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紙の本
「社会起業家」という存在を日本に紹介した原典となる本。とくにビジネスパーソンには読んでほしい本
2010/04/27 16:50
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「社会起業家」18人のヒューマン・ストーリーを、著者自身の撮影によるポートレート写真と文章によって紹介した本である。
いまでこそ「社会起業家」といえば、日本でも若年層を中心に知る人も多い存在となったが、出版された2005年当時はこの概念が生まれた米国はもちろん、日本では一般的な認知度はけっして高くなかった。「社会起業家」というコトバを世の中に広めるキッカケとなった本書の意義はきわめて大きい。
著者は米国で30年近く過ごしてきた写真家だが、はじめて米国に住み始めた頃、ある米国人から米国人と比較したときの日本人の特性として、日本人には「コンパッションが欠如しているのではないか」という痛切な指摘を受けた体験を「あとがき」に記している。
コンパッション(compassion)とは、著者の表現を使えば「単なる同情を越えて他人の気持ちを思いやり苦しみも喜びも分かち合う」という意味だ。米国ではキリスト教をつうじて社会全体に当たり前のように定着している。コンパッションは仏教でいえば「慈悲の心」、ダライラマ14世が英語の説法でよく使用するコトバでもあるが、仏教国であるはずの現代日本人にコンパッションが欠けていると米国人の眼にうつるというのは、私自身もつらいものを感じる。
「無償奉仕は、日本人には体質的気になじみにくいだろう、でもビジネスにつながるソーシャル・アントレプレナーシップ(=社会起業)ならば受け入れやすいのではないだろうか?」。このような問題意識が本書執筆の大きな動機になったと著者は書いている。日本に里帰りするたびに強まっていた違和感から出発した著者の問題意識は、いまでは多くの人たちに共有されつつある。
本書に取り上げられているのは、「国境なき医師団」や「国境なき記者団」といった国際的に著名なNPOだけでなく、社会問題の解決のために奔走する団体の代表者18人である。いずれも明確なミッション(=使命感)と熱いパッション(=情熱)の持ち主ばかりである。著者が撮影したポートレートを見ていると、その人のもつ内面のパワーに引き込まれるのを覚える。
ビジネスマンである私にとってもっとも関心が強いのは、なんといっても「アショカ財団」のビル・ドレイトン、「エンデヴァー」のリンダ・ロッテンバーグ、「アキュメン・ファンド」のジャクリーン・ノヴォグラッツの3人である。
社会問題の解決のために、ビジネスの手法を持ち込んで成功してきた先駆者たちである。いずれも本来は米国のビジネス世界でのトップエリートといってよい人たちが、あえて社会問題解決のために身を投じ、しかし金銭という万国共通のモチベーションをうまく善用して問題解決に取り組んできた。この点が、従来の国際援助とはまったく異なるアプローチであり、日本人も大いに学ぶべき先例であるといえるだろう。
ビジネスと社会問題解決は、そもそも出発点は異なり、アプローチの方法も異なるが、「社会起業」という形で一つの方向へとコンバージェンス(=収斂)していくのではないだろうか。とくにリーマショック以降は市場原理主義に対する違和感が多くの人のあいだいに拡がり、社会性を意識しない企業経営は長期的に成り立ち得ない状況となりつつある。
本書の続編である『社会起業家という仕事-チェンジメーカー2-』(日経BP社、2007)とあわせて、とくにビジネスパーソンには読んでほしい本である。社会的な問題解決は、自らが社会起業家にならなくても、自らが従事する仕事をつうじて実現することは不可能ではない。
もちろん、社会問題解決にはビジネスのアプローチ以外のものも多く存在する。社会変革のために、自分がどういう形の貢献ができるのか、それぞれの立場で考え、たとえ小さなものであっても取り組んでいきたい。
そういう気持ちをもつすべての人に読むことをすすめたい。
紙の本
21世紀の最高にカッコイイ人たち
2008/10/27 00:31
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブライアン - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェンジメーカー=世の中を変えることを選択した人々の静かな情熱が伝わるインタビュー本です。18人の社会起業家たちのポートレートはとても清々しい雰囲気で、それでいて強い意志を感じさせる眼差しはやはり非常に魅力的に映ります。
社会起業家に求められる資質として、
・右脳と左脳の両方が豊かであること
・何らかの社会の矛盾を解消したいという情熱があること
・変革を実現する可能性のあるまったく新しいアイデアを持っていること
・理想的なアイデアを現実にする上で具体的な戦略を持っている
・予期せぬ障害が起きたときでも、即座に頭を切り替えてゴールに向かう柔軟性
のすべてが備わっている必要があります。
さらに社会起業家の父、ドレイトンによれば、「社会起業家というのは、ただの夢想家ではなくて夢を持った行動家なんですね。彼らに欠かせない大切な資質は持続力です。社会の構造を変えるという遠大な作業は2,3年ではとてもかないません。数十年、いやそれ以上かかるかもしれない。あきらめず、へこたれず、短期的な達成感がなくても情熱を持続する力がいる。そして、最後にもうひとつ、最も重要な資質は誠実さです。私はフェローを面接するときにその人とふたりで険しい崖っぷちに立っている自分を想像してみます。そして心の声にじっと聞いてみる。果たして彼あるいは彼女に、私の心身をすべて委ねられるほどの誠実さがあるだろうか、とね」とあります。
個人的に非常に感銘を受けたのが、プロジェクト・インパクトの新興国向け医療ビジネスと、シーズ・オブ・ピースの敵対民族の子どもの合同キャンプです。貧困や人種差別、そして民族対立などは複雑な政治的要因が絡み、NPOといえどもなかなかカンタンに参入することができません。そこへアイデアを以て問題解決への礎を築く行動は率直に賞賛すべき偉業と呼べるでしょう。
これまでの日本では、経済的側面のみの社会活動が主流でした。日本の海外援助も企業の社会貢献も、とにかく金は出す、寄付はするけれどもあとはボランティアが勝手にやってくれ、というようなスタイルで、積極的にコミットするカンジではありません。そんな日本でも駒崎弘樹や山口絵理子のようなロールモデルがどんどん生まれています。アメリカ民主党大統領候補のオバマ氏もスラム街のNPOから社会派弁護士となりました。こんなにも優秀な人々が自分たちの住む世の中をより良くしようと考えている、それだけでもワクワクしませんか。
もうすぐ、社会起業は当たり前になる。日本の、世界の未来は大丈夫です。