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真鶴がどこにあるのかもよくわからないままに読み始めました。
ラブストーリーになるのかな?と思ってたら、そんな枠にはおさまらない話。
人の存在や関係性の話。
誰かを好きになるということ、誰か知るということ、理解するということ。
(それが家族であれ、恋人であれ)
知れば知るほど、好きになればなるほど遠ざかっていく...
だから人は孤独なのだろうか?
でも、それは寂しいことではなく、新しい希望なのかもしれない。
このところの川上作品はいい話だけど落ち着いちゃった感じでしたが、
この久しぶりの長編、独特な川上節全開でどっぷり浸からせていただきました。
詩のような表現でありながら、リアルでぐっさりくる感情、感傷。
まだ2ヶ月ありますが、今年のナンバーワン!
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私の中で彼女のことをどう捉えていいのかわからなくなっている。
初期の頃の作品は、どんな内容を書いても、彼女の作品として一つの箱の中に仕舞えたが、最近の作品を読むと、彼女がどちらを向きたいのかがわかりずらい。
と言うより、私が勝手に枠にはめ込んだのがいけなかったのか・・そんな私のような読者に、自分の可能性みたいなもの・・表現したいのか・・
娘が3歳のころに夫が突然、失踪した・・なんの前触れも書置きもなく・・・
それから15年近い月日が流れていく中、主人公の女性は、他の男性を恋ながらも、自分の目の前から忽然といなくなった夫との関係を受け入れられないでいる。
主人公は自分以外の影のような存在の女と向き合いながら、自分を構築しようとしている。
それが夢なのか・・それとも現なのか・・・・・
夫が失踪した後、夫とそっくりの娘と、母との女3人暮らしが始まる。
時間の経過の中、老いる母・・成長をする娘・・
娘が小さい頃、この子の存在は永遠の愛の証だと思い、私の胸元から飛び立つ日など来ないかのような錯覚に陥っていた。
娘に父親の面影を見つけ、それが嬉しい時と、憎らしい時があるのを知ったり・・ある日突然、誰にも似てないことに驚き、娘を個人として見なくちゃならないことに気がつく・・娘はもう親の持ち物ではない・・愛しているけど、一人の人間として見なければならない・・一生、娘に変わりないのだけど、1人の人間として独立させなくてはならないと気がつく・・・
そして自分も親に対してそうであったのだろうと気づく・・・
主人公は、娘の若さゆえのとがった言葉にえぐられ傷つく。
ああ・・私もそうだ・・・私も時折、上の娘の言葉に傷つく・・何故、自分の娘に心をえぐられなくてはならないのか・・・
神が与えた試練のように思って乗り切る。上の娘は、私が傷ついていることを知っているのだろうか・・・
私が居なくては何も出来なかった幼い頃があったことを上の娘は覚えてなどいないのだろうか・・・
小さかった姿が、大人の姿になっただけで、母は傷つく・・そんな当たり前のことで・・・
だけど、そうは言っていられないこともわかっている・・だから傷つく・・
そして現実的に、愛のアカシ・・などという言葉があてはまらなくなっているとわかる。
人は成長とともに姿を変える・・立場も変わる・・・子どもは愛を繋ぐ道具などでは決してない。
愛を一杯注がれて生まれ、愛を注がれて1人の人間として、成長していく。
ある日、寿命と言う名の別れが来ても生きていけるように・・
文中に”人に触れることはむずかしい”とあった。
本当にそうだと思う。
私は人に触れるのが苦手だ・・それは額面通りの言葉の意味だけでなく、もっと精神的な部分でだけど・・
ちょっとずつ近づいて、触れたと思っていたのに、交わされるのが怖いから、私は苦手だ。
それは”ココロヲユルス”��てのにも似ているかもしれない。
近づいたと思ったら、たった一言で、今までの距離の倍ほど離れてしまったりすることがある。
それが怖いから・・苦手って思ってしまうのかもしれない。
私が触らせないから、人にも触れないのだと言うのも、半世紀近く生きているからよく知っている。
”人に触れることはむずかしい”のだ。
人の事をわかっているつもりになどなるのは驕りなのだと知っていると、文中の言葉が刺さる。
だからせめて血を分けた娘にだけでも鷹揚でいたいと思っても、尖り始めた顎の線が妙に大人びて見えたりして傷つく。
あのふわふわとしたほっぺや丸かった尻を、いくらでも撫ぜられた頃が懐かしい・・
あんなにいっぱいいっぱい抱っこしたりおんぶしたりしていたのに、もっともっとしていたら良かった・・とか今は思ったりして(笑)
本書は、失踪した夫と主人公を軸に書いた話なはずなのに、私は妙に、主人公と娘との関わりに反応してしまった・・
たぶん、丁度、私が親離れしていく娘を持つ母の年頃だからだろう。
多趣味で、自分勝手な私は絶対に抜け殻症候群になどならないと言い切れる自信があったが、日に日に大人になっていく21歳と16歳の娘を見守るのは、やはり寂しいに違いはないな・・・
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人との距離がいつまでもつかめない題材が川上弘美はうまい。これまでの作品に比べて少し異色を放っている。場所に囚われる、人に囚われる、それをいつまでも肯定してくれる何かがほしいのだ。
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読んでいて、ずっと不安定な気がした。
並んでいる言葉もとぎれ、とぎれ…。
とらわれていたことが無くなって、何も残っていなくても、最後は少し、晴れた気がした。
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義姉が真鶴の出身なので読んだ。それがきっかけ。たんたんとした筆致ながら、それら乾いた短い文章を貼り絵のように重ねあわせていくと、人間の心の模様をうまく表現できるのかもしれない。そして、なぜ真鶴なのか。湯河原でも、小田原でも、熱海でも、いいのかあ、なんて思わないほうがいいんでしょうね。
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最近の作品で見られた恋愛感と、初期の曖昧な独特の存在に対する感覚が上手く融合されたような。ここしばらくの作品は正直、あまり好みではなかったので、今回のでようやく「あぁ、川上さんの作品だな」という安心に似たものを感じました。
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助詞「と」がないだけで、なぜこんなに突き放されたような印象を受けるのだろう。
温度の低い、寒々とした文章だったように感じる。
ついてきたのは何だったのか?
京を導いてくれるもの? 陥れるもの? 京自身? 礼?
どの瞬間に京は礼から解放されたのか?
京が青茲の求めたものはなに?
なんだか判然としない話だった。
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怖い。生臭くて、清涼で、確かに生きるというのはこんなことなんだろうなと読みながら思った。こんな重い人生を送ってきた訳ではないけれど。
登場する生き物の選び方に実感があって怖い。ナナフシを折るなんて本当に怖い。あの姿で生き物だというのがすでに怖いのに、それを折ってしまうのは怖い。ついてくる女より怖い。
鷺の姿もきちんとしている。あれは小鷺だ。正確に描かれている。きっと観察することが好きなんだろう。方々に観察した証拠のように正確な表現がある。椿の花のぽとりと落ちる姿も判る。正確だ。
だからこの物語は絵空事に見えないんだろう。女が憑いて来たり、死者の目を持ってみたりするのもそのままに受け入れられる。そして生臭かったり、清涼だったりするのだ。
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そこはかとない恐ろしさと、静かで美しい描写が気に入りました。そしてなんと言ってもこの本の装丁の美しさが好きです。
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みだれてる。京のこころの混乱をうつしだすように。真鶴でみたものは幻覚だったのか、「ついてくるもの」はなぜ彼女をそこへ導きあれをみせたのか。わかんない。ちょっとこわくてしとっり官能的で幻想的。なのにことばに魅せられる。
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距離を感じさせる文章と、やわらかい日本語があわあわとした感じでした。
誰にもぶつけることのない感情が、ぼんやりと漂っていてとても官能的です。
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川上弘美さんの小説はこれで4冊目。「これってなに?どういうこと?」って思いで最後まで読みました。読み終わっても、なんだかすっきりしない、夢の中を漂っているような感じ。とても短い文章が多いけれど、でも想像をかきたてられる表現が心に残りました。(H19.3.27)
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http://patrashe.jp/anbai/archives/2007/01/post_394.html
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「いつからわたしは、にじまなくなったのだろう。」
独特な文体や現実と幻想的な場面が入り交じり錯綜するところは著者ならではなのだが、どうも今までの川上弘美とちょっと違うみたい。今までになく、主人公の情念がね〜っとり感じられる。しかしこれが私の好みでなく、幻想?シーンは読んでいて度々眠くなった。
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失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、
「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ
向かう京。夫は「真鶴」にいるのか?