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紙の本
だんじり人生
2012/01/16 08:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHK朝の連続ドラマ「カーネーション」は、大阪・岸和田が生んだ世界的なファッションデザイナーコシノ三姉妹の母親小篠綾子さんをモデルにしたドラマですから、岸和田の勇壮な祭り「だんじり」が時に重要な局面で使われています。
岸和田の人にとって「だんじり」はとても重い意味を持っています。
正月よりもクリスマスよりも大事。一年が秋の「だんじり」まつりを基準にして動くているといっても過言ではありません。
何しろ「だんじり」まつりになると、全国に散らばっていた岸和田の人が故郷めざして帰ってくるというぐらいです。
親の死に目はともかく、仕事なんかは「だんじり」に比べるとさして重要ではありません。ここは必ず休みです。
小学校、中学校も休みです。何しろ「だんじり」まつりですから。
そもそも「だんじり」は田舎の荒っぽい祭という印象を持っていました。それが今や全国版の祭となって、「だんじり」は一挙に知名度をあげました。
ただ、死者や家屋の破壊すら厭わない荒っぽい祭としての人気ですから、岸和田出身の人間として喜んでいいのか、悲しんでいいのか。いいえ、そんな人の人気なんかくそくらえ、です。「だんじり」は「だんじり」以外の、何者でもありません。
そんな「だんじり」が絵本になっていたなんて、びっくりです。
しかも、作者は『13歳のハローワーク』ですっかり有名になったはまのゆかさん。絵本としても上出来です。
何しろはまのゆかさんは岸和田の近く泉佐野出身ですから、おそらく「だんじり」を間近で見て育った人です。だから、その心意気はちがいます。
ただ、はまのさんの描く「だんじり」は少しかわいすぎる気がします。「だんじり」はもっと荒っぽく描く方がいいかもしれません。でも、かわいい「だんじり」も、またいいものです。
物語は勇壮な「だんじり」まつりとは趣きが違い、優しい家族の物語になっています。「だんじり」まつりの日、おいてきぼりをされたと思った男の子と家族の物語です。それが、はまのさんの絵に合っています。
それでも、この男の子の中にも、「だんじり」大好きの、岸和田の血が流れていることがよくわかります。
この子もまた、「だんじり」に自分の人生を重ね合わせていくのだと思います。
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