紙の本
ものを語りながら、私たちが忘れがちな心のありようを思い出させてくれた
2009/02/15 14:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2005年に46歳で亡くなった著者が、2000年頃1年間に朝日新聞に連載したコラムを1冊にしたものです。1冊にまとめられたのは、著者がちょうど亡くなった2005年と奥付にはあります。
新聞連載のコラムなので、1つ1つは数100字と短いのですが、著者がマンガ家として活躍していた頃の絵が添えられていて、短いながらに十分楽しめます。もともと独立したマンガとして描かれていた絵ですが、なぜか誂えたように話とフィットしているのは見事としか言いようがありません。
話のネタはすべて道具が多く取り上げられています。今でも使っていたり、見かけたりするものもありますが、はこぜんとか矢立てとか、お歯黒とか貧乏徳利とか、見かけなくなったものも取り上げられています。主に江戸時代に使われていた頃の話が多いのですが、蚊帳とかおひつとか赤チンとかゆたんぽのように、つい昭和の半ば過ぎまで使っていたようなものもあり、懐かしさも感じさせてくれます。
春夏秋冬と10数編ずつ、50の話でまとめられているのは、歳時記風でもあります。
いくつか懐かしさや教えられるところもある話が続いていますが、一番印象に残ったのは「はこぜん」の話でした。昔は食卓というものがなく、1人1人の食事はそれぞれの「はこぜん」で出されていたと言います。そこにはひとりぶんの食器が入っていて、それぞれ微妙に違っていて誰のものかわかるようになっていたそうです。西欧では食器は共有のものであるのに対して、私たち日本人は誰それの箸、誰それの茶碗、湯呑と区別しています。そのことを著者は、
「「いただきます」とは、膳に供された野菜や肉や魚も、この世に生を受けた命であり、その命を戴いて、今日を生きるという確認なのだろう。そのとき食器は、自らの体の延長となる」
と説明しています。たかが食事、されど食事。物質的な豊かさに恵まれるようになった私たちが忘れてしまったことなのかもしれません。
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踏み台 、へちま、おひつ、ゆたんぽ…。四季折々の道具にまつわる「モノ語り」から立ち上る、
生活道具への慈しみと懐かしい匂い。
道具には人々の暮らしや環境が如実に反映されます。それが使われなくなるのは、人々の
暮らしや環境が変わったということなのでしょう。
挿絵は全て、江戸風俗研究家でエッセイストの杉浦日向子さんが漫画家時代に描いた作品
から引用されたものですが、こうして本文と並べてみると、あるひとコマに描かれる1枚の団扇
にさえ、著者の思い入れが込められていたことに気付かされます。いつか漫画を読み返す
時には、ストーリーを追いかけるだけでなく、日向子さんと一緒に、道具の由来や人との
関わりをゆっくり考えてみたいと思います。
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新宿区立の中学校で褌で水泳をやっていた所って何処?
「じゃもじ」の語源が知れただけでも儲けもの。
今度,トイレ行く時に,「はばかりに・・・」と云ってみよう。
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ゆったりと書かれた文章に合わせて、ゆったり時間が過ぎていく。いつものスピードよりすこし遅い。でもいらつかない。本当に残念です。
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気持ちよく面白く読んだ。杉浦さんは本当に気持ちのよいことをよく知っていたのだなと思った。勿論どの時代にも、不都合はあるだろうけれど。
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大好きな杉浦日向子さんの本。
今でも見られるような見られないような古い道具やらなんやらを季節ごとにまとめている本。
軽妙な語り口、なんだか使ってみたくなります。
この人の過去への視線は本当にあたたかくて、やわらかい。
なくなって4年が経とうとする今でも、なんだかまだお酒を飲んでふわりふわりと笑っていらっしゃるお姿が浮かびます。
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江戸にでてくる事物の用語解説。
というか、それらをお題に立てたエッセイ集。
パラパラめくってチョロチョロ読むのが楽しい。
江戸を離れて、今日と比べたりなぞらえたりするのはやや蛇足な感がある。
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帯背
江戸も道具も懐かしい
帯裏
ゆたんぽ・・・湯湯婆と書く。江戸の庶民は猫や犬も抱いて代わりにした。
かやり・・・川と堀割に囲まれた江戸の町には、欠かせない必需品。
はこぜん・・・ちゃぶ台の普及は昭和から。それ以前はひとりずつの膳で食事をした。
鍵・・・江戸のころ、ほとんどの人は鍵と無縁の暮らしをしていた。
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身近な道具や今はあまり見かけなくなった道具の事が、著者の体験をまじえて綴ってあり読みやすい。なんだか懐かしい気持ちになります。
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お江戸でござるの時、解説で出て来る作者を何も分からず見ていた幼い頃の自分がいた。もっとしっかり見とけばよかった。
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図書館より。
さらりと読了。
この方のエッセイは本当にさっぱりと読めて好感。江戸時代好きだし、こんな風にさらりと話してくれるとなんだかうれしいな。
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久しぶりに杉浦日向子が読みたくなった。
隠居の日向ぼっこ。いいねえ。
江戸の暮らしの中で、当たり前に使われていた様々な道具を取り上げたエッセイ集。
新聞に連載されていたものをまとめたものなので、ごく短い文章だが、全編に杉浦漫画のひとこまがあしらわれていて、ファンには嬉しいオマケつきエッセイという感じ。
最近、北斎の娘・お栄を主人公にした『眩』がドラマ化されていたが、女優さんが美人すぎてちょっとうーん、となった。
けれど、それは、私の中のお栄は、杉浦日向子の『百日紅』のイメージで出来上がってしまっているからだ。
などと思いながら、これを機に杉浦日向子の蔵書を登録した。
もっとあったはずだけれど、エッセイは題名が思い出せない。
こりゃ、もはや隠居しどきじゃないか。
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江戸で使われた道具についてのエッセイを春夏秋冬の季節に分けてまとめてあります。蚊帳や火鉢や火燵など、今は見かけなくなってしまった物や今でも活躍している物などがあり、懐かしくも楽しく読めます。
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杉浦日向子さん(1958~2005.7.22、享年46)「隠居の日向ぼっこ」、エッセイ集、2005.9発行。①「踏み台」は元々、新築家屋への大工さんの置土産 ②「手拭」は万能の布 ③「肥後守」は折りたたみ小刀で鉛筆の友 ④江戸では「耳掻き」はひとつの生業 ⑤「まめに暮らせ」:無理せず自分なりにやれ(ほんのり温かい好意が込められている)⑥行灯の明るさは豆電球よりも弱い。昔との決定的違いは電気の有無 ⑦四季に寄り添い、太陽と月に従う、江戸の時。
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江戸の町は巨大な蚊の養殖場
穴あきの蓬莱蚊帳、鶴(吊る)と亀(蚊め)が舞い踊る
鍵は内側から戸締りに使った、出かける時は留守番を置く
踏み台は大工の弟子の卒業試験、仕上げた家にプレゼント
貧乏徳利、鏡、矢立て、箱膳なと
小物に絡めたミニエッセイ
朝日新聞連載(平成12~13年)