紙の本
HOMESWEETHOME
2007/03/24 10:43
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気作家(コウちゃん)の小説に影響を受けて起こったネット集団自殺。彼の作品とブランドは見事復活を果たしたが、その影には一人の女の子からの励ましの手紙があり、その「コウちゃんの天使」は現れることはなかった。 時は流れて、強く脆く優しい不器用な環を中心に、アーティストの卵たちが自分の可能性と限界に苦悩しながら切磋琢磨しながらスロウハイツで時を過ごす。環が何者か、というのは薄々わかることだけど、彼女自身の人生描写と、たまらないほどの不幸とそれでも生きる懸命さ、読んでいるコッチが苦しくなる。
人間として人と人とが関係していく中で、心が崩れ、何かが崩壊し、切りつけられる痛みの中で大切なものを失くしてしまう。ことに大切な人がいればこそなおのこと、だ。
その時、もう一度再生するために、それでも生きていくために、自分のために、自分の大切な人のために、自分の大好きな人が幸せであって欲しいために、笑っていて欲しいために、
たとえそれが自分やごく一部のエゴであっても一生懸命に想う事が出来る。そして、許す事が出来る。その人のために、自分のために・・・それが結局、愛なんだって。そんなこっぱずかしいことをいうのもなんだが、それでもそこに辿り付ける。
それを確認させてくれたたまらなく嬉しい作品だった。
友人として、同士として、恋人として、どれもこれも中途半端なスロウハイツの卵たちと「神様」が傷ついたりボロボロになりながらも一生懸命生きている。そんなスロウハイツがきっと誰にでもあるのだと信じたい。
紙の本
苦しくてやさしい、現代のおとぎ話
2009/06/15 21:12
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
新進気鋭の脚本家・赤羽環は、譲りうけた一軒家を友人たちに格安で貸し、共同生活を始める。
ある事件のために筆を折り、その後再起を果たした人気作家チヨダ・コーキに、彼のマネージメントを一手に引き受ける編集者黒木、漫画家を目指す狩野、映画監督になりたい正義、正義の彼女で画家の卵である森永すみれ、環の親友である円屋。
まるでトキワ荘のようだと笑いをかわして始まるスロウハイツでの日々の辿りつく先は――?
若いクリエーターたち(またはその卵)が共に暮らすスロウハイツでの日々を、それぞれの視点を借りながら丁寧に追っていくお話。
『凍りのくじら』でも思ったけれど、この著者は本が大好きなんだろうなあ。本好きな人ならきっと共感できる、本が人に生きる糧を与えるという感覚をとても上手に描いています。
クリエーターを目指すだけあって(いやそれともクリエーターに限らず人は誰でも)、それぞれがそれぞれに抱える事情や想いがあって、それは時にぶつかり、焦燥に駆られ、衝突し、軋轢が生まれ、やさしい修復をくりかえし、「ゆっくりと、丁寧に、時間をかけて」送られる日々は、ここで暮らした人たちへの文字通りの贈り物だったのかもしれません。
登場人物たちの年齢設定によるのか、お話によるのか、デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』や『太陽の座る場所』ほどには自意識過剰ではなく、淡々と、けれど丁寧に掘り下げられていく人物描写も読んでいて心地よかったです。
それに環が幸せいっぱいとは到底言い難い人生の中で出会ってきた人たち、図書館司書のお姉さんや、駅員のおじいさんらの存在もよかったです。描写も最小限で、けれどこんな風に小さなさり気ない好意とも言えないくらいの好意が降り積もって、人を生かすんだと思わせてくれる。それを如実に感じさせてくれたのが最終章の「二十代の千代田光輝は死にたかった」でした。
作品の中には出てこなかった、そんな小さな小さな本人には見えないところで動かされる気持ちが、きっとそれぞれ他の人生の中にも存在しただろうし、私たちの人生の影にもあっただろうと思える。それはちょっとばかり切なくも心温まり、泣けることです。
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三度目の再読終了。ちゃんとレビュー書いていなかったのでもう一度書くことに…。
辻村さんの作品は大好きでずっと追いかけていますが、この「スロウハイツの神様」が私は一番好きな辻村作品になりました。
見事に張られた数々の伏線が見えた時の感動は言葉では言い表せない。じわじわと心に染み込んで捕らえて離さない。
最後の最後に明かされる数々の真実に涙が止まりませんでした。
こんなに優しい話は今まで読んだことはない!と声を大にして叫びたいです。
何度読んでも心に響く。心が震える。
新聞社に投書を続けた少女の気持ちが痛いほど解ります。
『人殺しの話なんて、言わないで下さい。あの時期に、チヨダ先生の本を読んでいなければ、私は今、ここにはいませんでした。コウちゃんの本は人を殺したりしません』
少女の叫びが全て自分とリンクしてそこでも涙が流れました。
私も全てが嫌になって丸投げして逃げてしまおうと思った時に、1冊の本に出会い助けてもらったことがある。
その本は私にもう一度全てを抱えて歩いていく力をくれた。
その本との出会いがなかったら今の私は居ない。その出会いに深く深く感謝した本がある。
辻村深月さんの成長は物凄い。作品に対する愛がびしびしと伝わってきます。これからもずっとずっと大切に読んでいきたいです。
次回作も楽しみに待っています。
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下巻。ストーリが後半でうまく収束します。スロウハイツの住人は仲間の小さな心の動きや行動を見逃しません。そんなにマメに、真剣に人と向き合っているオトナっているのかなってかんじ。『仲間』への愛情あふれる作品。
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登場人物の言葉を引用して感想とする。「まぁ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛なんだよね」これを読まない人間は、必ず後悔する。
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何かエゲツない展開だったら嫌だなぁ…と思っていたのですが、読了後にしみじみ思ったのは「純愛だ〜v」でした(笑) ラストはちょっと見たかったものとは違ったけれど、ライトノベルではないから、やっぱりこの終わり方がベストかな。後、既刊作品との人物リンクが読者としては嬉しいです。
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辻村深月さんの書く登場人物は不思議です。読んでいてイライラさせられて、「私に近づかないで」のオーラが出ていて、周りの人を傷つけて……読み始めるとそんな気持ちになる登場人物なのに、読み終える頃にはなぜか好きになっています。
「スロウハイツの神様」は辻村深月版トキワ荘。自らが生み出した小説を模倣した大量殺人によって筆を折った作家チヨダ・コーキを中心に、若手脚本家の赤羽環がオーナーのアパートに住む芸術家の卵たちの生活が描かれています。上巻は淡々と個々の登場人物の背景や思いが丁寧に描かれて、下巻では最初に提示された「チヨダ・コーキを誰が救ったのか?」という謎を一気に収束させていきます。
ラストは正直なところ仕掛けが大きすぎて「やりすぎ」とは思うんですが、それでもまぁ色々と伏線は張ってありましたし、「ま、いいか」とつい許してしまいます。
才能を持つ者、才能を信じる者、才能におぼれる者、才能を見つけたい者、それぞれが何かを掴むことができそうな話で上手下手、おもしろいそうでもないというよりも、ウチはこの作品がとにかく好きですね。
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ちょっと残念。。。主人公の痛々しさは相変わらず、話の展開も読めやすいわりには面白さが不足している。
確信犯かもしれないけれど、大人が読むには少しキツイ。
気恥ずかしいまでの、蒼っぽさがつじむら深月の持ち味なんやと思う。
それを加味したうえで、ノベルズ以外の
つじむら深月も切実に読んでみたいと思うのです。
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読み終わり→3/9 面白かったんだけど・…ってな感じ。辻村深月にもう一度ミステリーを書いて欲しい。段々と私の評価が下がりつつあるんだよ。面白いけど普通。そんな感じ。これは2度読みしてやっと面白さに気付くのだと思う。少しごちゃごちゃ過ぎるよ。あー・・・・・・でも最後の展開が途中でわかってしまったのは悲しかった。最後の最後に「あぁ! そうなのか!」って思わせるのが辻村深月なのにな。でも嫌いになれないよ。今だランキング5以内に私はこの人を入れている。
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大筋の展開は予想通り……なのに、全くマイナスにならないほど面白い。
そんなところまで伏線だったのか、と驚かされるラスト。
「まぁ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛なんだよね」いい台詞。
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読了〜〜wwやっぱり辻村深月さんのお話の読後感は最高ヽ(○・v・○)人(●・v・●)ノ現実逃避するには最高の一作でした☆毎回毎回思うけど、伏線の張り方がヤバいです!!次回の新作が楽しみ♪
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2007/3/23
こんなに早く読んでしまうつもりじゃなかったのに。もったいない。でも止められなかった。
みんなが幸せになってくれたらそれでいい。
環に教えてあげたい。
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ぶわっとこないけどにじみ出る涙とか笑顔とかそのたもろもろ
これ!ってかんじのヤマはないんだけど、じわじわときます
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この人の優しい作風が好きです。
殴るような優しさ、包み込むような優しさ、撫でるような優しさ、彼らのお互いを大切に思う気持ちの描きかたが好きです。
・いいなあと思った台詞
「いいことも悪いことも、ずっとは続かないんです。いつか、終わりが来て、それが来ない場合には、きっと形が変容していく。」
「何より続き続けることは、必ずしもいいことばかりではない。」
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上巻は辛かったが、下巻に入るとグイグイ読ませる。文章上の欠点もさして気にならなくなる。伏線の張り方と回収の仕方には、無理があるよなぁ・・・というモノと、上手く考えたなぁ・・・というモノがあるが、総合するとよく考えられたお話であり、爽やかな読後感が残る。出来過ぎ・・・という感も多少あるが。というわけで、結構面白かった。僕の中では、辻村作品の1位が『冷たい校舎の〜』で、2位が『子どもたちは〜』とコレかな。