紙の本
子どもの領域を飛び出して、大人に迫り来るもの
2007/10/22 21:40
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた傑作児童文学の改訳版です。二十年前のヒット曲などを聴くと、そのあまりにもゆっくりとしたメロディーに調子が狂ってしまうのですが、本書はその逆です。スピード感溢れる畳み掛けるような文章が、慣れ親しんだ物語とはいえ新鮮でした。何かにつけ気忙しい現代人にあわせた超訳かと思ったら、こっちがケストナーの地の文章だそうです。文科省推薦図書がラノベ風になって再登場とでもいいましょうか。児童文学はちょっと、という大人にも読みやすくなってます。
が、トリヤーの挿絵はありません(泣)
ケストナーといえばトリヤー。その作品にさらなる魅力を与えていた挿絵がないのは正直悲しい。そして高橋健二訳のケストナーに慣れ親しんできたせいで、こどもの本が持つ教え諭すような優しい響き。そんなものも若干薄れてしまったようで、大人とはいえ少々寂しくもあります。
とはいえその欠落を補って余りあるのが、末尾に寄せられた訳者による解説。名文です。
ケストナーは確かに子どものための本をたくさん書いた人だけれど、その視線の先には常に大人がいた。この飛ぶ教室が出版されたのはドイツにナチ政権が誕生した年。「何やってんだよ大人」多くの子どもがそう思っただろうなか、「大人ここにあり」の気概を見せた。そう、そうなんだよ。だから好きなんだよケストナー。大人になったが故にその真価に気付く。その魅力を余すことなく伝えてくれる解説から得るものは、本文に負けず劣らず多い。
酒場の勇者ばかり増えてもしょうがない。
「賢さのない勇気は乱暴に過ぎない、勇気のない賢さは冗談にすぎない」。どう考えても時局に喧嘩を売ったとしか思えない、ケストナーのこのカッコ良さ。久々に痺れると共に、もういい大人なんだけれど、いつまでたってもそうはなれない己の未熟さを反省せずにはいられない。
これはクリスマスの物語。勇気と賢さとその他諸々と。そんな色々なものを詰め込みながら、子どものそんな勇気と献身に対して、大人は正しく報いているだろうかと思わずにはいられない物語。子どもの時に読み損ねたより多くの人に届けばと、押し付けがましくも思う。
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あらゆる世代が楽しめる、最高の児童文学。大人と子供、勇気と友情、日常と非日常、あふれるやさしさと、ほんの少しの厳しさ、物語に詰め込まれた素敵なエッセンスを、たっぷり味わってください。
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子供っていうのは子供に色々考えているものです。決して大人には理解してもらえないけど。
ここに出てくる子供たちに多少共感しながらもどこか冷めた目で見てしまうのはもう子供じゃないからでしょうか。
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ドイツの作家、ケストナーの児童文学作品です。
その他、児童文学では「点子ちゃんとアントン」「エミールと探偵たち」「ふたりのロッテ」などが有名ですね。
「飛ぶ教室」は
ギムナジウムで暮らす5人の少年の、クリスマスまでの冬の何日かを描いた
楽しいおはなし、です。
けんかや友情、大人とのかかわり、親への気持ち・・・
ストーリィはスタンダードですが、読んでいて楽しいのは
少年たちへの作者の暖かい視線を感じるから。
簡潔でべたつかず、ユーモアに満ちた文章からは
ケストナーの「すなおで軽やかなこころ」を見ることができます。
訳者丘沢静也氏の解説にも書かれています。
『人生は綱渡り。だがケストナーは悲壮ぶらずに、ユーモアというバランス棒を持って、軽快に綱渡りしてみせた。「人生を重く考えることは、かんたんだ。しかし人生を軽く考えることは、むずかしい。」』(p.226)
そう思う。
むずかしさにチャレンジしているからこそ、すなおで軽やかな姿勢は好ましい。
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なんでもっと早くに読んでおかなかったんだろう。
せめて中高生のころに読んでいたら、ちょっと考え変わってたかも。
訳もとてもわかりやすく、あっという間に読み終わってしまった。もっと読みたい!と思えるような本。
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「勇気のある人間が賢くなり、賢い人間が勇気をもってはじめて、人類の進歩というものが感じられるようになるだろう。」「ぼくって、ものすごい臆病者なのさ。でもね利口だから、誰にも気づかれないようにしてるんだ。」
個人的にはマルティン、ウーリがお気に入り。禁煙さんと正義さんの会話も好き。マルティンが帰宅できたときは本当に嬉しかった。
やっぱり男の子の友情ってとてもいいなあ。
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クリスマス前なので「飛ぶ教室」。山口訳は受け付けなかった。丘沢氏の翻訳は中学生口調に近づいているけれど、ときどき妙な訳が。あとがきにあるように、ドイツ語で読まないとしっくりこないのかなぁ?
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少年達の生活をつづったお話。実際、色々な問題や悲しみ、もどかしさをかんじていているけれど、それらを全部包み込むようなやさしさに溢れています。
読み終わったあとに、なんともいえない幸福感が込みあがってくる。
そんな感じ。
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少年時代同名?の漫画が短期間連載され
この本も読んでみたいと思っていたが、なぜか読まずにいた。
大人になったからこそ気づくこともある。
大人だから書けることもある。
友情、愛情、優しさをサラリと。
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なんともスウィートな小説。
なかでも孤独に学校裏の禁煙車両で暮らしている「禁煙さん」と教師であり寮の監視役の「正義さん」のエピソード、もともと舞台になっている学校で一緒だったのだけど離れ離れになっていたのだ。生徒たちの素敵なサプライズで再びめぐり合う。正義さんはクリスマスにお金がなくて家に帰れない生徒のマルティンに切符代をプレゼントし、「君たちはわたしに金塩酸をプレゼントしてくれたからね」と言う。こことても好き。
もちろんスウィートじゃない部分もいい小説。特に弱虫とからかわれがちなユーりが自分の勇敢さを見せ付けるために飛び降り劇を見せて、大怪我をするのだけど、それに対して禁煙さんが「もしこれをしなければこの子は別の病気になってしまっただろう」というところだ。作者は前書きで勇気と賢さが大切だと説く。賢さなしの勇気は乱暴で、勇気なしの賢さは冗談と半ば怒る。この二つが合わさってやっと人は成長するのだと。生徒ももちろん制しー徴するが大人の禁煙さんと正義さんも成長する。勇気と賢さを持って。
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よくわからなかった、というのが素直な感想です。どこか、何かに熱を入れることができず、何か心に残すこともできませんでした。読み継がれている作品に手大して、何も抱けないというのはとても情けないし、恥ずかしい。
読み終わったのは1ヶ月半も前のことなので、いまでは読んだ雰囲気をかろうじて思い出せる、といったところでしょうか。長年連れ添う、連れ添った仲間と一緒に、世の中に影響を与えなくても自分たちには与えるできごとをする、そんな感じ方をしています。たぶんお酒と共に読むのが適していると思います。
2008.9.27. 23:05 自室にて読了
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2008.11
ちょっとイメージが違っていた。ファンタジーな感じの本かと思ってました(何か勘違いした、私?)
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BLな目線で読むと最高(笑)な古典。
男の子ばかりの登場で、しかも女装少年までとは時代をかなり先取っている。
腐女子が喜びそうだ(笑)。ライトノベルっぽくしたら大喜びだろう。
友情がいっぱいだ。正義さんと禁煙さん、仲良すぎ……。腕を組むなんて。
正義さんことヨハン先生の話を聞いて生徒たちが改心(?)していく過程がステキだった。
ただ、ヨハン先生の話の教訓は心を割って話せる人の必要性なのに最後まで
マルティンが家族のことを話そうとしなかったのは物語的にどうかと思う。
本全体が雪のように真っ白でその雪景色がありありと浮かんできた。凄くステキなクリスマスストーリーだった。
文章がシンプルで下手な技巧を伴わないため、感情が素直に伝わってきた。
それでも、もっと上手く訳してもらいたい。文のつながりとか。
彼らのその後を知りたいと思った。最初はキャラクターが五人もいて、その個性を
把握するのに時間を要してしまった。
それにしても、語り部は結局誰なんだろう。空想と現実の融合だとも考えられるが、なかなか粋なことをしてくれる。
大人と子どもが明確化していて、ヨハン先生みたいな大人になりたいと思う。
最後のクリスマスプレゼントなんてお約束だけど、なんて粋な計らいをするんだろう…ステキだ……。
やはり古典というものはおもしろいから現在まで読み継がれているのだろう。
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古典、特に海外ものってずっと嫌いだったんですよ。
あの個性もリズム感もなくしてしまう訳、変に格調高い文章、児童向けにはよく見られる「です・ます」文。さらには子供のときに無理やり課題図書で読まされ、嫌いというより嫌悪してたんです。
それがこれを読んだら「あれ?」と。
古典新訳文庫にはまるきっかけとなりました。
なんとなくタイトルに惹かれて購入。正直な感想、すっごいおもしろかった!これが新訳か、やったな光文社!と思いました。こんなに面白いんだったら書店で文庫担当時代にもっとプッシュしておくんだった。ごめんなさい、光文社(土下座)。
登場人物がみんな素敵。主役の子供たちもそうだけど、」それを見守る大人たちも素敵すぎる。
元がいいのか訳がいいのか、名前が横文字なのにキャラクターがすんなり頭になじむ。初めてかもしれません、登場人物がしばらくぶりに出てきたのに「誰だっけ?」と前のページをめくらなかった本は(笑)
じんわりしてほろりとして、くすっと笑って、本当にステキなお話でした。
子供のころに読みたかったなー。
でも大人になってから読めたのも幸せかも。
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飛ぶ教室に引き続き、新訳版を読んでみた。
旧訳版読んだのがもう10年前だからあまり覚えてないけど読みやすくなってた印象。
見えない車輪に押しつぶされてゆく主人公の姿が痛ましい。