紙の本
恋~心のどこかが破れて、あたたかな血があふれだす。
2009/11/10 12:16
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
基本的に私は、いわゆる恋愛モノというのを好みません。人の色恋沙汰などどうでも良いから。少なくとも、恋愛モノを求めて本を探すことなど絶対無いし、さらに過分な性描写のあるような作品は、読んでる途中でも止めて捨ててしまう事さえあります。がしかしそれと分かり易いこの作品を手にしたのは、石田衣良さんの作だから。石田さんの作品には恋愛モノも少なくないし、性描写がそれなりにキツい物もあります。ぱっと思いつくのは「娼年」や「美丘」あたりでしょうか。ちょっと中学生以下には薦められない様な描写がそこここに現れるのだけれども、不思議な程エログロを感じさせず、逆に神聖な物さえ感じてしまう。例えば美丘ではそれで描かれていたのは「命の尊さ」だったし、娼年では倒錯した世界ながらもそこで懸命に生きる人間たちを見事に描いていた。はたして本作も、性描写においては先の二作よりもすごい物があった。
45歳の銅板画家咲世子は、更年期障害に悩まされつつも3歳年上の画商との大人の恋を楽しんでいた。しかし画商が付き合う他の女からの執拗なストーカー行為に悩み始める。そこに現れたのがいきつけのカフェで新しく働き始めた、28歳の素樹。映像作家志望だったという素樹に咲世子はどんどん魅かれてゆき、二人は結ばれるのだが。映像作家としての才能を開花させるであろう素樹の未来に、自分はいてはならないと決意する咲世子。そして二人の元に辛い別れが訪ずれる。しかし思いもよらぬ結末が、咲世子を待っていた。
本作品で謳われているのは、言ってみれば「恋する力」であろうか。プラスにもマイナスにも、恋する事は人間をこんなに変えてしまう。プラスにもマイナスにも、恋する事は人間をこんなに力強くしてしまう。でもやはりその底ににあるのは「大人になるのも悪くない」って事だと思う。良い恋愛が出来る。勇気を持って恋を始めて、そして終わらせる事が出来る。切ないかもしれないけれど、世の40代の女性への応援歌的な一作。これからの季節にも良い作品だと思います。
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あとがきにも書いてあるけど、石田衣良さんは、女性なのかと思うほど
女性の身体、心理を女性の視線で描いている。
女には2種類、ダイヤモンドと真珠。
控えめだが、芯のある静かな美しさ
咲世子のような成熟した女性になりたい。
たくましくも、もろくもある大人の女性。
恋愛小説は、あまり読まないんだけど、石田さんの世界に
引き込まれた。
素樹の手の版画、みてみたいもの。
恋愛に年齢って関係ないって思う。
黒の咲世子から白の咲世子
海からの漂着物に自分自身を重ねる。
年齢を重ねることのひっそりとした確実な成長、
美の意味を感じました。
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ありえない男とありそうな女が絶対無理な恋に堕ちる不可能な話…この女かなりムカツク&この男現実にいたら笑っちゃう的な、かなり引いた目線で読み進めて行ったのだが、最後の持って行き方がいいのですっかり印象が変わってしまった。この、すべてを乗り越えて仕事に打ち込む&昔の男が協力してくれる&せつない恋を仕事の上で昇華するという生き方が、ありえん存在に肉付けをしてくれたというか。ラストはまあご愛嬌。途中のスカシた文章に耐えられたら、読後感は充実している。
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石田衣良だね。
どうして、こう女性の気持ちをうまく描けるんだろうかー。
なんか「アーティスト」とか「芸術」だとかそんな雰囲気に溢れた一冊。
やっぱりこういう人たちってなんかすごいよね。
憧れる。
でも、真似できない。
羨ましい。
でも、ただそれだけ。
かっこつけてないのに、
言動の一つ一つが絵になってたり、芸術になってたりするんだよね。
私の友達にもいるなぁ。
違う世界の人間だ。
でも、恋愛に関しては万国共通だねー。
皆一緒!!
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石田衣良の新境地ですね。
40歳を過ぎた女性の恋愛を描いています。
設定には難があるかもしれませんが。
映画を見ているように感じられました。
率直な感想としては意外と良かったですね。
男性作家の作品とは思えませんでしたけど。
更年期障害の話はリアルすぎて怖かったです。
女性って大変だなと思いました。
女性特有のどろどろした生臭い感じがなくて。
石田衣良らしい軽さが心地よかったです。
その向こう側にあるものは直視するには重すぎるから。
きれいにまとめられていて安心しました。
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なんかぐッときたよ
ただの恋愛小説なんだけど
歳を重ねることへの覚悟とか、
若さの素晴らしさとか、
考えるよ。
江國香織みたいな、透明な感じではなくて
もっと説明的で時々うんざりするけど
それでも。
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描写がきれい
舞台の湘南が目の奥に溢れ出てくる
大人の恋
結局大人だって恋をする
悲しむ
凹む
そして
強がる
アーティストメインな今作品
表現がむちゃくちゃうまくてキレイです
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徐々に恋愛小説(基本女性向け)がメインになってきた感の強い、石田先生の文庫新刊
女性視点が上手いと思うのだが、女性の方も同意得られるのかな?
サブキャラも格好良く描かれていますが、中盤いろいろ伏線らしく振った割りには
普通な感じで決着。
特筆すべきところが無いが、綺麗にまとまってはいる一冊。
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あんまり歳の差が凄いあるような感じがしなかった。
とりあえず女性には2つのパターンがあるらしい。「ダイヤモンドの女」「真珠の女」
この2つがはっきりと見れた作品でした。
たぶんこの小説は20代、30代と歳を重ねるごとに読み返したら違う発見ができるのかなと思えた作品でした。
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THE恋愛小説。
こっぱずかしくなるくらいの・・・
でも、こーゆうのも悪くないよね、と思うようになった今日この頃。
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女性の視点から描かれる恋愛小説です。しっとりと流れる時間の流れは、気持ち良くはあるけど、それは永遠ではありません。出会いと別れと、そして・・・。恋愛にカタチはないということでしょうか・・・。
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何歳になっても、
恋愛
(誰かを愛したり)
セックスや
自分の手で何かを作り出す
ことって
すごくすごく大事なんだなあって思った。
版画がすごくやりたくなりました。
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17歳も年が離れていても恋愛出来るんだ
というのが最初の印象。
男性が年上ならまったく思いもしないけれど、女性が年上なら同じ女性として「どうなの、それって?!」と気持ちが退けてしまう。
女性は版画家で自立していて人に踏み込むような人間じゃない。
男性は傷つき立ち直ろうとしている途中の青年。
うらやましさから読んでみたけど、こんな人との巡り合わせってうらやましい。
二人がそれぞれに買う黒真珠。
小説の終わらせ方がまたいいのだ。
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典型的な設定なのかもしれない。
でも、この展開は好き。
リアルに悩みもがく主人公を素直に応援したくなった。
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男性が書いたとは思えないほど、女性(特に主人公・咲世子)の描写にリアリティと迫力がある。
光を外側に放つダイヤモンドの女。
光を内側に引きこむパールの女。
パールの女は、(その魅力に気づいてもらえなければ)幸せになりにくいのかもしれないけれど、その凛としてたくましい姿に私は憧れる。
煌びやかな華やかさを纏うダイヤモンドよりも、光を引きこんで静かなパワーを蓄えたパールの輝きに気づくことのできる人間になりたい。
そして、年を重ねていくなかで、遠回りをしても、心を豊かにし、内なる美しさを求める生き方を心がけて、自分の心に従う強さ、心を殺す強さを身につけていきたい、そう思った。