紙の本
『ナラタージュ』と比べるとずっとライトで楽しく読める。青春のほろずっぱさを感じたい方には最高の作品です。
2005/06/26 15:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『たとえ私が四十歳になっても六十歳になっても、海を見るたびに、初めて来たときに一緒だった長月君のことを思い出すんだなって。たとえ私たちがお互いを嫌いになって別れたとしても、その気持ちとは関係なく懐かしんだりできるんだね』(本文より)
本作は文芸雑誌「ウフ」に連載されてた6編と最後に「ダ・ヴィンチ」に掲載された短編1編が収録されている。
実質は連作短編集と言えそうである。
前作『ナラタージュ』で狂おしいまでの純愛を描ききった島本さんであるが、本作はライトな短編集に仕上がっている。
どちらかといえば青春小説として楽しむべき作品だと言えそうだ。
切なさと言うよりほろずっぱさを強く感じたのである。
「ウフ」に掲載された6編は大学生を中心とした男女が出てくるのであるが、全6編中3編が男性視点で描かれている。
大きく注目すべき点である。
「風光る」は女子大生である真琴が主人公。
長年付き合ってきた哲との別れの場面に遭遇。
続く「七月の通り雨」では真琴の高校時代からの友人である瑛子が主人公。
女の友情というテーマと言ってよさそうな内容である。
3編目から5編目までは男性の視点から描かれる。
今までの島本イメージとはちょっと違うが、巧く書けているのには驚いた。
「青い夜、緑のフェンス」では真琴たちのいきつけの店のバーテン鉢谷が主人公。大柄で少し引っ込み思案の彼と幼馴染の一紗との男女間の友情が描かれる。
「夏の終わる部屋」では鉢谷の友人の長月の恋愛模様が描かれる。コンパで知り合った操とのエピソードは本作の中では一番熱くさせられるシーンが待っている。
「屋根裏から海へ」では真琴のかつての恋人である加納が登場。家庭教師先での沙紀との交流を通して少しづつ変化して行き再び真琴と接近する。
6編目の「新しい旅の終わりに」は温泉旅行に出発する真琴と加納が描かれる。
最後の「夏めく日」は別物語である。
高校が舞台で、したたかな女子高生が描かれている。
遊び心満載の作品だといえそうだ。
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全体を流れる心地よさは島本理生特有のものであろう。
少し吉田修一の作品に通じるものがあるかな。
登場人物は総じて不器用であり、その不器用さが共感を呼ぶという点において・・・
登場人物は傷つき悩みながらも成長を遂げる。
島本作品に共通して言えることは読者にも成長や変化をもたらせてくれる点である。
たとえば既婚の読者が手に取れば、過去を懐かしんだり素直な気持ちを取り戻すことが出来る。
同年代の方が読まれたら・・・私がこの場を借りて書くまでもないであろう(笑)
島本作品には失恋の辛さを跳ね返すだけの大きな力が備わっている。
今を描ける作家として今後のさらなる成長を期待したいと思う。
2005年、ディープな『ナラタージュ』とライトな本作の上梓。
読者にとって島本さんの高き才能は大きな財産となった。
次はどんな世界に連れて行ってくれるのであろうか。
読者もひたむきな気持ちで接したいものである・・・
活字中毒日記
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20歳前後の若者達を主人公にした恋愛短編集。忙しなく暮らしていれば気付かずに通り過ぎてしまいそうな、ありふれた、ささやかな出来事を描くのが凄く上手い。1作目の「風光る」と、3作目の太ったウェイターの男の子の話がよかった。
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全体的にすごく好きな感じ。本筋とか関係ないかもしれないけど、若いからチヤホヤされてるだけだっていった男に対して「そんなふうに思うのは、結局、あんたが女の顔しか見てないだけでしょう、皺だらけになっても背中が曲がっても私は私なんだからべつにちっとも怖くないんだよ」って台詞が好き。
真琴さんと針谷君が好きだった。
☆☆☆☆+
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それぞれの短編の登場人物が関連している、連作短編という形式が新鮮だった。
登場人物は不器用ではあるけれど、好感の持てる人物が多い。
たぶん自分の周りにも身近に存在していそうな若者たちの物語。
その自然な姿をさらっと描いているところが、この作家の共感の持てるところ。
個人的には、『青い夜、緑のフェンス』と、『屋根裏から海へ』が好き。
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オムニバス、ではないのか。ひとつひとつがどこかでつながっている短編集。ささやか、とか日常、とかそういう言葉が似合う。
この人の文章は、句読点のつけかたとか文章の書き方がたまに合わないけど嫌いじゃない。
「風光る」と「屋根裏から海へ」と「新しいたびの終わりに」がすき。ようは加納君がすき。
(06/01/30)
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おそろしく普通の人の話でおもしろかった。前回ナラタージュで葬式で先生につめよるときに悔し泣きするという変な泣き方をしたが、こっちもまた変なとこに感情移入をして泣いた。
ちょっと私は恋愛する体力ないやと思った。
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短編集。それぞれの話が微妙にリンクしているのも面白い。帯裏に書かれた真琴の言葉に魅かれ購入しました。精一杯丁寧に生きる登場人物たち。加納君が好きです。収録作品の中では一番最後の「夏めく日」が好き。
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ゆっくりと自分のことが好きになりそうな本
恋愛ってうまくいかないことがおおくて、でも、それでもあたたかく生きていく気持ちが伝わってくる
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オムニバス。それぞれの個性的な登場人物たちと、淡々としたそれぞれの恋愛。[06/07/25]
静かなものが読みたくて、久々に読んだ。面白いけど、登場人物が皆似てる感じもする。[07/01/21]
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それぞれのストーリーが少しずつリンクした、静かな恋愛短編小説。出てくる人みんな、完璧じゃないけど清くて普通で好きです。
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哲もつられたように立ち上がった後で、かなり遅れて私の頭を撫でた。子供や小動物に興味がないという顔をしながら、彼は通りすがりの子供をあやしたり(むしろ驚かしたりと言うべきかもしれないけれど)、そういう小さなものを愛でているような触れ方をする。その人の体温を感じる文章だなぁと思った。疑似恋愛したような・・哲君や加納君のこと、好きになっちゃいそうだったよ(笑)針谷君と一紗ちゃんの関係もいいなぁって思った。彼氏以外に頼りになる男の子って欲しいよね。それって利用してるだじゃん、て感じだけど(笑)奥で分かり合ってるっていうかさ。あーでも私、傷付けちゃうかも!優柔不断だから揺れちゃって苦しいかな。ごくごく普通に、だけど丁寧に描かれてて良かったです。たくさんの人を好きになりたいっす(*´∀`*)(20060930)
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主人公が次々に周りの人へとリンクしていくかたちの短編集。短い中にも一途な想いがしっかり詰まっています。だけど軽い感じで読めます。
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キラキラな7つの短編が入ってます☆『ナラタージュ』読んだ時も思ったけど、人物描写がとても上手。ひとりひとりのキャラクターが生きてて、細かくイメージできちゃうくらい。だから激しく感情移入できちゃって、別れの場面がつらい。自分がその人とまさに別れてるみたいで。「屋根裏から海へ」っていう短編が特に好きだ!
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やっぱりこの人の文章が好きだなー、と実感しました。
一番好きな話は「青い夜、緑のフェンス」でした。一紗と針谷の関係がとても好きです。針谷が「俺のことなんて好きになるはずがない」と思いこんでしまうコンプレックスがよくわかります。永遠に、とはいかないだろうけどできるだけ長くあのままでいてほしいです。
哲はいい男だと思うからすぐ出番無くなってしまったのが残念でした。加納君も素敵だけど、絶対A型ですね。恋人には欲しくないタイプです。
あとがきの通り、どのキャラも不器用で隙があって、だからこそ人間らしくていとおしかったです。
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島本理生さんの描く恋愛にはいつも憧れるー。
「屋根裏から海へ」の中の加納君と沙紀のやりとり
「僕はあなたに不誠実な人間になってほしくないんです」
「あなたは今まで誰かに対して不誠実になったことは一度もないの」
「ありません。その代わりに、そこまで愛憎がごっちゃになるほど誰かを好きになったこともないけれど」
深いな、と思った。