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文学全集を立ちあげる みんなのレビュー
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紙の本
知的好奇心が刺激された、という点では近年のベスト。この鼎談には大森・豊崎・島田チームも粉砕。斎藤美奈子も遠く及びませんねえ。脱帽
2006/11/11 22:51
20人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず造本がいいです。軽装本が軽薄に繋がらないお手本のようなもので、しかもカバーが抜群。まず色ですね。この環境に優しい!っていアイボリーが文句無し。で、これに触れた時の充実感。マットでざらざらっとしているのが、ともかく生きている、っていう感じを抱かせます。
しかも、そこには世界の文学から発想された様々のイラスト。描くのは巨匠、っていうのは変ですが、でもこの世界では有名な和田誠、装丁全体も和田の担当だそうです。で、さらに効いているのが、表紙の中央にある白抜き(実際にはアイボリー抜き)の部分、ここに線で枠どりされた書名・著者名が並ぶんですが、その線の柔らかいこと。それが背にも継承されて・・・
でも驚くべきは内容なんですね。つい先日、大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り!リターンズ』を読んで、それなりに楽しみはしましたが、唸るということはありませんでした。あそこに出てきた作家の作品で読みたくなったのは、絲山秋子ただひとりだし、あとは殆ど読んだし・・・
でも、こちらは違います。避けて通ってきた古典、いわゆるその筋の方が名作と決め付け、読まない人間は愚か者、読んでなくても試験に書名が出てくるという、思い出すだけでもムカツク作品群。ただし、丸谷・鹿島・三浦のお三方は、単に権威ぶるといった愚は犯しません。
大森・豊崎のように偽悪ぶるわけでも、シモネタにはしるでもなく、常識的な傑作、古典をバサバサと斬っていきます。勿論、いいものは、いい。で、その語り口がというか、斬り方が、大胆というだけではなく論理的、かつ上品。しかも、ユーモラス。情実だって露骨に見せてしまいながら、文壇の姿、常識の愚が朧げに見えてくる姿は、もう絶品としか言いようがありません。なんていうか、『メッタ斬り「文学賞メッタ斬り!リターンズ」』ていう感じで、学識・人格的にも太刀打ちできないっていうか・・・
それを高尚、なんて遠ざけるのは大間違い。ともかく面白い。
目次を写せば
世界文学全集篇
どんな全集を作るのか
イギリス小説のうまさ
フランス作家の盛衰
ロシア、ドイツ文学と日本
アメリカその他
周縁の文学
世界文学全集巻立て一覧
日本文学全集篇
この全集のいくつかの原則
古代から近世
江戸文学の豊穣
二十世紀文学の幕開け
白樺派、プロレタリア文学の問題
戦後の文学を見直す視点
日本文学全集巻立て一覧
となっとていて、「世界文学全集篇」は、「文藝春秋」2005年11月臨時増刊「決定版・世界文学全集を編集する」を加筆再構成したもの、「日本文学全集篇」は、語りおろしなんだそうです。ちょっと司会役の人間の誘導振りが、なんていうか出版社の思惑を感じさせてウザイ部分はありますが、先生たちの態度も、柔軟で、オトナを感じさせるんです。
ま、私が読みたいな、と思ったのは世界文学全集篇に出てくる作品が殆どで、日本文学はパスしますが、読んで面白いのは後半の日本文学全集篇であることは間違いありません。とくに、近代文学へんなんかは、完全に純文学メッタ斬り!状態。しかも、地元の贔屓が(笑)の注つきで連発。
基本的には、全集は、作品集というよりは、まず作家毎に巻を編むことなので、人間臭さが溢れます。ほう、こんな作家は選に漏れるか、とか、やっぱり、あの作家は名前だけの存在だったかとか。サルトルも駄目なら、サン・テグジュペリ(「星の王子さま」)が、ただの童話作家とされたあたり、さすがだなあ、と納得します。個人的に読みたいのは、先日も『高慢と偏見』があまりにも面白かったオースティンでしょう。
ちなみに、この本を読み終えた長女は、実に楽しく読んだそうで、特に三人の話や見解が微妙にずれている様が楽しかったようです。知的刺激、というのはこういう本でなければ得ることが出来ないのでしょうね。
紙の本
世界文学と日本文学をめぐる読み巧者の放談
2008/05/17 22:13
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、という3人の読み巧者による、文学をめぐる自由奔放な鼎談である。そこでは「文学全集を立ち上げる」という前提に即して、作家や作品がふるいにかけられ、リストアップされるにしても、2人で1巻か、1人1巻か、といった、シビアな線引きがされていく。そのための必要悪として求められるのが、「好み」にさえみてしまう、あまたある「文学」の裁断であることは言を俟たない。鴎外なら、鴎外がとりあげられる。しかし、その全ての作品を入れることはできない。そうした局面で、丸谷才一が、当時も現在も(石川淳のような特例を除き)あまり評判の芳しくない史伝(どれもひたすら長い!)を3本も入れようという。あるいは、永井荷風では、「墨東奇譚」が外され、「断腸亭日乗」という日記が、いわゆる抄録ではなく、何か事件のあった時期を集中的に採録することになる。いわば、スタンダードな文学観や、文学(作家・作品)のセレクトの仕方としては、いささか乱暴にみえるのだが、ここではそれを「放談」と呼ぶことで、むしろ自身の教養と好みと価値判断を賭した、真剣勝負の「高等遊戯」と見なしてみたい。しかも、本書では、それぞれクセのある3人の読み巧者が、その真剣勝負を延々と続けていく、その様は、実にスリリングで、こと、読み手に一定の文学的教養がある場合、その面白さは自身の好みと照らすことで一層の深みを増す。週末の昼下がり、それまで読んできた文学に思いをめぐらせながら、容赦なき「高等遊戯」に参戦するのも、悪くない時間の使い方だろう。
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