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紙の本
美しい世界に生きる少女たちのリアリティ
2007/02/14 22:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトウジョン - この投稿者のレビュー一覧を見る
松岡女子高等学校に通う「ふみ」と「杉本先輩」、藤が谷女学院に通う「あきら」と「井汲」の4人の少女を中心とした物語。
舞台は古都鎌倉、そして主な登場人物のほとんどが女子高生ということで、美しくも浮世離れした箱庭の中のお話という印象をうけてしまう。
学校外の風景も確かに描かれているというのに、なぜか閉じた世界という雰囲気を感じてしまうのは、あまりにも一途な少女たちの姿ゆえかもしれない。
そして私がそんな彼女たちの姿を己に重ねてしまい、狭い世界に生きていた自分を思い出してしまうからなのかもしれない。
1巻では主にふみ、そしてあきらの目線で物語が進行したが、本巻では特に杉本のキャラクターが掘り下げられている。
それまでは単に「大人っぽくて格好いい先輩」という人物だった杉本の家庭での姿が描かれ、実際の彼女は年相応の、自分で自分をもてあましているような少女だということが語られる。
それは井汲についても同じこと。
ミステリアスな少女のようだった1巻での姿に比べると、2巻での井汲は仲間とはしゃぐこともするし、杉本に対してあまりにも率直に自分の感情を口にしてみせる。
杉本も井汲も、どちらも単に類型的な「大人っぽい先輩」でも「ミステリアスな同級生」でもない。
逆に1巻では周囲に流されがちだったふみが自らの意思で決断してみせる姿なども描かれていて、回を重ねるごとに少女たちの様々な側面が自然な形で登場する。
時に前向きだったり、後ろ向きだったり、優柔不断だったり・・・揺れる気持ちが丁寧に描かれれば描かれるほど、少女たちは読み手の中でリアリティをもって存在していく。
学校、友達、先輩後輩という小さな世界の中で、少女たちは一生懸命に生きている。小さくても美しい箱庭は、小さいからこそ高い純度で閉じていられる。
美しい世界の中の美しい少女たちの物語。
それがこんなに魅力的なのは、彼女たちの感情がたしかにリアルだからなのだと思う。もはや絶滅してしまったのかもしれない美しい少女たちの世界と、美しさを残しつつもリアリティをもった心理描写の両立が魅力的な作品である。
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