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みんなのレビュー26件

みんなの評価4.3

評価内訳

26 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

光と陰りの背中を見送る

2010/05/16 11:33

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ユー・リーダーズ・アット・ホーム! - この投稿者のレビュー一覧を見る

回顧の文章なので、須賀敦子さんの基本的な姿勢はまず、後ろを振り返るというところにあって、しかもそれは肩越しに見やるといった感じではなく、立ち止まって、しっかりと後方に正対するような感じです。その眼差しの向こうに見るのは、人生の中の若く大事な(ご本人は「晩い青春」といったりする)時間を過ごした遠いイタリアという国で出逢った人たちの後ろ姿であって、どちらから去っていったかにかかわらず、日本に帰国した須賀敦子さんがイタリアの暮らしから時間を隔てて、その遠い日のことを書かれているので、自然、時間の流れとともに、後日談を含め、ほとんどの人たちの背中を眺めることになったといえるように思います。

流れ着いたというのではないにしても、当初の目的地とは違うイタリアで、異邦人という自覚や新しいものを吸収しようとする透明度の高い眼差しは、バイアスを遠ざけ、だけど周りの人たちそれぞれの立場の価値観を確かに受け止めながら、社会にある種の揺らぎがあった時代、その景色の中にいた人たちを近く、遠く、親近感と同調しきれない部分とを同時に抱えつつ、圧倒的な共感を傾けて、触れるところは全て真摯に見つめていた、そんな感じです。

過去は、それ自体が具体的にも抽象的にも現在の自分の手元で大切な宝物となる一方で、必ずなにかを置き去りにしてきていることの象徴のようなもの。記憶はところどころで薄らいだり、混乱したり、鮮やかさを失ったりするけれど、その向こうにかすんだものを思い返せば、全てを箱に詰めてここまで持ってこられたわけはなく、その通り、確実に置き去りにしてきたものを突きつけられて、どうにもならない懐かしさに沈む。須賀敦子さんの記憶は、ほとんどいつも驚くほど明晰ですが、いくらか自分に重ねてみて、そんなことを思わされます。

少し厚めのこの文庫は、詰め込まれたように文章がつづられ、平明達意な筆致にすいすいと読み進められますが、雪崩れるような過去の場面と思いに溢れています。うっかりすると、登場する人たちがすべて若者のように錯覚することさえあるけれど、実際はもう少し年上であったりして、そのことに気づくと、はっとさせられもします。作者が長い時間を過ごしながら眺めていた経過があるから、知己の人たちのその後を知らされて、人の人生は一様ではないという印象も強い。

こんなにも人の背中を見つめた人なのに、意図的ではないとしても、恐らくほとんど巧妙といえるくらい、須賀敦子さんはご自身の背中を見せられてはいない気がします。それは決して須賀さん自身のことが描かれていないというのではなくて、要するに、その文章が描写であって、吐露ではないということ。そこに描かれているのは須賀敦子さんの目に映ったすべてであって、矢印はご自身に向けられていない。だから、あらゆる物事が須賀敦子さんというフィルターを通して、その時々の心情とともに、どこかしんとした鮮やかさで伝えられる。

その眼差しに身を置くように読みすすめていると、だけど、須賀さんの背中は見えないとしても、その視線が単に物事を見つめているのではないことにぼんやりと気づかされるようです。なにかを見ているその向こうにはいつも、イタリアで暮らしていたころに喪くした旦那さん、ペッピーノさんがいる。その視点はぶれることなく、紙の上で、懐かしい日のことに近況を交えながら語らっているようです。

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紙の本

熟成という時間の魔法。

2011/06/23 18:47

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

すこしご無沙汰していた須賀敦子の全集だが、読んでいくうちに、
あの透明な感じ、硬質な感じ、それでいてちょっと温かいような感じ。
そういった独特の雰囲気のなかに、じわじわと惹き込まれていった。
1巻にはデビュー作「ミラノ霧の風景」、「コルシア書店の仲間たち」、
「旅のあいまに」がおさめられている。

「ミラノ霧の風景」には、著者のミラノでの記憶の断片たちが綴られている。
時系列もばらばらで、話の広がり方も予想のつかないほうへ行く時がある。
にも関わらず、モチーフであるミラノは、それぞれの章で輝いている。
いっけん、この話からなぜそこへ・・・と思うような場合でも
話が結ばれる最後の数行ではっとさせられる。
語られることに無駄などなく、熟考して練られている上質なにおいに気がつく。
エッセイなのに、短編小説みたい構成された濃密な世界があるのだ。

「コルシア書店の仲間たち」は、時代の波の中で新思想をめざし、
新共同体をつくる実験をしていった若い日々の思い出である。
「ミラノ霧の風景」に出てくる、ミラノにいたときの著者ももちろん若いのだが
「コルシア書店の仲間たち」は、その新しい何かをみんなで目指すというところが
若いというありきたりな言葉にぴったりくる気がするのだ。
しかも、ここが本当におどろくべきところなのだが
そんな若い激しい日々が、(政治と宗教というむずかしいテーマが絡んだ日々が)
思い込みの正義感とか甘ったるい感傷をまったく抜きにして語られる。
どれだけのエネルギーを消費したかわからないくらいのまっすぐな日々。
そのおなじ空気を吸っていた仲間たちの当時とその後を淡々と描く。
著者はイタリアの思い出を書くのにあたって
客観的な目線に徹することを心掛けたのだという。
だから書き出すまでには、時間がかかった。
20年という熟成期間を経て、鮮やかに蘇った著者のイタリアの日々。
時間の魔法がすばらしい効果をあげていて、
抑制がきいた静かな筆致の、味わい深さを出している。
噛みしめるごとに旨味があふれる、シンプルなパンのような。
ここでは本当に淡々と書かれているのだけれど、
ミラノに来てコルシア書店の重要なメンバーであるペッピーノに出会い、
両親の反対を押し切って結婚してしまった須賀敦子というひとは
なんて情熱的なひとだったのだろう。
著者はイタリアに仕事も持ち家庭も持ち、しっかりと根付いていた。
といっても華やかではなく、質素な誠実な海外生活だった。
お金はなかったが、夢だけは無限にひろがっていたし、
なにものにも縛られない自由があった。
もちろんイタリア語を日々磨き、使いこなしていたからこそである。
須賀敦子が日本の有名な文芸作品をいくつも伊訳していたことは
あんがい知られていないことなのではないか。
そうやって磨きあげたイタリア語を、その国の芸術や文化について
その国の人と議論を戦わせるくらいに、雄弁にあやつっていた。
そんな著者だったが、いわゆるセレブ層に対する目線は冷めていた。
富や名声をいちばん大切にする考え方には、
本能的に反発してしまうようなところがあった。
著者は常に、なにを持っているかではなく、なにをやったかで
人を冷静に判断する明晰さを持っていた。
そこが、少女らしいといったらへんかもしれないが
情熱的な国際結婚へつながるまっすぐさ、純真さなのだと思う。

「旅のあいまに」は、過ぎ去ってみればわすかひとときの、
でもその当時は濃密な時間を過ごした、人たちの記憶。
著者にとっては、通りすがりの人々なのだが、
その一瞬の印象がなぜだか心をとらえていて、ふと思い出す。
記憶をたどりながら隠されていた真実に気づいたり
当時とは違う感想にいき着いたり、といった回想録だ。
この中に、
人生には、どうしても譲れない大切なものが少しと
どちらでもかまわないたいしたことないものがたくさんあり、
それをひとつずつ理性で見極め、選んでいく、
というような文章を見つけた。
心に刻んでおきたいような文章がほかにもいくつかある。

3巻、4巻と読み進めてきた3冊目の須賀敦子全集。
ブランクが空いてしまったが、これからもじっくりと
読んでいきたいと思った。

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2007/12/11 14:16

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2010/01/13 15:57

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