紙の本
放射線利用の豊富な事例をわかりやすく
2016/01/06 08:05
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても分かりやすい。全く前提知識が無くても読める。それにしてもこれだけ実際に放射線の産業利用がなされていることには素直に驚いたし、目を開かせてくれたことはありがたい。
こういう制御可能な技術環境下での有益な実例は無用な懸念を溶かしてくれるものである。
注意していただきたいのは福島原発事故以前の著作であり、伴う放射線被曝は触れられていない。
その点は別の方の著作を選んでほしい。素直に放射線利用の有効性と身の回りで生じている放射線量の変化を理解するものとして読んでほしい。
紙の本
放射線の利用に無意味に怯える前に読んでみよう
2007/01/22 22:48
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
放射線利用には大きな課題がある。それは人々が抱く負のイメージ。平和利用においてもチェルノブイリやスリーマイル島、そして東海村の事故があり、軍事利用では数十万の被害者を出した原爆の使用と相互確証破壊(MAD)という略称に相応しい狂った理論が大手を振ってまかり通っていた。
しかし、だから放射線は危険だから使用するべきではない、というのは合理的な立場とは言えないだろう。
本書は寺田寅彦の名言「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしい」を引き、正当に怖がるための知識を深めようと呼びかける。孫子曰く、彼を知り己を知れば百戦して危うからず、というやつだろうか。
読者の多くは、放射線が実に多様で生活に密着した使われ方をしている事実に驚かされるのではないか。
たとえば夏に欠かせない野菜、ゴーヤを食べることができるのは放射線を利用して害虫の根絶に成功したから(この話に興味がある方には『害虫殲滅工場』をお勧めしたい)。
病院にいけば診断にMRIやレントゲンを使うし、旅行先ではラドン温泉で体の芯から温まり、ゴミ焼却炉ではダイオキシン除去に一役買い、歴史学では年代測定の強い味方となる。そのほかにもタイヤや半導体の製造には欠かせない技術として確立され、食品に照射することでO-157などの有害細菌を殺菌しジャガイモの発芽を抑えることにも使われる。
多くの例を取り上げることで放射線を無意味に恐れる必要はないのだと納得させてくれる。利用方法が正しければ我々の生活を豊かにしてくれるすばらしい技術になりうる、ということだ。
利点もあれば欠点もある。チェルノブイリでも東海村でも残念なことに死者が出てしまった。その危険性については正しく認識する必要がある。そして危険性についてもきちんと評価をしているのが心強い。利点を認識しつつ、どのように安全を確保するかを考えるのが重要だろう。
もう一つ。それでも放射線とかなんとかというのは難しそうだと思う方もいるかもしれない。しかし、本書は実に平易に書かれている上、キュリー夫人などによる発見の歴史をかいつまんで解説しながら放射線の性質や原理を丁寧に教えてくれている。中学生でも十分に理解できるほどのレベルではなかろうか。ちょっとでも興味を感じたら、タイトルだけで敬遠せず、どんな使われ方をしているのかを覗いてみるつもりで手にとって見てることをお勧めしたい。
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投稿者:きりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
放射線ときくと拒絶反応を示す人も多いのでしょうけれど、産業界でこれだけ使われているのですね、驚きました。
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ちょっとした放射線の知識を仕入れたい場合にいいかも。
どのような場所で利用されているのか明示されているので、こんなところで使われているんだという驚きがありました。
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[ 内容 ]
レントゲン教授が放射線を発見して百余年。
日本での放射線利用は9兆円の経済規模に達している。
空港の手荷物検査にはじまり、半導体加工などの産業利用、医療器具の滅菌、診断と治療、食物の品種改良、ジャガイモの発芽防止など、私たちの身近で使われている放射線のメリットとデメリットをやさしく解説。放射線利用の入門書。
[ 目次 ]
第1章 身のまわりの放射線
第2章 放射線の基礎をおさえる
第3章 放射線でつくる、加工する
第4章 放射線で「みる」「測る」
第5章 食べものと放射線
第6章 医療と放射線
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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最近こんな本ばっか読んでるな・・・原発産業以外に、あらゆる所で放射性物質、放射線が利用されている。医療での内・外照射、農業、工業。原発に対することはあまり書かれてないが参考にはなるでしょ。
チェルノブイリや福島で放射性ヨウ素131が甲状腺がんの可能性について言われていたが、そのヨウ素131をバセドウ病の治療に使っているとは知らなかった。内部被ばくで甲状腺細胞を死滅させ、甲状腺ホルモンの量を減らすのだそうだ。
原子力委員会が時に発言する「少量は体に良い」発言はラドン温泉や放射線治療からくるのかもね。コントロールが効かず、垂れ流しで長時間全身に被ばくするもの一緒にするのは違うと思うけど。
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放射線に関するメリット、デメリットが記載されている本。
レントゲンだけでなく食品加工、害虫駆除にも放射線が活用されていること、放射線は水素が含まれているだけで日常にありふれた水で遮られることに驚いた。メリットデメリット互いに程度が甚だしいが、人間が火をコントロールできたように、放射線もコントロール出来れば良いと考える。が、発電等広範囲に及ぶリスクが高い物については再考の余地あり。
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放射線の種類、基礎的な知識が分かりやすく書かれていて、工業、農業、医療などでの放射線のさまざまな利用が紹介されている本。改めて現代はこんなにも放射線が使われているのかと思った。きちんと特定された用途に使われている分には問題ないということがよくわかった。今、知りたい原子炉事故に関しては別な本を読むしかない。
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推薦理由:
今、放射線と言えば先ず思い浮かぶのが福島原発の大惨事であり、放射線は怖いもの、危険なものというイメージが先行しているのはやむを得ない事と言えるだろう。しかし現在我々の身の回りでは工業、農業、医療などの多くの分野で放射線が利用され、日本での経済効果は数兆円規模になる。放射線とは何か、放射線はどのように利用されているのか、そしてそのメリットとリスクはどこにあるのかを正しく知ることは、現代を生きる我々にとって大変重要な事である。本書はイラストやグラフなどを使い、放射線利用について分かり易く説明している。
内容の紹介、感想など:
先ず放射線についての基礎知識として、放射線発見の歴史を紐解きながら、様々な放射線の線源や特徴などを分かり易く述べている。原発事故以来お馴染みとなった「ベクレル」「シーベルト」などの単位や、混同されやすい「放射能」と「放射線」の違いについても説明されている。その上で、工業、農業、医療など幅広い分野で、どの放射線が何の目的でどのように利用されているかがまとめられているので大変理解しやすい。原発のエネルギー利用以外で放射線利用というと、病院でのエックス線撮影や癌治療、空港の手荷物検査などがすぐに思いつくが、その他に半導体加工、自動車のタイヤや発泡プラスチックの製造、ゴミ焼却炉でのダイオキシン除去、医療・衛生器具の殺菌・滅菌、非破壊検査、農業における品種改良、害虫駆除など実に様々なものがあり、我々の生活を支えている事に驚かされる。
放射線を「危険なもの」と決めつけるのではなく、正しい知識を持って、そのメリットとリスクを判断することが大切だという事がわかる。
放射線に対する我々の姿勢を語るにふさわしいとして紹介されている、物理学者で文学者の寺田寅彦の言葉が印象深い。
「ものを怖がらなすぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい(寺田寅彦)」
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放射線利用というと,レントゲンや放射線治療など,医療が思い浮かぶが,実は工業利用が八割以上を占める(経済規模)。タイヤなどの樹脂の架橋や半導体ウェハのエッチング,イオンドープなど。ほかにも農業利用もある。ゴーヤの本土への流通は,放射線照射による害虫ウリミバエの不妊化→根絶によって可能になったらしい。あと,ジャガイモに芽が出ないよう放射線を照射することが認められている。照射によって突然変異を促進して品種改良,みたいなこともできる。
あと放射性元素による年代測定は前からすごいと思っていた。半減期って核種に応じてなんで完全に決まってて少しも変動しないんだろう?と不思議に思ってたこともあるが,量子の世界だから確率なのか,という理解で最近は納得している。
日本では自然放射線は西高東低。西日本には花崗岩が多いので,それに含まれるウラン,トリウム,カリウムなどからの大地放射線が効く。トンネルの中は岩石に囲まれるわけで,放射線が強い。あと,宇宙線は高度が高くなるほど強くなる。地表での宇宙線は0.03μSv/h程度,富士山頂で0.2μSv/h,ジェット機5μSv/hくらいらしい。高度400kmの宇宙ステーションになると,40μSv/hにもなるらしい。2日で一年分の自然放射線とは!
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放射線技術を使った実用的な利用状況の解説が大半を占めている。原理に関心がある身としてはやや物足りない。
数値や図表が豊富なので資料としてはいいかもしれない。
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原発にとって放射線はただの邪魔者でしかないが、実は放射線は、身の回りの色んな所に利用されているのだというお話。中学生に放射線の話をしなければならなかったので、そのネタ本として使わせてもらった。
放射線の利用としては、レントゲン撮影をはじめとして医療への応用が有名だが、それ以外に、工学分野や食品分野にも利用されている。前者としては、半導体のエッチングや車のタイヤに使われる強化ゴムの製造などがある。後者としては、例えば、ジャガイモにガンマ線を照射して発芽しにくくさせることが行われている(ガンマ線を当てると、盛んに細胞分裂を起こしている芽の細胞に障害が出るのだ)。色んなことが網羅的に書かれていてストーリー性がないので、読んでいて引き込まれるような本ではないが、類書がなかったので重宝した。