽な商売はない」などという言葉が頻繁に使われていた。今や、中高年は言うまでもなく、新卒の就職率が最悪になりニートの大量発生の時代になっている。
この物語の主人公、スバル運輸吉野公啓は、やり手の特徴である組織からはみ出すことに、躊躇しない行動力と企画力を持っている。それ故、嫌み・妬みから出る釘は常に打たれる。最初の場面は、窓際行ともとれる人事異動からだ。人事ほど、サラリーマンの関心のあるものはない。中途半端に出来る者は、そこで萎えてしまう。だが彼は違った。
自分のネットワークを駆使し、情報を収集し、目的達成のため、全勢力を傾ける。目標は年間4億のノルマ。人事評価最低の営業マンと1人のアシスタントだけで達成せよとの命令。無理を承知の嫌がらせともとれる処遇だ。
アイデアは身近なところにある。出会いは身近な所から始まる。ほんの偶然が、状況を大いに変える。出会いが出会いを呼び、新たな事業案に結びついていく。宅急便業界の限界を十分知悉し、これからの行く末を考え、さらに基本理念として人々の生活を豊かにし社会のためになるビジネスの創出、これである。
このプロジェクトの内容については、本を読んで貰うしかないが、会社組織の中での個人のあり方とか、プロジェクトを動かす方法とか、上司と部下の関係とか、時には破天荒な掟破り(会長に直談判)が必要とか、実際役に立つ事例が一杯である。最後に主人公が人を動かすとは、「夢を与えることである」と言う場面があるが、親の死に目にも会えないほどの情熱を持ってする仕事の意味がここでも伺える。
若いサラリーマンとか、これから会社人生を送ろうと決意している若い諸君には随分励みになり、参考になるであろう。定年前のサラリーマンにとっては、少し甘酢っぽく、羨ましい読後感を味わえる作品である。
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この頃の楡周平は、何作か流通産業をネタにした経済小説を書いている。
その中でも、個人的には一番面白いと思っているのがこの作品。
根本的な大企業と物流業界の弊害と、真っ向から向き合いそれを一つづつ乗り越えていく所はまさに圧巻。
ただ、作中で根本的な問題点の解決法が経験でも知識でもなく運に頼ったところがあるのが、少し気になる所だろうか?
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ひたすらに熱かった
主人公はすばらしきアイデアマンなんですが
ヒットを生む一方で沈んだアイデアは他人にまかせきり
食い散らかすだけ食い散らかして…との評価
そんな仕事ぶりが会社では反感をかったのか左遷人事
を受ける
しかしそこでくじけず新しいアイデアを構築するも直属の上司により却下
でもくじけない、普通の話なら会社を辞めて…
となるところだが彼は違う
同じ土俵で戦えないのなら新しいフィールドで勝負すればいいのだ…
とさらに熱く勝負を賭けに行く
そっからはとんとん拍子というか、盛り上がりすぎて
流したのかという感じなんですけど、ずっと高いテンションで行ってますんで気になりません
左遷人事させられた理由を忘れてしまうほどの主人公の
変貌振りが若干気になるところですが、以前仕事の鬼だ
たのにも理由があったりしてそれもなんとなく解決
直属の上司も然るべきとこにおさまりハッピーエンドです
熱い気持ちとか、仕事へのモチベーションとか、人間臭さとかいろんなことが詰まった作品ですな
気持ちよく読めたので満点です
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私の子供時代には「宅急便」というものがありませんでした。 数十年後、物流の量がいちぢるしく増えて、業者、業態も多様化が進んでいるのは感じていましたが、logisticsという分野の現場をシロウトにもわかりやすく、楽しく見せてくれる本でした。 小説としても、ドキドキさせる部分が大きく、介護の問題などもからめて興味深く読めました。
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WOWWOWで3/6放映。
この作者の朝倉恭介シリーズ6冊もボチボチ 読みたい。
いなべ市北勢図書館-------県立。
「企業内起業」というより・・・ビジネスマンの再生の物語。最新の経済情報・・・2003.12.11~2004.12.9「週刊新潮」連載(原題・再生頭脳)を加筆・修正・改題)・・・ちょっと古い?
スバル運輸=佐川急便?
描かれている群像が私の再生のキッカケになるか?
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今まで読んだ経済小説の中でダントツだった。テーマは物流業界の宅配事業。新規事業を任された主人公がヤマト運輸のビジネスモデルを変える事業を立ち上げる話。競合商品を使う、クロージング、ビジネスとは。何回も読む
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また凄い作品に出会ってしまいました。大手運輸会社に勤める営業マンが左遷人事で新規事業開発部長に追いやられるところから物語りはスタートする。資源の無い部署で己のビジネスセンスとアイデアだけで業界に勝負を挑む。社内や客先でのプレゼンの場面や、プロジェクトの中でアイデアからビジネスモデルを作り上げていく過程などはとても勉強になった。熱い気持ちで仕事できる喜びを思い出させてもらいらいました。
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当初、「再生頭脳」というタイトルだったのが頷ける。独創的なアイデアをプランに落とし壁を突破し実現させていくプロセスが現実性を持っているのでどんどん入り込む。「脳みそに錐を刺しこんで血が吹き出るまで考えろ。」「新しいビジネスを模索することを止めた会社に未来はない。」「上のあがるということは人を育てるプロセス。」
その通りだね。
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経済小説はずいぶん久しぶりに読む。運送業から販売業に手を広げる話。きっかけはコピー機にカウンターをつけて、その情報から紙の補給をするというところから、紙以外に、さらには一般家庭の宅配に広げる。その業務を街の電気屋さんに任せようというもの。量販店よりも安くかつ宅配というサービス業を成立させる。
事業展開の方法、データが具体的でかなりのリアリティがある。徹底した取材をしているのだろう。本当に実現できるんじゃないかと思わせるのは経済小説としては成功でしょう。
ネットで購入することが増えて、そうなると送料というのが気になる。事業としても大きいものがあるだろう。運ぶだけの運送ではなく、そこから販売に手を染めていくというのは考えられるシュミレーションだ。
運送業でなくとも、新規事業を起こすにあたり、展開の仕方、数々のトラブルの解決方法、手法、またいろんな業態の内実など経済小説ならではの面白さが横溢している。
少し気になるとすると、あまりにトントン拍子すぎるところ。営業部長の反対にあい、社主に直訴に行くなど難航するように見えて、事業本体は計画を上回ってうまくいく。まぁ読者に活力を与えたいという意味ではそのくらいがいいのだろう。現実ではかなり挫折を味わってるだろうから小説の中くらい成功体験を共有したい。
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大きな組織であるほど個人の役割は細分化され,個人は一つの歯車となります。しかし,同じ歯車でも交換できる歯車と交換できない歯車があることに改めて気づかされました。
既にシステムが構築された運送会社の一人の男が新たなビジネスの立ち上げを目指し奔走する物語です。いくつかのキャラクターがうまく設定してあり,飽きさせませんが,話が少しうまく行き過ぎる感じは否めません。
些細なアイデアがどんどん膨らみ,巨大なプロジェクトへと変貌していく様子は,サラリーマンの可能性や仕事とは何かを考えさせられました。
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話としては少し出来すぎのような気がしないでもないけど吉野の鋭い着眼点と問題点の洗い出しの能力はビジネスマンとしてもずば抜けているように感じた。経済小説と言うと前提となる知識を問われることが多いが本書は横文字こそ多いもののそこまで経済をメインに据えているものでもないのでその手の知識がほとんどない僕にも入り込みやすかった。本書は2011年3月6日には、WOWOWでテレビドラマ化された。詳細→
http://takeshi3017.chu.jp/file5/naiyou8507.html
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20190502
運送会社で新規事業を立ち上げるまでのドラマ。
運送業界について詳しく書かれていて、楡さんの作品にはいつも感心させられるばかり。
佐川急便とアマゾンを足したようなビジネスモデル。
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読みながら熱くなる。
営業力はピカイチ。
しかし、部下は自分の道具としか考えていない。
そんな男・吉野の成長物語。
スバル運輸の営業部次長、吉野はある日、新規事業開発部部長の辞令を受ける。
人員二人。ノルマは4億。
これは一見昇進という形を取りながらその実、部下・吉野の傍若無人さに手を焼いた三瀬常務の仕組んだ左遷人事であった・・・。
楡さんの小説やロジスティックスがテーマのものは初めて。
困難から這い上がる小説はほぼハッピーエンドになるので、読後感が気持ちいい。
30年ほど前、仕事で送り忘れていた荷物を当日便で送り、
「お前に運送費3万円の決裁権限があるのか!」
叱られて初めて気づいたことを思い出した。
サンキュー、今回もいい小説のオススメ、ありがとう!
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運輸業界の壮大な物語でした。強烈なリーダーシップを持った人は周りにいないけど、自分もこれから何か出来るのではないかと思わせてくれました。