紙の本
須賀敦子氏がローマ留学時代に綴った「どんぐりのたわごと」のすべてを収録した貴重な作品集です!
2020/06/03 10:43
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イタリア文学者、随筆家の須賀敦子氏の全集の一冊です。河出文庫からは全8巻シリーズで刊行されており、そのうちの第7巻目にあたります。同書は、須賀氏が20代から30代のイタリア・ローマ留学時代に綴られたミニコミ誌に掲載された「どんぐりのたわごと」をすべて収録したほか、名作「こうちゃん」などを収めた貴重な作品集となっています。須賀敦子氏の生涯の軌跡に触れられる一冊です。
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第七巻は『どんぐりのたわごと』という原稿執筆から製作まで手がけたミニコミ誌を全号収録したもの。
その成り立ちに、興味を覚えた。
「 −と云ったってもちろん、いくら私達が一生懸命になったところで、偉い人たちから見ればどんぐりの背くらべ、大したことできないのはわかってる。だけど大したことができないってだまっていたのでは、背くらべにもなりやしない。どんぐりならどんぐりなりに、云ったり考えたりすることがあるはず。だからせめて私たちだけでもねむってしまわないように時々あつまって、どんぐりのたわごと会しましょうよ」
「つやつやと光っていて、いつも笑っているようなどんぐり。しかもまた何と小さくて威厳のないことか。でも私達は、どんぐりでなければもつことのできない、しずかな、しかもいきいきとした明るさを、よろこびを、みんなのところにもって行けるのではないでしょうか。」
これだけ書いても伝わらないよね。
でも、ここにぼくの夢が詰まっています。
ああ、そうだったんだ。これがやりたかったんだと納得がいきました。
ゆっくり考えていきたいと思います。
さて、よくわからない前置きですいません。本題です。
この第七巻の中には、宝石がたくさん詰まっています。
キリスト教に関する文書の翻訳が掲載されているのですが、これがすごい。
クリスチャンっていろんなジレンマを抱えながら生きてるようなぁ。という内容です。
そういう思い一つ一つに対して、丁寧に答えていただけたような。そんな気がしています。
彼女自身の文章ではないのですが、すばらしい文章を探すセンスには脱帽です。
もちろん、まわりにいる人たちが薦めてくれたものも多いのでしょうが、それはその人に魅力がなければおこらないことですよね。
彼女が紹介する詩もすごい。いい年したおじさんが『詩』なんて読んで感動したって紹介するのは、ちょっと気恥ずかしいですが、いやあ。いいもの読ませていただきました。
そして、そして。
一番のおすすめは『こうちゃん』。
私のつたない文章力では、この魅力を伝える事はできません。
いつのまにかそばにいる不思議な少年『こうちゃん』。
かれが何ものなのか、いくつなのか、どんな境遇にあるのか、空想の産物なのか。
しばらくは、いろいろ考えながら読みましたが、そんなことどうでもよくなりました。
もう、ただその世界にひたっていたい。そんな文章です。
切ない気分になる話が多いのに。
どうしてか、暗い気分にはならない。
かといって澄み切ってはいない。
その微妙なところがとても気に入ってます。
ものすごいセンスです。
ああ、もどかしい。
もうね。読んで。いいから(^^
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著書が、1960年7月から1962年6月にかけて自費出版した「どんぐりのたわごと」と、著書の1971年1月16日から7月22日までの日記を収録。
著書が遺した日記は、本巻収録分のみとのこと。
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第7巻は『どんぐりのたわごと』と『日記』。
『どんぐりのたわごと』は自費出版の雑誌で、主にカトリック関係者の文章が訳載されている。
『日記』は著者の内面の変化が解って面白い。
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いろいろと疲れていたときに、
彼女の分は心にとても染み渡り
悲しい思いになっていて
しおれていた私を元気付けてくれました。
彼女の文章は厳しいけれども
優しさを感じます。
今回は15号まで出ていた雑誌と日記と、です。
雑誌のほうはカトリックの司祭の文ばかりで、
すごく堅苦しいかもしれませんが
宗教如何にかかわらず
そこに学ぶべき部分は大きいかと思います。
特に驚いたのは、
聖母マリアのなしえたことでしょうか。
決して彼女は、何もしていないんですよ。
奇蹟も行っていないのです。
ただただ、キリストの母の役目をなしたのみなのです。
そのほかには、現代だからこそ
肝に銘じて欲しい文もありました。
いじめが当たり前でない
世の中にならないために、大事なこと。