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紙の本

言葉が音を呼び寄せる

2007/02/25 01:25

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る

音楽を言葉で言い表わすのは難しい。しかし、作曲者や演奏家、演奏会の様子について語ることはできるかもしれない。音楽を聴いたときの感動や喜びを表わすこともできるだろう。
梅津時比古は、ひたすら音楽に聴きほれ、その感動を伝え続けている人らしい。音楽コラムを書いて20年。本書は、毎日新聞夕刊に連載している「音のかなたへ」というコラムをまとめた2冊目の本。見開き2ページの短いエッセー。筆者が感動した演奏会、CD、音楽に関する、作曲家や演奏家に関する逸話を、自身の人生観や自然観にからめて綴る、きわめて主観的な文章である。
右手のしびれから左手のピアニストになることを余儀なくされた後、奇跡的に右手が復活したレオン・フィッシャーが、40年ぶりに両手で録音したCD「トゥー・ハンズ」についての描写を引く。(題名「両手の音」)
“演奏から、あふれるような喜びは聴こえてこない。まるで、復活の望みが奇蹟のようにかなった瞬間に、諦めを悟ったかのようだ。静かな喜びと諦観が入り交じる。(中略)音のひとつひとつが言葉となって深く沈む第二楽章で、おそらく彼は涙を流している。その終わりに近く、音を静かに断ち切って、転調が訪れる。まるで神の声のように。それが、彼にとっての両手の復活であったのだろう。人には、できることとできないことがある。それでいいんだよと、その声は、いつくしむように語っている。”
客観性に背を向けて、ひたすら主観的、情緒的に筆者は語る。音楽は演奏された途端に、聴く人のものとなる。聴く人がどのような人生を送り、どのような心持ちでその演奏を聴いているのか。それによって、演奏の受け止め方は異なるものだ。筆者は自身の感性のフィルターを通して聴いた演奏を、自身の言葉で語る。人によって、ときによって、受け止め方に違いがあることを知っているからこそ、その感動を言葉を尽くして伝えようとしているようだ。
グルジア出身の現代作曲家、ギヤ・カンチェーリの曲については、次のように書いている。
“音楽による世界の読み解きもやはり物語をもって行われてきた。楽劇はまさに新たな神話の創出である。ソナタ形式もまた、生の内面と外の形の見事な統一としての物語であった。物語とは、言葉を変えれば虚飾・虚構でもあろう。それなしに世界を理解することは不可能なのであろうか。(中略)カンチェーリがなんとかして、音にまとわりついている文化の文脈を取り去ろうとしていることが分かる。ヴァイオリンとピアノのかすかな音で彼が破壊しようとし、葛藤しているのは、あまりにも重苦しい、過去からの時の流れだ。その闘いの結果、カンチェーリに残るのは、叫びと沈黙の、傷ついた音の残滓になる。(中略)そこから聞こえてくるのは、裸の存在の悲しみのようなものだけだ。だが、その悲しみが、なぜか、かすかな安息をも、もたらせてくれる。”
カンチェーリのありようを否定はしていないが、筆者自身は物語を必要とし、音と言葉を邂逅させたいと願っている。どちらが正しいとは決して言えないし、筆者の感性にどの程度共感するかも人それぞれに違いない。しかし少なくとも私には、この演奏を是非とも聴いてみたいと思わせられる文章が随所にあった。筆者の言を確かめるためではなく、自分の耳で聴いてみるために。言葉が音を呼びよせる。

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2022/12/07 23:40

投稿元:ブクログ

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