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紙の本
ムラカミの世界に対する宣戦布告
2007/03/04 19:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
巻頭の作品ページを見て、特段の興味も感慨も湧かなかった。おまけに、秋葉原界隈に林立するメイドカフェのおねえちゃんもどきのフィギア、空想世界のフィギアが並んでいて、ますます理解不可能に陥った。こういった作品を制作する作家の飛んでる話しだったら御免だなあと思ったが、まず少しは付き合ってみるかと思って読み始めた。
ところが、戦略と戦術に裏打ちされた作品の製作過程とアピールに、感嘆の声の連続だった。
「欧米を中心にした芸術の世界で取引されているのは、人の心です。」
この言葉にたどり着くまで、ムラカミ氏は絵筆以外にどのような勉強をしたのか、この核心に触れたいが、それは企業秘密なのかノウハウとしては出てこない。
どころか、本当にこの人は食うや食わず、コンビニエンスストアの廃棄弁当を分けてもらって糊口をしのいでいた人なのか、作品を発送する梱包用のダンボールにすら困窮していた人なのか、これが6800万円や1億円の値がついた作家なのか、俄かに信じがたかった。
しかし、読み進むうちに自身の置かれた立場、歴史、日本人という逃れようもない事実から逃げることなく、客観的に自分自身の価値を高める仕掛けまでしているのである。
「美術の本場にはルールがある」など、今までかように具体的な言葉で表現した人がいただろうか。そのルールの存在を把握し、ルールの変化にも絶え間なく気を配る。
いまでも、有田焼や浮世絵などは作家一個人が最初から最後まで手がけたものではないからという理由で価値を認めない人がいる。分業で制作した作品はどんなにすばらしくとも、それは美術品としては数段価値の下がる物であると評価するなかで、日本人の美術品に対する強みは集団制作であることに気付き、その強みを生かす。自身はマネジメントする立場となる。
フィギアや前衛的な作品に一種のひらめきで制作されているかと想像しがちだが、「挫折」も大切だ、という言葉の前時代的な感覚に驚く。
そして、徹夜なんて努力のうちに入りません、と言い放つのにも驚いたが、完成した作品がど根性シリーズであったことに訳がわからなくなった。
実業と芸術という分野は異なれど、起業論と名がつくとおり、起業するには相応の覚悟と洞察力、分析力、水面下での努力がどれほど必要かがわかりました。酔狂で1億円の価値がついているわけではないことが、よくわかりました。
紙の本
芸術もビジネスだっていうアプローチによる世界的成功と、熱い現代アート論
2016/01/28 06:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たてよこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ、わかりやすかった!
今まで美術史とかアート批評とか読んできたけど、こんなに現代アート界を俯瞰した上で、身も蓋もないくらい赤裸々に語ってくれた本はなかった。
再三同じような話や例や表現が出てきて、単行本の構成としてはまとめきれてない気がするけど、村上氏の長年のチャレンジ、試行錯誤、ガッツでやってきた経験と実績からほとばしる生の声は、無二のものであり、非常に貴重な内容。心に響いた。
要するに、アートで成功するには、西洋アート史という不文律や文脈を知った上での革命でなければならないし、現代のアートシーンの中心がアメリカなのであるから、言葉も文化的背景も極東の小さな島国日本とは違うアメリカ人にわかるように説明できなければならない。お金がないと自由に制作がでいないのだから、お金にこだわるのは当然で、そのお金を儲けようと思ったら、お金を払う側が欲しくなるようにもっていかないといけない。つまり、アートとてビジネスということが書いてある。
納得する一方、でも、それって、芸術全般の話じゃなくて、現代アートの先端限定の話で、もっと普遍的な美に根ざした芸術もあるんではないの?と思った。まぁ、そういう作品は、1億円で売れたりしないんだろうけど。
アーチストになりたい人、アーチストだけど、もっと儲けて自由になりたい人、現代アートをわかりたい人、趣味・プロにかかわらずアートのバイヤーさん等、アートに関わる人だけでなく、ビジネスマンで企画部分に携わる人にとってもひっかかりのある面白い内容と思う。
紙の本
芸術も商品なんだ、という切り替えが必要
2006/11/28 19:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:arayotto - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧乏でもいい、俺は俺の作りたい作品を作るんだ、それが芸術だ!芸術に金もうけは似合わない!
日本人が思う、芸術、芸術家とは、ほとんどがこんな感じではないでしょうか。
私も少なからず、芸術ってそんなもんかな、と思っていました。
この夲を読むまでは。
面白い!スバラシイ!芸術とマネーを結びつけた画期的な現代芸術金儲け論です。
・マルセル・デュシャンが便器にサインをすると、どうして作品になるのか。既製の便器の形は変わらないのに生まれた価値はなんなのか。
・媒体に出る。人にさらす機会を増やす。大勢の人から査定してもらう。ヒットというのは、コミュニケーションの最大化に成功した結果である。
・芸術家は技術よりも発想に力を注ぐべき。
・ゴッホが高い評価を受けている理由は、おそらく「端的に説明できる物語」があるからでは。
・世界に芸術をプレゼンテーションするなら作品の制作にとどまるべきではなく、作品周辺の細部にまで工夫をこらした、お客さんに楽しんでもらう環境が不可欠。
等々、よくぞ言ってくれました、という内容ばかり。
昔ながらの日本の「芸術家」は、自分の作品が売れないことを正当化するために、この夲に書かれてあることを全否定するんだろうな。
そうして目が出ないまま、どこかの片隅で、発表できない自作群に埋もれていくのでしょう。ご苦労様でございます。
私は仕事でよく陶芸家の方々と出会います。(陶芸の番組を作っています)
みなさん独創的、個性的、伝統的な素晴らしい作品ばかり作っていらっしゃいます。手触り、肌触り、口当たり、色合い質感、どれも魅力的です。
でも思います。どれもみな作品「単独」の素晴らしさなのです。
作品の販売、発表も個展やギャラリーなど、とても狭い範囲で完結させてしまっています。たまに料理家や華道家とコラボレーションを組んで、新奇な展示を試みている方もいらっしゃいますが、作り手の顔がどうも見えてきません。
でき上がった作品を画廊や展示会場に搬入して、あとはよろしく、が多いような印象を受けます。
村上隆氏が言う、芸術にも必要な「しかけ」や「工夫」「付随する物語」が欠けているような気がしてなりません。
陶芸の世界は、釉薬の色にしろ、器の形にしろ、この先新しい進展はあまりないように思えます。となると、陶芸家がブレイクするには、コミュニケーションの最大化や付随する物語の面白さ、奇抜さが重要な要素となってくるのかな、と思ったりしてしまいます。
陶芸などの「工芸」、映像、音楽などのいわゆる「クリエイティブ」に従事している人も、一度読んで見ると、なにか発見があるかもしれない一冊です。
どうせモノを作るのならを多くの人々に見てもらいたいし、知ってもらいたいですからね。