紙の本
西加奈子という作者に見事にやられたと思ってしまう一冊です。
2006/11/24 21:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜかホモの中年男性に好かれ壊れた時計に囲まれた部屋で夢もなく深く関わり合う人もおらず家の近くの工場で働く男と、二年間同棲していた恋人のマメが留学するために去っていったことで夜の寂しさを紛らわすためと、恋人を自分にひきつけるためにスナックのチーフとして働き始めた女。
物語の中盤まではちょっと偏屈な男と閉鎖的な女の日常生活に読んでいてこちらまでトホホとした気分になってしまいます。トホホとした気分なのに何故だか妙に可笑しい。
二人の独り言や心の中の言葉に「あぁ分かる」と思わず笑いがこ込みあげてくるのです。
そしてラストに起きる珍事件は笑いが止まらない、笑えるのにジーンとくる、ジーンとくるのに脱力するくらい笑える、西加奈子という作者に見事にやられたと思ってしまうのです。
この物語を天気に例えるとしたら最初はどんよりとした曇り空、次第に雨がポツポツと降り始め雨脚が一気に激しくなり土砂降りに、雷が鳴ったと思ったら突然青空が戻ってきて最後はキラキラと輝く虹までかかっているという具合。
虹と同じく一時のものであり、決して永遠に続くハッピーエンドではないけれど何となく「明日も虹が出るかもしれない」と思わせてくれる一冊でした。
ラストのページがきたときはこの二人の物語が終わってしまうのがすごく残念な気持ちになった一冊でした。
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同時進行で進む主人公二人の話。二人の繋がりに関しては、伏線をよく読んでれば直ぐに気が付きます。通天閣ってお洒落な感じは受けないんだけど。人情味溢れていい感じですね。その特徴がよく生かされた作品に思います。
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夢を失いつつ町工場で働く中年男と、恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女…。なんかよくわかんないけど、読後はちょっと勇気をもらったような気がする。
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どうしようもない人々が醸し出す、得体の知れないエネルギーが溢れている大阪ミナミ。社会の底辺でうごめく人々の愚かなる振る舞いや、おかしな言動が町を彩っている。主人公は、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。八方ふさがりに見える二人は、周りの喧噪をよそに、さらに追い込まれていく。ところが、冬のある夜、通天閣を舞台に起こった大騒動が二人の運命を変えることに…。
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奥野木さんの。
やっぱおもしろかったなー
中年のおっちゃんの
屈折感がたまんなかった。
マメ。マメ。
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帯の文句から、もっとどろどろした夜の世界の話を想像していたのですが、全然そんなことはなくて。色んな、ちょっと普通じゃない人が出てきて、汗臭い印象はあるんですけど、でもすごく健全で。人間たちを、その関係を、大切にしている人の文章だと思いました。間に入る夢のシーンが絶妙で、自分が見たような気になります。上手!
ちょっと泣けて、くすくす笑えるお話。
構成が前作「きいろいゾウ」と似ているのですが、わたしの好みとしては前作のほうが好きです。でもいい!(2007.2.11)
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悲観妄想過多の自分には、ヒリヒリと来る描写多し。
「私が泣いていることなんて、誰も知らない。皆自分のことに夢中で、夢中になっていることは本当につまらないことで、そしてまた明日を待っている。ずっとずうっと同じ明日がくるのに、目が覚めれば違う何かが待っているような、そんなわくわくとした気持ちで日々暮らしている、なんて阿呆な人たちだ」とか「夢に向かって頑張っていないと駄目なのか、何かを作っていないと駄目なのか。自転車でバイト先に向かい、阿呆の相手をして、マメのことだけを思って眠る生活をしている私は、駄目なのか。「きらきらと輝いて」いないのか」とか。
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2007.4.7読了。人と接点を持ちたくない中年男。恋人に去られそうになっている若い娘。通天閣の近くに住んでいるというだけの二人の日常が交互に語られる。ニアミスのままで終わり、それぞれの思いを抱えたままちょっと前に進もうかなぁってところで終わる。スナックのメンバーはかなり飛んでてイケてた。
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九州に住んでいる私にとってはなじみのない「通天閣」
何かで見たことはあってもそれが大阪の人たちにとってどういうものかも分からないし、大事なものかそうでもないかすら。
二つの話が交互に続き、それぞれの日常の中で徐々にリンクする。
お互い交わることはないが、通天閣で起きる事件によってお互いに人生が変わる。
作者の物語の組み立て方に拍手。
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西加奈子好きとして新刊を抑えねばということで読み始めましたが、私は必ず前半2/3ぐらいまで読みづらくて仕方がないです。時間がかかるし。でもその分後半のかっちり感が好きで西加奈子を読み続けています。この作品は、ほほぅとまたかっちり感を満喫はしましたが、そうだなー思ったよりはハマりませんでした。関西の方なら見知った名前ががんがん出てくるから楽しいのかも。
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夢を失いつつ町工場で働く中年男と、恋人に見捨てられそうになりながら
スナックで働く若い女。ふたりは周りの喧騒をよそに、さらに追い込まれて
いく。しかし、通天閣を舞台に起こった大騒動がふたりの運命を変えること
に…。
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きいろいゾウがすごく良かったので期待して読んだのだけど。
伝えたいことを、わざわざ登場人物に説明させてしまうところや、最初からどうも鼻についてしまう・・・
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『きいろいゾウ』や『さくら』を読んで西加奈子さんのファンに♪
けど、この話しはちょっと今までの西さんの本とは違ったかな。大阪の味だしてますっ!っていうのは伝わるけど、大阪人ではない私にとってはちょっとしんどかった。
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すごくおすすめ。
「おまえのことが、好きやぁあああ!!」って、もう、ホント、泣いた。
男が男に言う台詞なんだけどね、すごく好きだ。
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あぁ・・・そうなるのか!
と、なんかスッキリ感があった。(笑)
通天閣・・・
しばらく通天閣を見ながら通勤していたので、
読んでるとだいたいの様子が
浮かんできた。
でも、決して幸せな光景ではないのよねぇ・・・。
「孤独」って言葉がほんとぴったりなような。
孤独はいやだよね・・・。
一人で生きることは不可能だし。
「一人でいい!」なんてのは
強がりだし、そんな決心はしなくていいんだと
私はそう思う。