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スカーレット、インディゴ、ヴァイオレット、アンバー、サフラン…『レインボー・ガールズ』達に続いてシルク家に生まれたグリフィン。シルク家の最後、ピリオドの子供。
けれども再び新しい赤ちゃんがシルク家に生まれた時、グリフィンは特別なピリオドではなくただのカンマになってしまった。みんな赤ちゃんのことで頭がいっぱいで、誰もグリフィンのことなんて見向きもしない。
だから時々グリフィンの心の中には、悪い考えがむくむくと浮かんできていた。
『赤ちゃんが生まれてこなければよかったのに』
きっと赤ちゃんに、それが伝わってしまった。そうでなければ、突然、何の理由もなしに、死んだりしない……。
幼い妹が死んだのは自分のせいだと、ひとり罪悪感でいっぱいの心を抱えるグリフィンは、学校の帰り道で出会った少女ライラと親友になる。やがてグリフィンと同じ願いを共有するようになったライラの行動が、家族を亡くした悲しみに沈むシルク家の人々に、忘れることのできないすばらしい祝福の夜をもたらす。
「ぼくの小さな妹よ。おまえを“ティシュキン・シルク”と名づける」
うねる農道はリボンのように。そよ風にゆれる楡の葉はタフタドレスの衣擦れのように。
美しい自然描写と心理描写。罪悪感に苛まれる少年が、大切な友達の力を借りて踏み出す一歩。それがどんなに勇気がいることだったか、丸ごとわかってくれる両親。苦しかった心が、すっと楽になる瞬間。
朝も昼も夜も、物語全編に満ちている優しい光。それが、読んだ人の心の中でずっと息づいている。そんな本。