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紙の本
世にも奇妙な物語
2005/11/27 20:26
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作にして直木賞候補作にもなった「となり町戦争」同様、本書においても著者の描く世界の斬新さには舌を巻く。小説版「世にも奇妙な物語」といったところだ。
不条理な出来事に主人公が深入りしていく「巻き込まれ型」(『二階扉をつけてください』『二人の記憶』『送りの夏』など)と既に出来上がっている不思議世界を描いた「読者巻き込み型」(『バスジャック』『動物園』など)の7つの短編が収録されている。
中でも強く魅かれたのは『二人の記憶』と『動物園』だ。
前者は、恋人との記憶のズレに悩まされる青年が主人公。二人の共有していたはずの思い出が全く食い違っていることに気づいた彼が、最後に見出す一つの答えに胸がたまらなく温かくなる。
後者の主人公は、その場に存在しない動物をプロデュースする(と説明しても訳がわからないだろうと思われるので是非一読していただきたい)27歳の女性。一体どこでこんなアイディアを…とただただ驚かされる。現実では到底ありえない仕事に従事するヒロインが見せる矜持に清々しいものを感じた。
本書には、『しあわせな光』『雨降る夜に』という極短編も収録されており、これもまた心地よい読後感が残る。是非、長編化してほしいと思う。
紙の本
どこか現実とはかけ離れた世界を,日常として書ききる著者の力
2009/10/11 00:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simplegg - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は,表題作「バスジャック」を含む7編の物語からなる短編集である.村上春樹の「1Q84」を読んだ直後に読んだのもあってか,最初は物足りない印象を受けたが,読むにつれその独特の世界に引き込まれていった.
この短編集に共通する点は,どこか現実とはかけ離れた出来事を,あたかも現実の世界で起こっているように書いてある点だ(例えば,月が2つある世界).まぁ,もちろん小説はほとんどがフィクションであるわけだから,何も特別ではないんだけど,この本を読んでいるとその出来事を日常として書ききることが1 つの見せ場になっているような感じがした.
通常の小説は特別な状況設定を通して何かを読者に伝えようとする.そこではあくまで特別な状況は脇役だ.しかしながら,本書はその状況設定そのものが主役であり,そのもとで綴られる物語は主役を引き立てる脇役に思える.本を読んだ後に,どんな人物が登場して,どんな話だったかを思い出せないのだが,その世界はよく覚えているという具合なのだ.このように感じたのは,僕が変だからかもしれないが.
三崎さんの本を読んだのは初めてだったが(女だと思っていた・・・),短編というスタイルでこれだけ独特の世界を描ききれることに驚いた.となり町戦争も前々から気になっていたので,読んでみたいなと思っている.
ちなみに,僕が本書の中で好きだったのは「動物園」です.