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文明崩壊は避けられぬか -2006.11.18記
人類の高度文明による生態系や気候変動などさまざまな異変・破壊から、津波や海面上昇などの風水害や超火山の爆発まで、現在考えられ得るカタストロフィについて、よく個別具体的、網羅的に丁寧に説かれ、読む者にその危機の全体像を結んでくれるという意味で良書といえよう。
天文学者の海部宣男は10/1付毎日新聞の書評で、「本書がこれまでの類書と異なるのは、文明活動による危機だけでなく、生活を脅かすレベルから地球的破滅に至る大災害まで、考えられる脅威を徹底的にリストアップし、検証していることである。大項目は、ナノテクや新病原菌など科学技術の暴走、テロと戦争、人類が引き起こす生態系の破壊、温暖化と気候の大変動、地球・宇宙規模の天変地異。それらをさらに具体的可能性に分けて検討する。個々の議論だけではわからない人類と地球生命の将来が、全体的に見えてくる仕組みである。さらに丁寧にも、脅威ごとに過去の発生例を挙げ、将来の可能性を調べ、最後に評価を下す。(1)発生の可能性、(2)発生した場合のダメージ度、(3)その二つを掛け合わせた総合的危険度で、0から10までの数値評価を示すのだ。まだ科学的調査が進んでいなかったり、確率的にかわからないこともたくさんあるから、最後は著者のエイヤの危険度評価ではある。荒っぽいが、わかりやすい。そして数値を並べてみれば、ああやはり、人類自身の活動こそが差し迫った脅威という結論になるのだ。これだけの事実を集めた努力、押し寄せる深刻な脅威にくじけず分析評価をやりとおした著者の果敢さに、敬意を表しておこう。人類文明がいま自分と子孫に対して何をしているのかをおぼろげにではあるがさらけ出し、まだわからないことがいかに多いかも総合的に示した」といい、「人類のリスク概論である。」と紹介している。
本書において著者が、総合危険度で最高の7という評価を下すのは、超火山の爆発という自然災害もあるにはあるが、その多くは人類の文明が引き起こしつつある数々の自然破壊の脅威においてである。高度資本主義下の大量消費はもはや持続不可能となりつつあるが、エネルギーや新物質の大量放出は、大気圏においても海や陸においても、エコシステムの破壊を確実に進め、世界的飢餓、野生生物たちの死滅、地球温暖化などによる複合的な効果が、遠からず文明社会の崩壊につながると予測され、さらには加速する温暖化傾向が大きな気候変化の引き金にもなり得るという。
「もう手遅れになりかかっている」、「人類が起こしつつある地球環境変化の傾向は、もう当分止められないのではないか」と著者は言うが、そうかもしれない、否、早晩きっとそうなるにちがいない。