紙の本
『経典余師』ってそういう意味だったのか
2020/01/15 22:24
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
武士だけでなく、庶民が読書できるようになった江戸時代中期以降。もちろん、庶民といっても全てではないけれど、多くの人が本を買って儒教の勉強ができるようになった。そして、そういう人たちに買ってもらえるように、多くの本が出版された。いろいろ、おもしろい。
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江戸時代のベストセラー、渓百年「経典余師」を軸に書誌的な論述。あとがきで述べるように、考証や引用を省いて読んだほうが、ポイントがつかめる。論文と一般書の間な立ち位置だ。黄表紙の流通が発達で書物が一般化し、「経典余師」の普及が寺小屋式のみならず独学を可能にして、知力レベル向上に繋がったと分析する。原文がかなり読みづらいが、概観には良いかも。
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☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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主語が抜けてわかりづらい。前提になってる知識を知らない人にも、補足説明を少しつけて読みやすくしてほしい。
内容は興味があるので読んでいる。
大学の授業のレポートで要旨をまとめるのでがんばって読む。
正直気軽にはよめない。
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2013 11/18パワー・ブラウジング。司書課程資料室の本。
図書・図書館史授業用。近世の図書史関連。
以下、授業用メモ。
===
・はじめに ・近世後期・・・19世紀日本における識字人口・読者人口の増加と『経典余師』
・独学・独習により読書能力を得られる道があった
・そうまでして本を読みたいという意欲は何によるのか?
・1章:全国的な読者層・流通網の話
・寛政期・・・知と情報のありようが大きく変化した時期?
・蔦屋重三郎の企画による、山東京伝が学問講釈の中身を平易に書いた教訓書
・寛政の改革期・・・草紙は倹約の空気の中で授業が冷え込み気味/経書の類は在庫が払底するほどの学問ブーム
・江戸の外への流通を狙ったひらがなつき学問書の刊行
・その読者層とは?:村落の名主など
・p.31「平易に「道」を説き、「道」に導いてくれるかもしれないこれら師匠要らずの新たな書籍は、本を読んで「道」に参与しようと意欲的な新たな読者層を書籍市場に掘り起こした」
・近世後期はものを学んでわが身を修めようという真面目な人々が顕在化してきた時代?
・『膝栗毛』の広域流通
・読本、滑稽本、人情本など文章主体の娯楽物は、貸本屋から借りて読むのが当時の通例・・・貸本屋への売れ行きが版元の利益に直結
・そのとき、どこから読みだしても同じ2人のキャラクタがお約束を踏まえてなにかやらかす『膝栗毛』は万人受けするコンテンツ
・プラスして・・・三都(京都、大坂、江戸)以外でも読者層が広がりを見せていた・・・十返舎一九の名は全国で知られ、地方に出かけるとまちぐるみで歓待を受けたりする
・従来、江戸での流通のみを視野に入れていた戯作が、全国で流通するようになっている
・滑稽だけでなく事件の顛末が教訓的な色彩を持つ+地域の紹介を兼ねる。学問を身につけているような層とは別のそうに対し時代の興味・関心をみたす啓蒙的な書籍
・「平易でわかりやすい教養書」
⇔・一方で中身はあくまで文章主体・・・それを長野の松本なんかでも街を挙げて喜ばれるくらいに、読者人口が増えている=「知の底上げ」?
・19世紀・・・全国で寺子屋設立・文字教育の普及
・手習い用の本=往来物の流通も増加・・・三都から地方への販売網の成立
・明治の教科書販売網としても威力を発揮する
・大坂は大坂で西の方で販路拡大の事例あり
・2章:地方の本屋さん・松本の話
・19世紀初頭・・・信州松本に貸本屋が存在している記録
・娯楽的読書習慣の存在を示す
・本屋は書籍以外も扱っている・・・文具など
・江戸からの流通が最も多いほか、京都、大坂、名古屋などとの取引あり
・高美屋・・・広域流通網の拠点として活躍しつつ、地域での出版も手がける
・謡本、往来物など
・そうした成立の背景・・・村落における学問熱の向上
��・18世紀末のある村・・・一人の若者を除いて学問に励むようなものなし
・それが後にわれもわれもと入ってくる
・19世紀半ばには、以前は誰も文字なんで読み書きできなかったのが、ほとんどみんなできるようになっていたとの記録
・この時期、全国的に学問=読書が身分や階層を越えて広がっていっていた?・・・そうでなければ広域流通が成り立ち得ない
・3章:『経典余師』というモデル
・経典余師・・・渓百年という浪人儒者の編んだ経書の注釈書
・ひらがな混じりで注釈と書き下し文を示す
・独学で素読を会得、学問ができるようにしたもの
・二宮金次郎はこれで独学で勉強している
・近世後期~近代初頭までよく使われていた本
・古本屋とか旧家の蔵書なんかを見ているとたいがいあるくらい当たり前の本⇔その研究は全然ないとか
←・「日本の古本屋」でお値段調べておくか?
・4章:自学の時代と書籍需要
・経典余師・・・潜在的にあったニーズに合致し、流行を招く?
・「師に付き学びがたき人」のための独学用本
・類似の経書・漢籍のひらがな付き版の出版はその後、相次ぐ
・多くは途中で読むのをやめたらしき後あり・・・それでも手にとってみようと思えば道は開かれている状況
・値段も廉価・・・草紙を主に読むような人々でも買いやすい?
・扱うのも草紙などを売る地本屋・・・書物と草紙の境目が曖昧になっていく時期?
・あとがき
・p.245-246 「江戸時代の人々は、それが許されるような状況になった時、自らに学問を課していった。
それは、自身の徳を高めたいがためであった。彼らの思い描く美しい人生とは、他人の分を侵さず、
自らの分をまっとうすることであったろう。すべての調和・安定こそ美しい。家の存続、村の存続、
そしてそれを可能としてくれている御代の存続は、その理想的人生の大前提であったし、それも倫理的な
生き方の何たるかを学問を通じて会得し、個々の徳を高めることによって実現しうると考えていたであろう。
儒学の説く徳目は柔軟に咀嚼され、すでに彼らの生活の間尺にあった指針となっていた。
江戸時代後期の学問熱は、このような普通の人々の善き心根に発していよう。
そのささやかな個々の意識の集積が大きな時代の流れを作っていったのである。」
・授業用メモ:近世後期の動きの例として紹介するか??
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18世紀末、江戸の版元は刊行・流通戦略を変え、地方には本屋が簇生、自習用教育書が爆発的に流行する。それは新しい広範な読書の時代の幕開けだった。近世読書空間の沸騰を描く待望の一冊。