紙の本
中村雅楽の全集一冊目
2008/03/24 19:45
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
老歌舞伎俳優 中村雅楽の探偵譚が全集にまとまった。シリーズ作の中には、直木賞や日本推理作家協会賞の受賞作をはじめ、好短編がそろっているわりにはなかなか手に取れない状態が続いていたので、なんとも嬉しい企画です。
その一冊目が本書、シリーズの代表作で直木賞を受賞した『團十郎切腹事件』、江戸川乱歩にすすめられて書いた記念すべきシリーズ一作目『車引殺人事件』などを含む短編十八作が収録されています。
新聞の芸能欄の記者 竹野がワトソン役・語り手をつとめるオーソドックスなつくりのミステリですが、探偵役が歌舞伎俳優だけに、劇場、舞台の上、楽屋など特殊な場所で起こる事件の数々、中村雅楽の鋭い推理力、そして何と言ってもその悠々たる語り口、今まで全集としてまとめられていなかったのが不思議に思えるくらい、派手さはないもののいぶし銀という言葉がぴったりの作品が並んでいます。
次巻もとても楽しみです。
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ミステリとしては多少牽強付会と言った印象を受ける作品もある。
が、構成の優雅さや探偵役の中村雅楽の魅力などは素晴らしい。
作品の背景が50〜60年代であるというのもあるのかもしれないけど。
中身では、やはり表題作の「時の娘」的な趣向が流石。
後半に行くにしたがって、だんだんと切れ味が増してきているので、次が楽しみ。
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古き良き探偵小説。江戸川乱歩に薦められて書いたのが始まり。著者は元々演劇分野の論者+探偵小説ファン。
主人公の探偵/歌舞伎役者中村雅楽はエラリー・クイーンのドルリー・レーンが模範らしい。ありがちな捜査当局と探偵との確執もなくなんだか妙に和気藹々とした風情。
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これぞコージーミステリ。本当に上品で、でも甘くなくシビアで、しっかりと読ませる短編連作。老成した歌舞伎俳優から聞き書きをして記事を書いている東都新聞の芸能記者竹野を狂言回しに据えて中村雅楽という架空の歌舞伎役者を主役にした珠玉の連作ミステリ。殺人事件もなかにはありますがそれよりも日常の恋愛沙汰のもつれだったりライバルの人気のあるのを妬んだいたずらだったりと、そういう細かい謎を鮮やかに、さらになぞ解きの際の当事者たちの気まずい思いを最小限に押さえながらさばいてゆく手並みは本当にスッキリと育ちの良い感じで、読むと身になる感じがします。文庫だと片手で持って読むのに少々重たいですが、とても面白かったです。歌舞伎に親しんでいるととても楽しんで読めますが、歌舞伎を特に知らなくても、何の苦労もせずに楽しく読めます(むしろ歌舞伎に興味を持つ入口になりそうです)。
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読みやすいということはすごい美徳!!
食事中に一篇(行儀悪い)、寝る前に一篇、口直しに一篇…。
長さがちょうど良いので、忙しい平日にオススメ。
内容も、時代が時代なので、古さを感じてしまうかな?と思っていたけど、実際そんなことはなかったです。
確かに文章や、登場人物の考え方・行動に「古さ」を感じることはあったけれど、それはそういうものだと思えば気にはならないし。
歌舞伎は全然知らないのですが、歌舞伎のストーリーについても話があったりするので、ちょっとかじれたりして、そういうところも楽しい。
上記のように、ちょっとした読書にあまりに便利な本なので、読了するのが勿体ないと思っているところです(笑)
しかし…捜査内容漏らしまくり、一般人がいろいろなところに首突っ込みまくり、現代じゃありえないよなあ。探偵も活躍しにくい時代ですねえ。
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半ば引退した歌舞伎役者、中村雅楽(ががく)の事件簿。
雅楽は、77歳でリューマチになって身体もよく動かない。が、頭脳明晰なのだ。その雅楽が語る事件を、演劇記者である「私」が描く。歌舞伎、演劇界を舞台にした、シャーロックホームズといった感じ。
面白い、面白いよ。
序文を江戸川乱歩が書いてるぐらい古い(?)作品なんだが、ちっとも古さを感じさせない。確かに、風俗とかそういうものは古いんだけど、雅楽の存在が時間を超越してるのだ。
ああ、なんでこんなに面白いのを今日まで知らなかったんだろう。
このシリーズ、「中村雅楽探偵全集」として5巻まで出ることになってる。
1巻は短編集で、とにかく雅楽の粋で知的で上品なさまにやられます。
最高っす。
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中村雅楽(がらく)ものを年代順に編集(長編は別立て)。第1巻は1958年から1960年にかけて発表された、第1作「車引殺人事件」や直木賞受賞作の表題作を含む、18作を収める。
雅楽ものは昔結構読んだが、単行本だったと思うので、立風書房版だったのか? 中村勘三郎が雅楽を演じた土ワイの2時間ドラマも好きだった。「奈落殺人事件」の、メイントリックではなくメイン錯覚はずっと覚えていたのだが、今回読んでいるうちに、ある人物が土ワイで淡島千景だったことを思い出し、それで犯人も確信(淡島千景が出ていて何でもない役というのはありえないでしょ)。いやあ懐かしい。再放送を見たいものだ。
TVが出たて、新幹線はまだない時代の風俗も興味深い。
ただ、「松王丸変死事件」なんかは、ええっそんな理由で死んじゃうの!? 確認もせずに? メンタル弱すぎだろー。この頃の人たちが今の世のいじめなんか体験したら、サヴァイヴできる人なんか一人もいないんじゃあ。ストレスも乗り切れなさそう。と思ってしまうが、お話だからか?
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車引殺人事件
尊像紛失事件
立女形失踪事件
等々力座殺人事件
松王丸変死事件
盲女殺人事件
ノラ失踪事件
團十郎切腹事件
六スタ殺人事件
不当な解雇
奈落殺人事件
八重歯の女
死んでもCM
ほくろの男
ある絵解き
滝に誘う女
加納座実説
文士劇と蠅の話
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なかなか楽しい時間をくれた本でした。ミステリとしてはさすがに時代を感じる物もありますが、話が全部芝居に絡んでいるので お芝居好きにはたまりません!たとえば、密室もののミステリを読むとその建物の薀蓄みたいなのが挟み込まれますよね、その薀蓄部分がぜ〜んぶお芝居の事なんですもの う〜ん楽しいぞ(笑)そして探偵役の老優 中村雅楽の語り口が粋で素敵!美しい日本語に触れらます。
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おもしろい
ミステリとしては解決部分で読者に提示されていない手がかりが現れるなど、謎解きを主眼としてみた場合はがっかりするかもしれない
しかし、それは読み手が読み方を間違っているだけで、不可解な事件が起き、それを雅楽が解決するという一連のストーリーを楽しむという読み方をしていけばものすごく面白くなっていく
読んでいて思ったのは半七捕物帳によく似ているなということ
実際作者もある程度意識していたようで、読者のあまりなじみのない世界でおきる様々な魅力的な謎を解決していくというあたりに同じ魅力がある
まだまだ作品はたくさんあるようなので読むのが楽しみ
読んでいないかたは是非
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老歌舞伎俳優・中村雅楽の探偵譚全集の第一巻。オーソドックスなつくりのミステリながら、扱う事件が多種多様でバラエティに富んだ内容。謎解きそのものもよりも、人情味あふれる雅楽のキャラクターや、かいま見える梨園の舞台裏が読みどころかな。江戸川乱歩のコメンタリーや小泉喜美子の解説が併録されているのも嬉しいね。
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歌舞伎役者「中村雅楽」が、不可解な事件の《なぞ》を解く人気シリーズ。老優・雅楽のたたずまいがとにもかくにも魅力的で、つい手に取ってしまう。
この第一巻に収められているのは、江戸川乱歩の後押しで世に出ることになった「車引殺人事件」をはじめ、初期に書かれた18の短編。なかには、第42回直木賞を受賞した表題作「團十郎切腹事件」も含まれる。これは、ナゾの自殺を遂げた八代目市川團十郎の有名な事件を、およそ百年後に「中村雅楽」がなぞ解きするというもの。若い時分に耳にした知人の昔話をきっかけに、次第に切れ味を増してゆく「雅楽」の推理に圧倒されるが、じつはこれ、ジョセフィン・テイの古典『時の娘』への秀逸なトリビュートとなっている。過去の歴史的事件のなぞ解きという構成はもちろんのこと、「雅楽」がその推理を披露するシチュエーションも、人間ドッグで入院中のベッドの上という凝りよう。
どうやら、戸板康二という作家は「無」からなにかをひねり出すよりも、実在するさまざまなものを巧みに組み合わせて新たな魅力的な存在を生み出す天才のようで、それはまた「中村雅楽」というキャラクターの造形にも活かされている。巻末に収められた自身による作品ノートによると、「雅楽」の名は中村歌右衛門と酒井雅楽頭を組み合わせたもの、老優の語り口などは親しくしていた歌舞伎界の古老・川尻清潭から、そのほかにも岡本綺堂『半七捕物帳』やエラリー・クイーンのミステリに登場する「ドルリー・レーン」などもヒントにしているとのこと。こんな具合にさまざまな影響を直接的間接的に受けながらも、「中村雅楽」がまったく独自の魅力的キャラクターとして生き生きしていることに感心せずにいられない。品格と威厳を兼ね備えた老人でありながら、無心で推理に没頭するその様子はなんとも無邪気で微笑ましい。
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何より登場する人物のキャラクターがいいし、まさに古き良きを感じさせる短編集だった。
大掛かりなトリックや、目立った驚きは無いものの、一気に謎が解明される様はやっぱり名探偵だ。
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昭和30年代、ベテラン歌舞伎役者の雅楽が探偵役。
推理はするが犯人と直接対決で追い詰めたりせず、犯人を当てるだけで、あとから犯人の自白を伝え聞く、というような話が多く、穏やかな雰囲気の事件譚で、江戸前の洒落た老優がかっこよかった。
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歌舞伎の世界の推理物
記者をしていた著者だけに、推理以外の歌舞伎の世界にも
興味を持たせてくれる
貴重なシリーズ