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紙の本
lこれが文藝エロスか、っていいたくなります。でも、この幻想味はなかなかのもの。変に芸術家よりは普通の女性が不思議な行動をするっていうのがいいです
2006/05/28 22:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装画・章扉 門坂 流、装丁 斎藤深雪。装画といっても銅版画。銅版画、ということからカバーよりは各扉のほうがしっくりくるのは、それにはやはり印刷される紙質があるのかもしれません。マットな紙こそが版画には似合うのです。カバーもマットなものではあるのですが、銅版画特有の刷り上った、という感じが出ていません。もったいない気がします。
六つの作品が収められていますが、舞台は全て海外、それもヨーロッパです。基本的にはどれもセックスが絡んでいて、あからさまなものもあれば、その後の展開を匂わせて終わるものもあり、さすが文藝エロスお得意の高樹らしい短篇集といっていいでしょう。
この作品集中、最もエロい小説、ヨーロッパに旅した仲間のうちで最も高齢者であったMさんがイタリアで見たものは「日食のヴェローナ」、40歳をこえてなお男と遊ぶことを繰り返す町田八智がピガールで出合った空白の時間「サン・ドニの二十秒」、ウィーンにある修道院で出会った老人の妻は「メルクの黄金畑」。
イタリアを旅行中の二卵性双生児の兄妹が不可思議な言葉を残してマントヴァに消えた。二人を探すKさんは「マントヴァの血」、ウィーンでいつも私を迎えてくれるゾフィーネが熱で動けない。彼女に代わって案内する男の「ゼーグロッテの白馬」、
夫と二人で訪れるイタリア、観光に興味を持たない夫をホテルに残し町を歩く妻が思い出したのは20年前に亡くなった友人「美加子のヴェネチア」。
映像化できないだろうなあ、というのはやはり「日食のヴェローナ」でしょうね。なんていうか一線を越えちゃってますから。で、そういう意味でもこれが一番好きな作品ではあるんですが、ストレートに楽しんだのは「マントヴァの血」。展開は完全に読めるんですが、このテーマは嫌いではありません。
逆に、先行きが読めないけれど小説としてもっとも面白いのが「美加子のヴェネチア」です。伏線、というほどのものではない細い糸があるんですが、それが突然、表舞台に顔を出す。本当かと思ってもう一度全体を読み直したくらいです。こういう不可思議な筋の運びは、実はこの小説集全体を貫いているんです。
ある意味、因縁譚というか。そういう意味で極めてオーソドックスな日本の伝奇小説の流れを汲んでいる作品集とはいえます。ま、エロがちらつくところは商売上手というか、純文学の名の元にエロを楽しむ主婦層には受けるんでしょうねえ、ポルノといえば眉をひそめるご婦人方も、芥川賞作家というのは隠れ蓑には抜群ですから、はい。
それにしても装丁の斎藤深雪、いい名前ですねえ。惚れ惚れします。
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