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ハードカバー版。表題作と「人魚兵器」「耳の光る児」「海と毒薬」の計4編。いずれも舞台は外国で、御手洗はキヨシとして出てくるだけで、ほとんど主軸には登場しない。ハードボイルドタッチで作者の天才ぶりを感じさせる。いやぁ、なんでも書けるんだなぁと感心する。
単なるトリックを中心にしたミステリーではなく、軸となる人物をドラマチックに描いているから物語に厚みが出る。これ好きだな。しかしながら、舞台が外国であり、細かい部分で感情移入できないために、少し斜に構えて鑑賞する感じになるのがつらいところ。ラストの作品のみ横浜を舞台とした切ない話なんだが、筋がありきたりの失恋話であることから乗り切れないまま終わってしまった。
作者の能力がフルに発揮されている作品集なんだが、私にはあまりハードボイルドがあわない感じかな。いい作品だけに残念。
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御手洗シリーズ。人魚をテーマにした短編4編。
表題作の「溺れる人魚」は4編の中では一番面白かったけど、トリックがありきたで、うーん。(だから御手洗が出てくるまでもなかったのでしょうが)
「人魚兵器」「耳の光る児」はミステリ部分よりも歴史の話が大半で、読んでいて疲れました。御手洗シリーズは興味ない歴史の話でも面白く書かれてるので好きなのですが、今回は途中で嫌になってしまった。
「海と毒薬」で石岡君が長い年月を経て過去から立ち直っていく姿が見られたのは嬉しかった。しかし読者の女性の手紙がただの自分語りにしか感じられず、何故石岡君はその手紙を御手洗に送って見せようと思ったのかが謎です。
全体的にあまり面白いと思える話がなくて残念でした。
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人魚を思い浮かべるお話、4編。なかなか壮大な話から身の上話まで書かれてました。とても面白かったです。今更ながら、島田先生ブームきたかもー
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表紙で選んでしまった本。
とても不思議で理解するのにとまどう話。
本当なのか、嘘なのか。
独特な内容で、男性の方がこういう話は好きなのかも。
どうやらシリーズ物らしいし。
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全体的に暗くて光が見えないお話の応酬に息がつまりそうだった。
外国のお話はやはり苦手かなと改めて再認識。
最後の話も全く入り込めなかった。
暗すぎる。。
人魚がテーマなのだろうけれど
共感できなかったなぁ。残念。
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目次
溺れる人魚
人魚兵器
耳の光る児
海と毒薬
期待していた御手洗さんのミステリー謎解きとは、遠く離れた普通な小説敵だったので、期待はずれでした。
けれど、ロシア、モンゴルの歴史とタタール人という民族についてや、ナチスドイツ時代の現代では考えられない人体実験など、この作品でもまた島田荘司先生から得られた一般知識は、私の一般教養に肉付けしてくれた。やはり島田荘司先生作品には、教養を自然に身につけさせてくれるストーリーは期待してしまい、この点は満足な作品でした。
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人魚をモティーフとした作品4つを収めた中短編集。
『異邦の騎士』が好きな人は、収録作「海と毒薬」を読むべし。
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島田荘司さんは初めて読みました。
人魚が関係するミステリが4篇……蘊蓄が凄かったですが、面白かったです。
ロボトミー手術というものがあったのは知っていましたが、無くなって正解だと改めて思いました。人工的にキメラを作る研究、突拍子もないですが戦時中はありそう、とも思ってしまいました。少しリアリティーがあるところがゾッとします。
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御手洗シリーズ短編集で、これまた読み漏らしているのに気付いて読んでみたが、期待していた内容とは違っていた。
四編中三編が舞台を海外にしたもので、主人公も御手洗ではない。キヨシ・ミタライと呼ばれる彼のストックホルム大学時代の話やウプサラ大学に移った現在?の話が混在し、時系列がよく分からない。
「溺れる人魚」
約二キロ離れた場所にいる二人が、ほぼ同時刻に同じ拳銃、同じ弾丸で死んでいた謎。
唯一のミステリー要素ありの作品。とは言え、ページの大半はポルトガルの元オリンピック水泳選手の数奇で悲劇の人生物語に割かれている。
ロボトミー手術については逢坂剛さんの百舌シリーズで初めて知ったように覚えている。他は映画の『カッコウの巣の上で』か。残酷な歴史ではあるが、こうした悲劇があってより良い治療の確立へ繋がってきたのだろう。
肝心の謎解きは突然の啓示のように降りてきて呆気ない。しかしこうした偶然の重なりは正に天の采配かも知れない。
「人魚兵器」
人魚に見える焼死体の写真からかつてナチスが行っていた秘密の研究を明らかにしようとするミタライ。
ナチスに限らず当時は世界中で様々な非人道的研究が行われていただろうから特に驚きはない。今この時も世界のどこかで表に出せない研究をしているかも知れないし、ましてや戦時中の軍事研究というお題目があれば何でも出来た時代ならなおさら。
マルメやヘルシングボリという地名にベニング・マンケルのヴァランダーシリーズを思い出して妙に懐かしくなる。
「耳の光る児」
年齢も産まれた場所も違う四人の子供に、紫外線を当てると耳が光るという奇怪な現象が起こる。
モンゴル帝国の隆盛とロシア、ウクライナ、クリミア半島の関わりの歴史が主で興味深い部分もあるものの、こちらも結局は歴史の闇の話。少々食傷気味。
この作品は2005年初出だが、2014年以降のロシアによるクリミア半島実効支配を島田さんはどう見ているだろう。
「海と毒薬」
ようやく石岡が出て来て御手洗シリーズらしくなったと喜んでいたら、書簡形式でしかも石岡宛の女性ファンの手記が主題だった。タイトルにある『毒薬』をどうするのかハラハラさせられたが、結局救いがあると言えるのかどうか。それは読み手の受け取り方次第。
御手洗シリーズがどうなっているのか分からないが、今回のように御手洗が石岡と組むことがないのなら読まなくても良いかなと思ってしまった。ミステリーとしても期待したのとは違っていたし。島田さんごめんなさい。
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御手洗シリーズに没入する前に、短編集をいくつか、と思って開くと、片仮名で『キヨシ』と出てきてしまった。
順番間違えたな、でももう閉じられない。狭い街を軒下すれすれに走る電車、言葉だけは知っているロボトミー、不思議だけで終わらせない納得の結末。
車好きを隠さない書き出しの2編目。ここにも聞き覚えのあるキメラという単語。理系作家か?有ってはいけない倫理無用の実験。推理小説というより科学の闇サスペンスの様相。それは3編目にも引き継がれ、4編目に至ってはとうとう、御手洗シリーズをトレースする女性の手記。未読のままでも充分面白く哀しく、でも希望を書き忘れない作者の心遣い。
読んで良かった。さらに御手洗シリーズへの読みたい欲求が増した。