紙の本
前へ進め!僕ら。宇宙へ
2007/10/05 23:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
フライバイ、孤独な言葉だ。通過。太陽系を通過するマイクロマシンの艦隊、それは霧のように来たりて過ぎ去る。それが人工物だと分かっていても、コミュニケーションは不可能なのか。然り。まったく異なる文明間のそれは必ず限界があることはS.レムの諸作に示される通りと思う。だが哲学、観念の世界と、現実にはまた違う様相がある。例えば電波を探知し、コード化し、解読できるものとできないものに分ける。それだけ。まずやりたいこと、出来ることをやってみる。多くは望まなくていい。たったそれだけで、新しい世界が拡がり始め、孤独はいくらかの共感に取って代われる。考えるのはそれからでも遅くない。理屈は手を動かしてから言え、寝言は寝て言え。技術者という立場での一つの倫理基盤であり、プラトン、アリストテレス的なものとはまったく異なる思想。独自性においても、現実の成果においても日本が世界に誇るべき思想だろう。それを小説という形でもっともよく表現し得ているのが、この野尻抱介だ。
表題作は、宇宙航空研究開発機構の一介の研究員がその担い手として、地道に淡々と、内心は熱く滾りながらそれを表現してくれる。「大風呂敷と蜘蛛の糸」ではそれは大学院生と研究チームが主役。こちらは凧で宇宙(といっても成層圏の少し上の中間圏まで)を目指すという、斬新だが、おそらくほんの少しの技術的飛躍と、予算獲得によって実現可能な夢のプロジェクト。巨大ロケットによる月や火星への旅に比べればささやかな冒険だが、最高の叡智と勇気が詰まっている。
「ゆりかごから墓場まで」では、生化学で人間の生存環境を培う新技術の開発者はタイのベンチャー企業、それを活用する主人公はインド人技術者というのも、近未来の世界のあり様を示唆している。この技術は宇宙とむちゃくちゃ相性がいいわけだが、それゆえにかえってインドの火星移住プロジェクトの悲惨さは目を覆うばかり、いや、ここは笑うところだろうか。とにかくプロジェクトはうまく進んでいるのだから。もちろん試練はある。技術者魂爆発の展開は快感。
「轍の先にあるもの」は一転、老境にあるSF作家の小惑星の地表を写したたった一枚の写真に対する懐古、そして時代は変わり、彼自らがその地に赴くことになる。時代の進歩の速度とともに、ノスタルジーの形も変っていくというところが興味深いのでおじゃる。
こういった作品で、テーマがみな宇宙開発に関わるものなのは、そりゃ作者も僕らも宇宙が好きだから。ガガーリンの時代なら、大人になったら宇宙飛行士になりたいというのは、人類でたった一人しか選ばれない、文字通りの夢と言える夢とだったけど、半世紀が過ぎて、今や努力でいくらでも叶えられる現実的な目標になっている。1000人でも1万人でも宇宙は受け入れてくれる。ちょっとしたブレイクスルーで、辿り着ける距離はどんどん伸びる。そういう移り変わりのリアルを映し出している希有な作品集だ。そして観念の世界では近くても、生身の人間にとっては広大無辺な太陽系世界の最良の案内人でもある。
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宇宙ものSFの短編集。舞台は現在だったり未来だったり。短いながらも読み応えがあり、わくわくします。実際の現在の知識が織り込まれた上に、現実にはない技術が出てきたりしてし想像力が刺激されます。宇宙にあこがれを持っている人、必読。
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私は幼少時にアポロの月着陸を生で見た世代である。そういう世代が想像する「実現したかも知れない宇宙時代」を書ける数少ない作家がこの野尻抱介だろう。本書は、その野尻流の入門書としてお薦めの短編集。その作品もノンフィクションでないのが不思議に思えるくらいである。
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専門用語がよくわからなくて時折orzしますが、お話としては安心して読めるし綺麗にまとまってる。終わり方もちょっと読み足りないくらいで終わってるのでしつこさがないし、その後を想像する余裕があって、専門用語意外は読みやすい短編だと思う。けど、宇宙SFに興味ないと、やっぱり専門用語にorzってなる(w)全体的に軽くて楽しい感じ。
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導入部が日常的すぎて、自分でも気がつかないうちに作品世界に同調しているとでも言えばいいか。やってることはマニアックであるが、難しさを微塵も感じさせず、少しでも心得がある者であるならば、いつの間にかシンクロしている。解説者の言葉を借りれば、「最小の形容で最大のイメージを読者に与える」「あまりに達者なので気がつきにくいが、極めて喚起力の高い文体」となる。
どの作品も甲乙つけがたい。しかし、敢えてNo.1を選ぶとすれば「大風呂敷と蜘蛛の糸」読んでいて、おれも仲間に入れてくれ!と叫びそうになった。
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”あきらめるな、宇宙はそこにある”
帯の文句にやられてしまったのです><
野尻さんの作品読んだのはこれで2作目。
個人的には「ゆりかごから墓場まで」がお気に入り。
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B
短編集
進歩した科学が人々にどのようなパラダイムシフトをもたらすか。
科学の未来を期待させるようなわくわくさせるSFはいいね。
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現状の宇宙開発構想の未来を思わせるものが多いSF短編集。
「沈黙のフライバイ」・・・ケンブリッジ電波天文台が地球外からの有意の信号を捉えた、それは野島が宇宙探査のために考えていたIPS(恒星間測位システム)による信号であり、地球外文明の探査機が地球に近づいていることを意味していた。光速の13%で太陽系を過ぎ去るそれを人類は大慌てで迎える準備を進めるのだが・・・
「大風呂敷と蜘蛛の糸」・・・榎木紗絵は宇宙に出ようとしていた、彼女を宇宙に運ぶのは"凧"と"気球"、それは彼女のふとしたアイデアから始まった計画だった。
知識不足でついていけないものもあったが、ハードSFとしてもリアリティのあるものに思えた。
一つのアイデア、技術革新がどう影響するのか、そして実際にそれを求め、動かす人はどういう意志を持っているか、さほどドラマチックな展開があるわけではないが、それでも夢のあふれる作品集。
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沈黙のフライバイ(野尻抱介 ハヤカワ文庫)を読みました。
表題作を含め全5作の短編集です。
やはり、表題作「沈黙のフライバイ」が一番良いように思います。
この作品に対して☆☆☆☆です。
内容は、SETI(地球外文明探査)を行うために、安価に探査機を地球外に射出しようとしていると、逆にアンドロメダ方面から人工的な?信号が探知される。
そして、それが異性人の探査機が発信している信号であり、それが太陽系に向かっていることがわかるが・・・。
というものです。
基本的にSF・ファーストコンタクトものです。
読みどころは、地球人が異性人に向かってどのように自分たちを表現しようとするか。
また、逆に異性人の探査機が太陽系や地球のどのようなものに興味をもったか、という箇所の描写でしょう。
ほんの一瞬のコンタクトですが、それが逆に緊迫感があっていいです。
アーサー・C・クラークなどのファーストコンタクトものが好きな人にはオススメです。
逆に、スペースファンタジー系が好きな人には少し味気ないかもしれません。
自分はファーストコンタクトものが好きなので、ちょっと採点が甘めかな?
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氏の初短編集。
読みやすい文体と、リンクする現実、前向きな登場人物に満ちた良質なハードSF。
宇宙に行ってみたいな、行けるかな、と思わせる素敵な作品群でしたよ。
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宇宙ってこんなに身近なものなんだ、と思える短編集です。理系の人以外にも読んでもらいたい。特に「大風呂敷と蜘蛛の糸」はとてもよいです。
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内容
アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。
分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、
異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する。
静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、
一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。
宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
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得意の表紙買い。
どれもが実際に起こりうるような出来事ながら、現実に起こるためにはきっと、長年積み重ねてきた学問や下準備がたくさん必要なんだろうーーー日頃はスポットのあたらない研究分野で頑張っている人々にエールを贈りたくなる作品。
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2011 6/15読了。有隣堂で購入。
『星を継ぐもの』が好きだ、と言ったら@yuki_oさんから薦められた小説(薦められたのは収録作品の中でも「大風呂敷と蜘蛛の糸」。なるほど確かに、とんでもなく面白い)。
初・野尻抱介。
火星に行ったりの話は最初から小説であるとわかるのだけど、途中までは事実に基づいていた内容から徐々に創作に入っていったりしていて、しかもその中にJAXAははやぶさ等馴染みのある名前が出てくることもあって、ドキュメンタリかのように感じることも。
「SFってこんなこともできるのか」という驚きをさらに新たにした。
そして描かれている研究者や科学者、学生、宇宙好き小説家の姿が鮮やかで好きだ。
1編読むたび「面白ぇ!」って声に出していた。
他にも野尻作品を読んでみる。
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タイトルから展開が連想できるんだけど楽しく読めちゃった「片道切符」と、夢いっぱいの大発明品が主役の「ゆりかごから墓場まで」が特にお気に入り。私はやっぱり宇宙に行きたい!