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久し振りです。佐藤さとるさん。多分,村上豊さんの絵に突き動かされたのではないかと想像する。コロボックル・シリーズと違い,時代物。シリーズ化すると良いのだが,我が母と同い年だしなぁ・・・。
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■否含山の与平に預けられた九郎丸はカラス天狗で、そして?!
■「コロボックルの」と言われることが多いだろう作者の、歴史ファンタジー。
時代ものは「きつね三吉」などありますが、伊勢宗瑞(北条早雲)、三浦道寸の名前も出てきて、ここまで具体的な歴史を背景にするのはなかったはずです。
■でもそれで堅苦しくなるのではなく、
カラス天狗に変化するためのカラス蓑や不思議な作りの天狗館など小道具、大道具を散りばめてファンタジー童話の雰囲気で楽しめます。
■久々の新刊に喜びつつ。
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山守の与平は笛は笛の名人。その笛を大天狗に認められ、天狗にならないかと誘われるが、断ったため、連れていた九郎丸に笛を教えて欲しいと頼まれ、それを引き受けたが、そのときに九郎丸がカラス天狗にはなるためのカラス蓑を渡される。必要になったら返してやれと。
しかし、九郎丸を人間にしてやりたいと考え始めた与平は九郎丸のカラス蓑を焼こうとするが、失敗。しかし、カラス蓑はそれだけで傷物になり、九郎丸は完全なカラス天狗には戻れなくなってしまった。
九郎丸は人間と天狗の間の存在となる。
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昔々(およそ5百年前)、否含山(いなふくみやま)の山奥に与平という年寄りが住んでいた。山番人だが横笛の名手の与平のもとに、ある日、大天狗がやってきて言うことには、チビの烏天狗の九郎丸に笛の手ほどきをしてやってほしい、と。与平は九郎丸と暮らすうちに、九郎丸を人間にもどしてやりたいと願うあまりに、天狗蓑を焼いてしまおうとする。天狗の宝の天狗蓑がなければ、九郎丸は人間の姿から天狗には戻れないからだ。しかし、天狗蓑は一部焦げただけ、九郎丸は、半天狗になってしまう。
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こちらは佐藤さとるさんの待望の新作なのだそうです。 とは言っても手元にある初版本の発行は2006年ということなのでもう10年近く前の作品です。 こちらはコロボックルのような小人ではなく半分天狗で半分人間の九郎丸という少年の物語です。
九郎丸は元はと言えば人間のしかも由緒正しい血筋の嫡男だったんだけど、乱世の中、とにかく生き延びることだけを目的に人間社会的に言えば捨てられたところを天狗に拾われ、カラス天狗として生き延びてきた(但し本人は生まれながらのカラス天狗だと信じてきた)という少年です。
この九郎丸が人間の与平爺様の元に笛の修行のために預けられ、情が移った与平爺様の手によりカラス天狗に戻るための必須アイテムを燃やされて、結果半天狗になっちゃうという物語。 学校で戦国時代の歴史を学んでもほとんどちょっとしか名前が出て来ない関東地方の戦物語を背景にしているので、KiKi なんかは歴史的バックグラウンドはわかったような、わからなかったような・・・・・。
伊勢宗瑞とか三浦道寸な~んていう名前が出てきてもチンプンカンプン。 でも後で調べてみたら伊勢宋瑞って北条早雲のことだったんですねぇ・・・・。 しかも最後には「南総里見八犬伝」で有名な里見家の名前も出てきます。 因みに九郎丸は関東の名門、三浦氏の出身らしい・・・・。 ちょっと関東の歴史を詳らかにしたい欲求がくすぐられます。
この物語はそんなバックグラウンドもさることながら、登場するキャラクターが実に魅力的です。 どこかとぼけた味のある飄々とした雰囲気の与平爺様が特に素晴らしい!! 九郎丸の仲間のカラス天狗たちもそれぞれ個性があるし、九郎丸と父親の再会をとりもつために動く人なのか天狗なのかよくわからない人たちのキャラクターもそれぞれ魅力的です。 そしてやっぱり楽しいのは天狗たちが使う妖術(?)の記述です。 特に KiKi のお気に入りはかなりの長距離を移動する際にスピードアップするための「縮地法」というヤツ。 大地を縮めて時を稼ぐというのは何だか楽しそうです。 もっとも KiKi なんかは一辺で酔っちゃいそうだけど・・・・・。
でね、そんな技を駆使する天狗様に与平爺様が投げかける質問が溜息が出ちゃうほど素敵だと思うんですよね。 曰く
「天狗様はこんなすごい術を知っていなさるのに、何で人間をのさばらせておくんだべ。 侍が何千人集まろうと、天狗様にかかっちゃ、手も足も出なかんべえによ。 戦ばっかりして、みんなが難儀しているっちゅうに・・・・。 ほんとになんとかしてもらいてえもんだのう。」
これに対する天狗様の答えは・・・・と言えば、
「因縁のない人を攻めるために術を使うと、その術がいたむ。 一人の天狗だけではないぞ。 全ての天狗の、その術がいたむ。 それをとりもどすのは容易でない。 それで厳しく戒められているのだ。 ただし護りに使うのはかまわない。」
のだそうです。 わかったようなわからないような話だけど、何だか自然の自浄作用に似ているなぁと感じました。
いずれにしろ、児童文学と侮る��となかれ、なかなか大人にも印象深い面白い読み物でした。 読後感も実に爽やかです。
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初期の戦国時代の背景とした天狗と人の物語。読みやすいと思う。今手元にあった『戦国の世』(今谷明/著)の巻末年表を見るにつけて、宗端(のちの北条早雲)が小田原城を攻略するのが1495年だから、その辺のおはなし。