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紙の本
多数派がささえるファシズム
2008/05/28 01:30
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学者・久野収を弟子を自認する佐高が師の姿をえがく。
戦前から軍国主義と徹底してたたかいながら、共産党のような独善的な正義におちいらず、形式的な闘争方法におちいることも拒否し、自らの弱さを直視し、大衆文化のなかに新たなヒントを探しもとめた。
だから自分の思想すらも疑い、敵の思想のなかに敵をうち破る契機を見いだそうとする。左翼が「ナショナリスト」と唾棄する北一輝のなかに、下からの革命的な思想の萌芽をかんじとり、北を一定程度評価したうえで「ファシズムによってからめとられてしまった」と説く。
官僚批判も、佐橋滋といった異色な官僚を評価することで説得力をもたせる。外からの言いっぱなしの批判ではない。
「ファシズム=人民は苦しんでいる」というステレオタイプを批判するのも印象的だ。軍備に力をいれるなかで、逆に経済的に豊かになる面もでてくる。実際に「独裁政権」の国をおとずれたら、けっこう裕福だったりする。
ファシズムの権力者は、民衆をうまくあやつりながら批判的な人たちを孤立させ、そこを徹底的に弾圧することで政権を持続させる。それでもごまかせないようになると、戦争に流れこむ。
戦前の日本、いや、今の日本にも似ている部分があるのではないか。
「ファシズム=苦しい人民」というステレオタイプの危うさは、南米の準軍事政権の国をおとずれたときに実感した。「飯もうまいし、ディスコも楽しいし、女の子もかわいいし、けっこういいところじゃん」と、のめりこむ日本人旅行者は多かった。
ファシズムの国でも「多数派」はそれなりの生活をおくっている。少数派を切り捨て、のこった多数派のなかから少数派をつくりだして切り捨て、さらにのこった多数派のなかからまた少数派をつくって切り捨て……気がついてみたら自分が少数派だった、という構図こそがファシズムのこわさなのだろう。
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