紙の本
2世紀のローマ皇帝であり、またストア派の哲学者でもあったマルクス・アウレリウスの思想がうかがい知れる一冊です!
2020/03/04 10:00
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、2世紀後半にローマ皇帝となったマルクス・アウレリウスの思想を纏めた『自省録』を分かり易い新訳の書です。マルクス・アウレリウスは、私たち日本人にも知っている方が多いように、皇帝としてローマ帝国をおさめたほかにも、当時、権力をもっていたストア派の哲学者として、その思想は厚生に多大な影響を与えました。彼は、万有は神的理性に統率されるという合理的存在論に与する精神構造をもちながらも、自身の心に向かって思念を繰り返し、心内の軋みや分裂をごまかすことなく真摯に生きた人物でした。同書には、そうした彼の哲学、思考が余すところなく書かれています。
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ストア哲学の結晶とも言える著作。
著者はローマ皇帝。その義務の合間の、僅かな余暇を割いて、彼が本来求めていた哲学に立ち戻り、思索を書き綴ったもので、自分自身に宛てて書いたものである。
彼の義務と天性の齟齬を痛ましい程に実感しながらも、なお、人間として与えられた義務を果たす為に自ら叱咤し、励ます筆致は、これまで、同じような境遇にあった多くの人々を励まし、また未来においても励ましてゆくのだろうと感じられる。
岩波文庫に神谷美恵子の訳もある。
神谷訳は旧字体の語調(現行版では字体は勿論改められている)で、皇帝の苦悩を前面に押し出した訳文という印象。
一方でこちら鈴木訳の印象は、補語を多く使用しており、文体も現代文的で、断定的で敢然とした感じがある。
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「テルマエ・ロマエ」にも出てくるマルクス・アウレリウスの本だから、という甚だ不純な動機で読んでみましたが、まー難解。久々に、高校1年の時に受けた哲学の授業を思い出した。そういや、当時も何を言ってんだか全然わからんかったなー。
でも、全12巻(普通の本でいう「章」みたいなもの)のうち、最初の第1巻はとても分かりやすく、ストンと腑に落ちました。
思うに、この手の哲学書は一回ぐらいの通読で理解しようということ自体が間違いなんでしょう。しばらくは手元に置いて、折を見て適当に読み返してみようと思います。
それぞれの巻がほぼ独立してるので、どこから読み始めても支障がないのは好い所だと思われます。
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近代理性にとっての聖書。後半が繰り返しになってしまっているのが点を下げた原因だが、一日一章読みながら、血肉としていきたい作品である。箴言集。
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何かの本で必読となっていたので読んでみた。ローマ皇帝だったマルクスが自分の思いや考えを端的な言葉で綴っていた。集中して読まないとなかなか理解しにくいけれど、いくつか覚えておきたいことばとか考え方が出てきて、ためになった。一回読んだだけだと消化しきれなかったので、またいつかじっくりと読み直したい。
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ローマ皇帝でありながら、生涯を通じて哲学的思索を探求し続けたマルクス・アウレリウスの書。
彼の生きた時代はストア哲学が大いに流行った時代でもあったそうなので、彼の思想的スタンスもストア哲学そのものです。
あとがきにもありますが、彼が皇帝を務めた時代もローマ帝国は動乱の中にあって、彼自身も外敵との戦いのために幾度となく遠征に赴き、そして最後はその陣中で没しています。
そのような多忙を極める公務の中にあって、体系だった研究はさすがに無理な話。そのため本書は彼が公務の合間に思索したり、ふと思いついたことを書き綴った内容が中心になります。
個人的にはそのようなスタイルでまとめられた本書は非常に読みやすいし、親しみがわきました。
本書を読み、全体を通じて感じたテーマは「この束の間の生をいかに生きるか」ということ。
戦争多き時代にあって、彼がいかに「生」についてシリアスに考えていたかがわかります。
「あたかも1万年も生きるかのように行動するな。不可避なもの(「死」のことでしょう)が君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。」
「今後なんなりと君を悲しみに誘うことがあったなら、次の心情をよりどころとするのを忘れるな。曰く『これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは幸運である』。」
ふと思いついたときに手に取って思い思いの箇所を読み直す。そして昨日より少し背筋を正して生活する。そんな風に読み続けたい一冊だと思いました。
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五賢帝時代の最後の哲学皇帝、マルクス・アウレリウスが日記帳のようなものに書き綴った内省の書。
2000年が経った今も哲学書の最高峰として燦然と輝いているのには驚きですが、久々に再読。
私自身も内省する事が多く、周りに振り回されない性質だと思っていたのにここ最近はどうも自我を見失っている気がしてなりませんでした。
そのせいで前に進む事が出来ていない事に気付き、一度自分の原点を見つめ直そうと選んだのがこの『自省録』です。
そもそも禁欲主義であったマルクスとはスタート地点からして違うのですが、それでも金言の数々が心に刺さりました。
中でも自分に響いた一説をご紹介。
「どんなに小さな事であっても、1歩前に進んだのならそれで満足し、更にその結果は大した事無いと考えるのだ」
理想を叶える事を目的にするのでは無く、そこに向けて進んでいることが重要。
これです、これを見失っていたのです。
他にも、対人ストレス、己の才能のなさに絶望した時、先が見えない時、やる気が起こらない時、人生の残り時間を考えてしまう時、朝起きれなくて辛いよ!という時まで、それぞれ皆さんの抱えている生き辛さに対しての答えが大抵は詰まっています。
(マルクスほどの方が朝起きれないよ!ってのには親近感が湧きますが、きっと激務のせいでお疲れだったのでしょう。私のように本読みすぎた!みたいな理由では無いと思います)
元々が自分に対しての語り口調で綴られており、それがそのまま印字されていますので哲学書の中でも読みやすいと思います。
本当は哲学者になって読書と瞑想に明け暮れたかったのに、39歳で皇帝に即位させられ、国を守る為に先陣を切って戦場で駆け回っていたマルクス皇帝。その飾り気のない言葉の一つ一つには重みと深みと説得力があります。
結局は足を進めて暗闇から抜け出すのは己自身ですが、時には先の見えない暗い道を照らしてくれる灯りが欲しいものです。
この『自省録』はまさに多くの方の灯りとなる名著だと思います。