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ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 みんなのレビュー

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紙の本

やっぱり50間近っていうのが見えちゃうかなあ、海外の扱いかたがイマイチ、だし、心が動かないもの

2005/10/07 19:14

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

ええ、カバーの写真はとっても上品で、造本ともども好きなんですが、書いてある注を写そうと思ったら、全部英文で、おまけにやたら“ ”で括ってある文が長くて、おまけに新潮社が気取って自分までも英語で、Design by Sihinchosha Book Design Division なんて表記するものだから、思わずこっちもペンギンみたいに憂鬱になっちゃって・・・
とまあ、中途半端な引用をさせてもらえば For the photograph ’Ambrussum France、1999’on the cover ということらしいです。で、ここまで英語づいちゃうっていうのがお話の内容に関連していて、それでいてカバータイトルの作品は、実際には本に収められていません。収められているのは「ドイツイエロー」という題の話を含む四つの物語。
フランス人の父親と日本人の母親の間に生まれた私、離婚した両親と離れ祖母と日本で暮らす私の恋の喪失と不安「キャトルセプタンブル」、私と母を捨ててアメリカに行ってしまった父、19歳になったかれんの恋とも不倫ともつかない関係は「容認できない海に、やがて君は沈む」、東京の大学で出会った理佐子と洋一、彼が育てるグッピーの色は「ドイツイエロー」、28歳の私が思い出すのは高校時代の別れと20歳のときの出会い「いつか、マヨール広場で」。
さて、大崎ですが全く知らない作家です。で、小説を読んだ第一印象なんですが、若い女性を扱ったわりに若さを感じないなあ、というのが大きいです。しかも、離婚した親ばっかり出てきて、何だろうなあって。文章だって、手堅いけれど、躍動感とか軽妙さとか、いわゆる若いセンスを感じることはないわけです。
あれ、なんだろう、各話のタイトルは、それこそSFかなんぞの小編みたいなのに、と思って著者略歴を見て納得。1957年生まれですから、もうじき50歳になろう、っていう年齢です。ああ、このひと若い女性が好きで、主人公にしちゃったんだろうな、なんて一人納得したりして。おまけに、いつも復縁を迫るのが女性の側って発想が陳腐っていうか。
どの作品も発表誌は小説新潮です。新潮じゃあないわけで、それは今まで書いてきた印象と関連するのかななんて思います。ここらについては、先日、村松友視『幸田文のマッチ箱』を読んでいて、その中で村松が盛んに文芸と純文学みたいなことを書いている、それを読むたびに、こいつ何か思い上がってんじゃないの、しょせん文学者なんて河原乞食と同じジャン、と反発を感じた、それを思い出します。
小説は、それ自体としては以上でも以下でもなくて、それを何ものかにするのは、斎藤美奈子いうところの誤読をした読者の力なのです。で、この大崎の話に関して言えば、少なくともここに収められた作品は、どれも人を動かすことはないだろうなあ、でもそれは文芸だ純文学だ以前の問題ではないのか、海外生活や帰国子女を出せばそれで何とかなる時代は終ってるよな、そう思うわけです。

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