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多くの謎を孕みつつストーリーが展開していくSF「廃園の天使」シリーズの第1弾。著者の飛浩隆氏が巻末に記した「ノート」にはこう書かれている。『ここにあるのはもしかしたら古いSFである。ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。』まさに、この言葉の通りの小説。面白い。登場人物は「人物」ではなく、「AI」つまりプログラムに過ぎないが、つい感情移入してしまう。まあ、小説とはそもそもヴァーチャル世界であるわけだが・・・。オススメ。
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作者ノートにあるとおり、「清新であること、残酷であること、美しくあること」、そのような姿を「導きの星」として彫琢された、すばらしいSF作品。続編も楽しみだが、文庫化を待つことにする。
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飛浩隆にはまった最初の作品。
人間に放置されて1000年後の仮想リゾートで暮らし続けるAIたちの物語。
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仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこで
は、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが
永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。
謎の存在“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き
残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける
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作者がSFの定義としている「清新であること、残酷であること、美しくあること」というのは私にとっても真理。そしてこれは正にSF。言葉の持つ力というものを、充分すぎるくらい味わえます。
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まさに「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ」これに尽きる。安定して、不安で残酷な、そして今にも壊れそうなユートピア。
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「鳴き砂の浜に硝視体(グラス・アイ)を拾いにいこう」
冒頭の一文である。
造語満載の本格SFかと思わず身構えてしまい、少し寝かせていた本作。
みごとに、期待を裏切って、午後11時から午前2時までノンストップで読んでしまう作品だった。
ジェットコースターのような興奮する読み口ではない、続きが気になって読み止められないのではない。
そうした心の動きの作用ではなく、読んでいること自体のストレスや疲れがほとんどないから、長時間一気に読めてしまうのだ。
「完璧な小説」と解説は語るが、それはこの一息入れたいと思うほどの疲れさえも感じさせない小説の構成と文体に圧倒的に表れる。
中だるみさえない。
そうした心地よさとは真逆に、語るところは美しく残酷である。
この作品の主人公たちは、AIであり架空のキャラクタであり
彼らは、自我を持ちながら、存在意義として「人間」に奉仕するようにプログラミングされている。
物語が続くうち、じわじわと「人間」とAIとの加害/被害関係が明らかにされていく。
それは、そうした事実を「読んで」いる読者=私へもそっくり投影され、はねかえる。
読みつつ途中から、なんともいえない、加害意識、サディスティックな感情がわき起こってくるのだ。
それは悲劇と分かっていつつ、その本を読むとき、あるいは映画を見るときの感情である。
例えば、私たちは、キャラクタに感情移入し、悲劇を嘆きながらもどこかで、サディスティックにおもしろがりながらみている。
美しい悲劇のカタルシスの裏に隠された、加害性。
今まで気付かずにいた、物語を読むということの暴力性、加害性を引き出された。
それでもなお、この作品の描き出す、「純粋な苦痛」「美しい残酷」には心を動かされてしまうのである。
文句なく、最高レベルの小説であると思う。
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とにかくすごい小説、の一言に尽きる。巻末の解説に「完璧な小説」という表現があるのですが、まさしくそう呼ばれるにふさわしい作品のひとつではないかと。ノスタルジックで背徳的で、残酷で美しい。これ以上の説明は野暮なだけかな、と感じてしまいます。
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最高!!。1000年放棄された仮想リゾートを舞台にしたSF。永遠に続く夏という舞台設定がもうたまらない。魅力的なAIたちと蜘蛛との攻防を描写する残酷で、儚くも美しいイメージの奔流に圧倒される。大満足です!!。
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うーむ。。。
絶賛されている人が多かったけれど、自分には合わなかった(´・ω・`;)
AIというものをどう認識するべきなのかがわからない。
誰の立場に立ち、何をどう感じるべきなのか・・
そして突然起こる崩壊と痛みと・・・救いがどこにあるのかわからない残酷な世界です。
シリィズものなので最後まで読んでようやく、なんでしょうが、続きをてにとろうという気にあまりなりませんでした><
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美しく、残酷。
引き込まれるストーリーと魅力的に描かれるキャラクタ。
人に勧めるのはすこし気が引けるけれど(主に性的や生理的嫌悪感を喚起する描写)、読み応えのある良い作品でした。
明日続きを買ってきます。
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すごい。
五感が万華鏡のように花開く。そう云う傑作、と云うか、怪作?
ダイナミズム、集約してゆく力、ギリギリの線で保たれる均衡と、それを突き破る潮流。
この本が、私にとっての硝視体のようです。
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端正な文章だな、というのが読み始めての感想でした。夏のきらきらしたものを切り取ってきてそれを文章に変換したような最初の部分が段々と陰惨な崩壊へ繋がっていく過程が面白かった。でも、その崩壊が凄くグロテスクで異様なものであるのにも関わらず、良く作りこまれた微細な細工を丹念に壊すような、神経質な端正さを感じて新鮮でした。
閉じた本の中で、ログアウトしたゲームの中で、一体キャラクタたちはどう生きているのだろう? 彼らは自己を認識しているのかしら?
そういうことを考えたことがある人は、屹度楽しくこの本を読めるのではないかなぁと思います。
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著者があとがきで書いているとおり、残酷で美しい物語でした。
AIたちは人間に虐待されるために「生きて」いて、彼らの苦痛が物語のキーなのです。
なんだかすごく痛そうなのです。エロスな部分も痛みにつながっていて、悲しいとか切ないとか言うより、痛くて残酷な気がしました。
夏の海辺のキラキラしたかんじ、「視体」や硝子、雪片の透き通った、綺麗だけれどどこか虚ろなイメージ、そういうのがデジタルの明滅とリンクしているようでした。
個人的にはあんまり好きな部類ではない(痛すぎる)のですが、なかなか面白かったです。
結局「天使」や「罠」の行き先などはわからずじまいだったのですが、補足するようなお話が出ているようです。
2010/6/5 読了
あらすじ的なもの
ヴァーチャルのリゾート世界「夏の区界」に住むAIたちは、もう千年もゲスト(=人間)を迎えていなかった。
そんなある日、突如として「夏の区界」に異変が起こる。
無数の「蜘蛛」が現れ、AIたちを、世界を食い始めたのだ。
生き残ったAIたちは「鉱泉ホテル」に立てこもり、蜘蛛たちを撃退すべく罠をしかけ戦いに挑むが…。
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やはり飛さんはすごいですね。
描写も設定も展開も複線の張り方もとにかく緻密、濃密。
ベートーベンみたい。
ただ本作品はあまりに痛々しくて読んでいられなくなって挫折してしまいそうになりました。。。
以前、美術館でアネット・メサジェという人の作品を初めて見た時の衝撃を思い出しました。
ともあれ、読む人の五感にここまでの働きかけが出来る作家はそういないと思います。