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これまでの名作選4巻分はうってかわった異色の作品。
掲載誌がりぼんということもあってか、笑わせるというよりかは、むしろ夢のような、そんな作品。
もしも自由自在に、鏡に映したみたいにいろんなひとになれたなら。自分にできないことでも、なんでもできちゃう、そんな気がする。自分では伝えられない、そんなことばでも、あの子の憧れのひとならきっと聞いてくれるかな。あの子をうんと叱ってもらうには、このひとの方がいいのかな、とか。そしたら、どれだけうまくやっていけるだろうか。
自分ではない何かになることに一度は誰もが憧れたはず。そういうたわいのないけど大事なことを考えていくのにはこのくらいの子がちょうどよかったのだろう。
ドラえもんの道具と違うのは、姿だけで、中味はアッコちゃんのままであるというところ。別にアッコちゃんが強くなったり特別なことができるようになったわけではない。ただ、そのなりたいひとの姿形をまねている、それだけだ。しかも、その存在はアッコちゃんや真似たひとと同時に存在することは許されない。彼女にできることは非常に限られている。そんな限界を知っているからこそ、彼女は一番なりたいものになれる。何よりも自由な証拠である。
この物語にどういう幕引きをつけたのか、わからないが、きっと鏡なしでもやっていける、そんなひとりのアッコちゃんの姿がどこかで浮かんでいるような気がした。