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人の血を養分に生きる冬至草。育てるために自分の命を削るのか。ありえない話だが、データによって、何やら信じたくなる話になってくる。カラッとした空しさがいつも漂う石黒氏。
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SF短編集。少し、話がわかりにくい構造になってるかな、と思う。好きだったのは、『月の・・・』でした。
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6月09日読了。短編。どの作品も好き。仮想の草や貝もよかったし、クラスメイトの死と立ち会う、妻を死なせた医師の話もとてもせつない。
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あらすじにもあるように、科学や医療をテーマにしていていた六篇の短編小説。
科学的、医療的な描写は優れているのですが、リアリティにこだわっているためか、結末もリアルで割り切れないモヤモヤとしたもの。
その中でも個人的に面白いと思ったのは最初の短編「希望ホラ」。
愛する娘が神経芽細胞腫と呼ばれる(癌のような)病気に侵される。主人公である弁護士は、畑違いの医療に足を踏み入れ、娘の病を治すために研究に没頭する。やがて彼はとある島で病に効果のあるホラを見つける――といった内容。
これだけは、読んでいて納得のいく結末だったように思います。
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医療SF。
専門的な言葉が多くて難しい。
と思ったら作者は現役のお医者さん、しかも癌専門の
すごい先生だった。なるほどねー。
どれもびっくりするような展開などはなく淡々と
論文を読んでいるような感じがする。
癌に侵されたわが子を救うために希少なホヤを
食べさせ続けた結果、絶滅させてしまう
「希望ホヤ」
癌を誘発するウィルスの恐怖を描いた
「デ・ムーア事件」
戦争中にウランに侵された土壌に生え、
人の血液を養分として育ったと推測される新種の植物
「冬至草」
が印象的。
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医師で小説家、三度の芥川賞候補にもなっている石黒達昌氏の中短編集。論文のような独特な筆致に、フィクションなのかノンフィクションなのか、また、芥川賞の俎上に乗っかるくらいで、SFのつもりで読み始めても純文学のようでもあり、兎に角まあ、エンタメ中心の読み手である自分にとっては、かつてないタイプの作品集であった。
「希望ホヤ」は小児癌で余命半年と診断された愛娘を救うために独力で奔走する父親の話。無理にドラマを盛り上げることなく、淡々とフィクションを重ねていく手法が、いっそうトゥルーストーリーを読んでいる気にさせる。タイトルの希望ホヤとは、ある南の島に棲息するホヤ(貝類)の希少種で(もちろん架空の生物)、これが娘の命を救う鍵となっていく。物語の大半が父親の視点で描かれているだけに、利己と倫理を秤にかけるようなラストがアイロニカル。
タイトルロール「冬至草」。冬至草とは架空の植物で、放射性物質を含む環境に適し、人間の生き血を栄養分に妖しく光り輝くという異様な生態を持つ。…が、そうした異様さよりも、この冬至草の発見者であり、その生態に魅せられ、やがて狂気の淵に落ちていった在野の研究者、半井(なからい)の赤貧洗うが如し壮絶な人生を浮き彫りにしていく。僅かに残された書物や伝聞から少しずつ浮かび上がってくる、半井と冬至草の真実。それを現代の研究者の視点で検証・追求していくというプロットが秀逸で、嘘だと判っていても、読んでいるうちにアヤフヤになっていく感じが「希望ホヤ」に通じる。
「月の・・・・」は、望遠鏡で月を眺めているうちに、自分の手の上に月(の残像のようなもの…)が浮かぶようになってしまった男の話。んーと、これでは判りづらいな(苦笑)、でもこういう話なんだよなあ。これなんかはかなり純文学臭がするので、ニュートラルな気持ちで読まないと消化不良を起こす。私は実際に起こしかけた。しかし公園で出会う認知症老人とのシークエンスが白眉で持ち直す。
続く「デ・ムーア事件」は「火の玉病」と呼ばれる病気の謎を追ううち、意外な事実が…といったサスペンス。ケネディ暗殺事件にまで及ぶ突飛なストーリーなのに、石黒氏の筆致にかかると、絶妙なリアリズムが生まれる。
「目を閉じるまでの短い間」は芥川賞候補になった作品。テーマは遠隔地医療と緩和医療。これは他の作品以上に淡々とエピソードが重ねられ、山場もあるのに平易に語られ、さらに唐突に多くの登場人物が挿入されていくので、非常に読みにくく苦労した。ハヤカワのJコレクションで刊行されているの前提なので余計に困惑する。SF要素希薄な純文学作品。
「アブサルティに関する評伝」は、研究内容を悉く捏造していく男(アブサルティ)に関する話(評伝)で、「デ・ムーア事件」と肌触りの似たミステリータッチの物語で、実際の研究者として、作者の疑問や葛藤も垣間見られるようだった。
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ポジティブとネガティブが渾然一体となった文章は妙に緊張感を孕んでいて、ナニとは表し難い恐怖が常に在る。短編集と侮ること勿れ、一つ一つにもの凄く体力を持っていかれる一冊。
淡々と事象が並べられているだけなのにやけに想像力を喚起させられる表題作といい、一見普通のようでいて理不尽な虚構だらけの「月の…」といい、漠然としたイヤ感がごく私的にツボだった。ただ、同じくイヤ感を煽る文章を書かせたらある意味最強な田中哲弥を思わせるような過去現在妄想が錯綜した文体で書かれた「目をとじるまでの短かい間」はちょっと…うーん…迷走してたのかな?としか思えない。粛々とした文で展開する話の方が、この人に限っては好みかな。
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医学を使ったホラー、ファンタジー、SFといった感じで、面白いし、考察も深くて読みごたえもあるのですが…
文体がちょっと酷いです。読みにくすぎる…
後書きの文体も同じような感じだったので、こういう文章を書く方なんだな、と納得はしましたが。
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「希望ホヤ」
「冬至草」
「月の……」
「デ・ムーア事件」
「目をとじるまでの短かい間」
「アブサルティに関する評伝」
久々に新しい何かを読めたという興奮を味わえた。
医者であり、臨床・研究に携わる著者でなければ書けないような物語が新鮮。まるで本当にあったかのようなリアリティのある内容のものが大半で、語る手法もかつて起こった出来事を取材し、その調査結果を書き記しているなど、嘘か真か判別しにくいもの。客観的でリアルな語りが、生物学・医学の知識を用いた現実の延長上にあるSF的アイディアと相性がかなり良いと思った。
「希望ホヤ」
神経芽細胞腫に冒され、余命半年を宣告された娘のために、あらゆる努力を行う父親の物語。一編目からして当たり。ホヤという種の不思議と医学が結びついた面白さに、結末の散文的な苦さときていい作品。
「冬至草」
収録作では面白さも描いているものも飛び抜けている。
作品としては、ミステリの捜査のように、様々な調査方法で次々と冬至草の性質や、極寒の地で発見した一人の男の物語が明らかになっていく課程が筋であり、これが面白くて面白くて引き込まれる。
図書館で見つかった植物を分析実験(「希望ホヤ」でもそうだけど、分析の場面が詳細で、珍しくて楽しめた)した結果、放射能を帯びた植物であることが明らかに。そこから資料をあたったり、関係者の話を聞いたりして冬至草をめぐる物語が姿を顕していく。
舞台となる「泊内村」には原発はなさそう。
「月の……」
これはちょっと面白さがわからなかった。
「デ・ムーア事件」
死を迎えた患者たちのなかに、亡くなる前、火の玉をみていた者たちがいたという状況が、真相でいろいろと回収されるのが楽しい。
「目をとじるまでの短かい間」
新薬で妻を死なせた医者と娘の生活を描いた作品。味わい深い。「頭が痛い」と娘が言うたびに不安感を感じてしまい、そのことが妙に残っている。
「アブサルティに関する評伝」
科学理論の確かさみたいなものが解体される。元々科学というものが、科学という物語であり、科学を語る言葉もひとつの物語言語なのだという考えを読んだことがあるが、そうしたフィクション性をどこかとぼけた雰囲気で描いている。けっこうお気に入り。
短編臭全体として、結末で科学の根底を問うのがテーマにある。
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めちゃくちゃ面白い。クールで鋭利な文体と豊富で確かな知識で日常と非日常をすぱっと切る。冷静で第三者的な語り口が読者に想像するスキマを与えて、逆に叙情性を引き出している、のかな。個人的には全話ツボだったが、やはり表題作「冬至草」は実話っぽさも面白さも頭一つ出てたかも。他の作品も読みたい。
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SF。まさに科学。
著者もあとがきで書かれているように、難しい内容。
文章もどこか冷めた雰囲気が漂う。
力作ではあるが、読みやすい物語を好む自分にはイマイチ。
唯一、「希望ホヤ」は読みやすく、分かりやすい結末が好みだった。
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「希望ホヤ」★★★★
「冬至草」★★★★
「月の…」★★★
「デ・ムーア事件」★★★
「目をとじるまでの短かい間」★★
「アブサルティに関する評伝」★★★