投稿元:
レビューを見る
うーん、この作品はイマイチ分かりずらかった。
いいテーマは扱っているものの
場面が頻繁に変わりすぎて、
ストーリーを追いずらかったし、
余韻に浸る間がなかった。
「日の名残り」とけっこう似てるが
「日の名残り」のほうが完成形だと思う。
投稿元:
レビューを見る
時代の変化によって自分自身の尊厳への在り方を見つめる物語。
「日の名残り」を想像させる老人の回想録。
カズオ・イシグロ作品は好きです。
人物達の緻密な言葉回しと心模様を、豊かな言葉選びで主人公である画家・小野の人生に静かな彩りを加える。
この物語は終戦間近から戦後の、激変な時代の変化の中で生き抜いた小野の人生とその後を描いている。
自分自身は過った道に進んだことを認め生きている。
しかし、周りからは認めるだけではなく…それ以上の謝罪や罪悪感をただ静かに押し付けられる。
そして追い立てられるような小野の心模様。
しかしこれらは、小野自身が感じている負い目からきている錯覚…だったのかもしれない。
人は追い詰められ、自分自身を責められると苦境な幻覚にさい悩まれる。
画家である小野は、人間が誰が持つ心理的なものに長い間憑かれていたのかもしれない。
そういう細部な心模様を豊かな言葉で並べる著者と訳者は素晴らしいとしか言えない。
カズオ・イシグロ作品を読んだあとに感じる心地好い溜め息を、またこの本を読んで感じました。
若き小野のかつての師匠・モリさんの言葉、
「画家がなんとか捉えることのできる最も微妙で、最も繊細な美は、夕闇が訪れたあとのああいう妓楼のなかに漂っている。」
画家という美を扱う職業を少しだけ理解出来た美しい文章です。
投稿元:
レビューを見る
イギリス文学。日本人とはいえ、5歳からイギリスに暮らしてそのまま定住してる作家さんだからなのか・・・・戦後の日本が舞台なのに日本を描いてる気がしない。翻訳者もそうとう苦労したみだいだけど、やっぱり会話の言い回しが外国風。
投稿元:
レビューを見る
この作家は、美味しいけど小骨が喉に引っかかっちゃう焼魚のような本を書く。あまりクリアでなく、行きつ戻りつする主人公の思考。主題ー戦争に私は加担したのか?という不安が見えるまで時間がかかるけど、日記を読まされているようなリアルさが、胃の辺りにじわじわたまって余韻を残す。
投稿元:
レビューを見る
来日と映画公開に合わせて、一時期どこの書店でも平積みされていた作品の1つです。日本画家として名を馳せた主人公が過去を振り返りつつ過ごした数年間の物語。何回か読み返したんですが、なかなか感想にまとめられるような解釈ができてません。
以前戦争画を見た時、画家にこんな絵を書かせてはいけない、と悔しくなったことがあります。戦争画家としての過去を、主人公は、家族は、周囲は、どう受け止めていたんでしょう。触れてはいけないような、けどいっそはっきりさせてしまいたいような、この氷の刺が心臓を突き刺すような感覚をどう表していいのか。元々罪悪感や後ろめたさみたいなものを主人公はもっていたんでしょうか。周囲は暗に過去を指摘していたんでしょうか。分からない。けど実際に人間関係って分からないことばかりで、自分の主観なしに相手を見ることはできない。読んでいる間その孤独さが付きまといます。
投稿元:
レビューを見る
難しかった.
うまく感想がかけないが,自分は優秀だと思いつつも自戒の念も持っている微妙な心情が伝わってきた.
後半で,娘と話が噛み合わなくなったのは何故なのか,よくわからない.
投稿元:
レビューを見る
大きな出来事があるわけでもなく、淡々と日常が綴られているように見せながら、その中にやるせなさやもどかしさやどうしようもない想いのようなものをにじませるカズオイシグロの筆致のせいで、一気に読める作品だった。
大戦前後の時代は今では想像もできないくらいの急激な変化で、そこについていけるかどうかは死活問題だったのだろう。
過去の栄光や信念を後悔することはなくても、それを隠さなければならない父親の心情、年老いてもまだ自分と闘わなくてはならない葛藤を、ここまでうまく描けるのはすごいと思った。
投稿元:
レビューを見る
<戦中、愛国的作品で名声を得た画家。その戦後、後年の回想期。>
だんだん本棚に揃ってまいりました。カズオイシグロ本。
同じ著者の本(=つまり同じ背表紙)が棚に何冊も並んでいると、わけもなく満足感が沸いてきます。。
今回のは彼の長編2作目の作品。
1作目(「遠い山なみの光」)~3作目(「日の名残り」)はどれも同じような流れとなっていて、
主人公の一人称で綴られていく過去の回想は、淡々としながらも、現在の自己の正当化に向けられている。
私達も何か間違いを犯したとき、しばらくは「何であんなことを・・・」と考えながらも、
時間が経つにつれ整理がつき、「あの時こうしたから、このように言われたから、あんなことをしてしまった」
というように考え始める。
そしてそれは少しの事実の捻じ曲げも含まれている部分があるということ。
それこそが立ち直ること、これからも人生を歩む上で必要なことなのかもしれません。
一人称の不確かな事実の中で、それを繊細と表現し、現在の自己の正当化に向かうイシグロワールド。
ちなみにこの本もブッカー賞候補だったそうで、惜しくも一票差で破れたそうな。
投稿元:
レビューを見る
日の名残りの日本版。浮世(floting world)とは、ほんとうに、昔の人は素敵な言葉を考えるなあとおもう。時代や社会、状況が変わると全く世界が逆転してしまう。正しいと思い、皆から支持されていた価値観が、一日にして古びて嫌悪されるものになってしまった中、どう生きるか、どういう態度を取るのか。一人称が主人公なので、その自己弁護と正当な主張を聞いているとなんだか同情せざるを得ないけれど、違う人物から見たらまた違う生き方に見えるのだろう。可哀想で、かなしい。
それにしても翻訳小説とは思えないほどリアリティのある日本の姿。日系であることは勿論関係していると思うけれど、日本の第二次世界大戦をめぐるその前後の歴史というのは、捉えにくいものな気がするのに、的確かつ客観的。すごくしっくりくる。けれど、しっくりきすぎて、逆に日本人にとってはしんどいのかもね。
投稿元:
レビューを見る
英語に詳しいわけでも原文と照らし合わせたわけでもないけど、翻訳が上手いなと思った。
噛み合わない言い訳が時に怖い、イシグロ。
ぼんやり浮かび上がる。
いろいろ興味深い内容だった。
投稿元:
レビューを見る
飛田茂雄訳。イシグロの2作目にあたる作品でウィットブレッド賞受賞作。 戦後まもない日本が舞台の作品で、戦争を挟んで時代の流れとともに価値観が変わっていく世の中を主人公である元画家の小野が現実とを重ね合わしながら過去を回想する物語。 主人公に対しては家族に対する思いやりという点においては読みとることが出来たのが救いであるが、『日の名残り』の主人公のような人間としての矜持は感じなかったがそれは舞台が日本であるからかもしれないし、確固たる意志のある言葉で綴ってなく曖昧さが漂っているのも要因だろう。
それは作者の意図したものであろうが。 周りの人々の言動により主人公の人となりが多少なりともくっきりと浮かび上がっている感じですが、それは戦争に翻弄されつつ過去の矜持にしがみついているようでそうでない人間の弱さが滲み出ているのであろう。生きることの辛さを諭した作品であろうが評価がしづらい作品であることにも間違いない。
戦争と言う人に急激な変化をもたらす世界においては、今まで正しいと思っていたことが急に悪く嫌悪される評価になります。 その人の力ではどうしようもない世界の変化(戦争)の前に、主人公がとった師匠であるモリさんから離れてしまったこと(作風の変化)をいつまでも引きずっているように感じられました。 娘・紀子の縁談に関して心配しているところなどその典型例ですよね。外国人読者の感想を聞きたい作品です(笑)
投稿元:
レビューを見る
歴史と人。上昇と崩壊。人の心の移ろいやすさ、狭量さ、思い込みの強さ、弱さ。人生とは。娘への愛情。物語りはかくも多層なのか。単純化は難しい。自分に引き寄せて読んでしまった著者の力量に感謝する。
投稿元:
レビューを見る
原書で読んだため、英語力が低いので世界観をしっかり理解出来ずに読みおえてしまった。英語力が伸びたらまた読もう。
投稿元:
レビューを見る
戦争画家として生きてきた老画家の戦後の苦悩。イシグロ氏の小説を読むのはまだ3作目だが、どの作品にも共通しているのは一人称・回顧・再生であり、作品にのめりこみ、浸り入り、主人公に肩入れし、なんでか静かに感動し、癒される。
投稿元:
レビューを見る
2013.4.27読了。
すぐに答えや感想なんてものは出せない、軸も持たない小物にはでかすぎてもう一回読まないと。