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紙の本
「人間到る処、青山あり」て意味知ってました?この本を読めばわかります。しかもお話がいい。自分がいつその立場になってもおかしくない、そんなものばかり。カバーの柔らかい感じもいいです。
2008/07/29 19:33
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥田の本を読むのは久しぶりです。ただ、奥田の場合は重松清や小池真理子と距離を置いているのとは少し理由が違います。重松・小池の場合はほとんど追っかけ状態で読んでいて、そのうち方向性が違ってきてしまった。重松の奇麗事的話の運びにウンザリし、小池の描く老人の性に、老齢化社会への媚びを感じたわけです。
でも奥田の場合はそうではありません。彼の出版ニュースを追えなくなってしまった。ま、執筆量もあるとおもいます。連載単行本化されるタイミングもある。森博嗣のように3ヶ月おきくらいに本が出るのも困りものですが、小説量が減ってエッセイが増える、そうなると、小説イノチの私のような読者は、自然と注意が疎かになります。その結果の疎遠であって、憎くて我が子を手放したわけでは・・・
さてこの作品集、結構評判がいいようです。写真 本城直孝、装丁 大久保伸子のブックデザインも、ソフトフォーカス気味のカバーはクリームがかった色味もあって爽やかさはないものの暖かいムード、ソフトカバー装も手に優しくて親しみやすい。中味もそれに相応しいものであれば、羊の皮を被った狼となるわけですが。
早速、各話の初出と簡単な内容紹介。
◆サニーデイ(「小説すばる」2005年11月号):ネットオークションに家で使わなくなったものを出したら、思いのほか高く売れて、買い手の評判もいい。周囲からは若返ったとまで言われた妻は売り物を求めて・・・
◆ここが青山(「小説すばる」2006年10月号):会社が倒産した夫と、昔の職場に復帰した妻。夫は主夫業が楽しくてしょうがないし、妻もそれを認めている。でも、周囲はそうは思ってくれない・・・
◆家においでよ(「小説すばる」2006年2月号):妻が家を出て行ってしまい、なんとなく自由になるお金が出来た夫は、自分の部屋を思いのままに作り始める。家具、オーディオ、ミニシアター、噂を聞いた同僚が・・・
◆グレープフルーツ・モンスター(「小説すばる」2004年9月号):内職の仕事を持ってくる担当者が変わった。今度の男はピアスをつけ、他人の家のトイレを平気で借り、飲み物を要求する、そんな無神経な筋肉質の男・・・
◆夫とカーテン(「小説すばる」2005年7月号):営業センスはあるけれど一つところに長く勤めることができない思いつき夫と、周期的に傑作を物するイラストレーターの妻、34歳・・・
◆妻と玄米御飯(「小説すばる」2006年12月号):流行のロハスにはまって家族に色々なことを押し付ける妻と、人付き合いが苦手で作家になった夫、そして母親の最近の料理を嫌いになった子供たち・・・
やはり面白い。重松清の小説と同じような設定でも、向かっていく方向が違う。無論、正反対というわけではありません。むしろ方向は似ている。でも落としどころが違う。ある意味、重松が教科書的なのに対し、奥田は甘い。甘いのを承知でまとめている。多分、重松は奥田のような結末をつけることに飽きがきたんでしょう。それが一部の読者を切り捨てた。私も娘も離れました。
むしろ奥田のほうに人間味を感じる。それは一部の人からは「浪花節」とよばれ「古い」といわれ「読者に迎合」と貶されるかもしれません。でも、私は小説の王道がここにある、と確信します。奥田は媚びてはいない。むしろ話が求めるところに自然に読者を導いているに過ぎません。それが自然である限り、私は追いかけますよ、奥田英朗。
「人間到る処、青山あり」の「人間」は「ジンカン」で世の中のこと、「青山」は「セイザン」で墓場のこと、だから「世の中、どこにでも骨を埋める場所がある」という意味。
紙の本
うまい!
2008/11/23 14:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
家日和(いえびより) 奥田英朗(ひでお) 集英社
この本を読みながら同時に「忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス」を読むとしみじみとします。主婦の悲しさとかわびしさとか、そういったものが、2冊の本をサンドイッチにすることで楽しめます。内容は6つのお話です。全般をとおしてみると、人生は1勝2敗、それでよしというような運びとなっています。筆力を意図的に抜いてあるところが、読みやすくて心地よい。
「サニーデイ」作者はわたしと同い年です。必然的に作品の内容は同時代に育ち暮らしているわたしの生活と密着しています。このお話については、わたしは読みながら作者とは異なる結末を想像していました。
「ここが青山(せいざん)」会社が倒産して失業者となった旦那さんの言動が不思議です。再就職の意欲が感じられず、主夫業を楽しんでいます。なんだか反応が薄い男性です。「気のもちよう」という言葉が頭に浮かびました。
「家(うち)においでよ」読みはじめで、わたしは2年前に手放した分譲マンションを思い出しました。引越しを終えてがらんどうになったマンションの部屋へと売却まで何度も掃除をしにいきました。そこでの暮らしで楽しかった思い出はあまりありません。仕事や子育てで苦しかったことばかりです。
「グレープフルーツ・モンスター」29歳の男性が39歳の女性を性の対象としてみるということは、自分が29歳だったときを思い出してみるとありえないことです。だから奥さんの行動はこれでいいのです。
「夫とカーテン」作者はいったいどこからこういううまい書くための素材を拾ってくるのだろうかと感心しました。大山夫婦の明るさがいい。ラストは神がかり的な設定でした。
「妻と玄米御飯」作者は毎日朝から晩まで文字を書いているのでしょう。そして、24時間小説書きのことを考えているのでしょうということが伝わってきました。がんばってください。
紙の本
おうちにかえろう
2008/10/22 22:35
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族ってこうだよ、と思いました。
ドラマの中の家族や、
小説の中の家族は、
いつもどこか作り物くさい。
なんか会話が不自然というか。
「どこにでもある家庭」を作りました、という感じがする。
でも、今回はあんまりそんなこともなかったというか。
どこにでもある家庭、なんてなかなかないよねえ、って。
それぞれちがうから。
よその家にあそびにいったら、
いつも違う匂いがするし。
その匂いの差がある短篇でした。
主夫になったからって、
全員が全員楽しくないってわけじゃない。
妻と別居したからって、
夫が必ずすさんだ生活を送るとは限らない。
一つ注文するのなら、
この本は夫と妻の
「家日和」を中心にしていますが、
それ以外の家族の構成員の話もよみたかったな。
紙の本
家ってステキかも
2008/05/17 16:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
家の中にいることの多い主婦や
家で仕事をする夫などを描く短篇集。
静かで穏やかな話ではあるのに
なぜか、なにか起きそうな気分にさせられます。
例えば「サニーデイ」では
ネットオークションにハマる専業主婦が主人公。
彼女は買い主が書いてくれる「評価」が生きがいとなり
次々に、家の中の不用品を売り始めます。
誰かに騙されるのではないか。
夫の私物を勝手に売って大丈夫なのか。
読みながらハラハラさせられます。
どの短編も、どこかで人生の落とし穴に
はまり込むのではないかと、ペシミズムに駆られます。
自分の思考の暗さにほとほと呆れる頃、
物語は何事もなく終わっていき、ホッとします。
紙の本
いいねぇ、みんな愛すべき家族だぁ!!!
2007/07/13 20:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥田氏の短編集です!伊良部医師こそ出てきませんが、やはり奥田氏の表現方法はつぼにはまります。
ネットオークションにはまる主婦には、自分の妻の物語かと思うほどの作品でした。あっさり夫の意見を却下する辺りは流石だと思います。
主夫の生活に取り付かれてしまう夫、弁当のブロッコリーで子供と勝負している辺りは、他人とは思えません。
妻との別居!?で、自分の趣味が蘇ってくる物語には、羨ましさを覚えました。無頓着な営業マンという若い男性とのささやかな遭遇から内なる思いに気付いてしまう主婦、妄想は尽きないだろうな、転職を繰り返す夫や、正しく奥田氏の現実化とも思われる妻のロハスな生活にまつわる小説家の夫。
どの作品も愛着が持てる。この魅力は何なんだろう!?凄いね!
読みながら次回作を期待してしまう筆者の魅力を、今は深く考えずに味わうだけにしておこう。
紙の本
やっぱり家族っていいよね
2007/04/16 22:43
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「家」を舞台にした短篇集。ネットオークションにハマっちゃう奥さんや、会社が倒産して妻が働きに出たので専業主夫になった旦那さん等々が登場する。中でも私が一番面白かったのは「家(うち)においでよ」という作品だ。
主人公が妻と別居することになり、妻が自分の家財道具一切を持って出て行ってしまったところから話は始まる。カーテンもソファも持って行かれてしまったので、とりあえずカーテンを買いに行く。ここから図らずも「男の隠れ家」づくりが始まるのだ。カーペットや本棚を買い、高価なオーディオセットも迷った末に買ってしまう。何せマンションを買おうと思っていた資金があるのだ。そんな中、ソファだけはなかなか気に入ったものが見つからないのだが、ついに中古の家具店での「出逢い」を経てソファも手に入れた。
男なら誰でも自分の好きなものに囲まれた自分だけの部屋を持ちたいと思うだろう(女性もそうか)。主人公が金に糸目をつけずに本棚やオーディオセットを買い揃えていく様は読んでいて非常に羨ましかった。私も自分の部屋もどきをプチ改装して自分仕様にしてあるのだが、この程度では物足りない。私の夢は一人掛けのソファを買うことなのだ(一人掛けのソファってなんだか贅沢だよね)。当然革製で固すぎず柔らかすぎずのものがいいね。サイドテーブルを置いて、エスプレッソを飲みながら本を読んだり、ワインを飲みながらDVDを観たりするのだ。まあ、夢かね。
主人公の部屋はあまりに居心地がいいので会社の同僚たちの溜まり場と化し、その友人の一人がこう漏らす。
「おれ、思うんだけど、男が自分の部屋を持てる時期って、金のない独身生活時代までじゃないか。でもな、本当に欲しいのは三十を過ぎてからなんだよな。CDやDVDならいくらでも買える。オーディオセットも高いけどなんとかなる。けれどそのときは自分の部屋がない・・・」
この辺のリアルなセリフは奥田英朗の真骨頂だ。最後は別居中の奥さんと仲直りしそうな雰囲気で終わる。すべての短篇がほのぼのとしたラストではないが、ほのぼの系のラストが多い。読んでいて、ああ家っていいな、家族っていいなと思わせてくれる。奥田英朗らしい短篇集で、読後の満足感はかなり高いね。
k@tu hatena blog
紙の本
家族って一番近しい他人?
2007/07/10 00:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さあちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
さらっと読めちゃう6つの短編集。ネットオークションにはまる主婦、主夫生活に楽しみを見いだす営業マン、別居をきっかけに自分の趣味にどっぷりつかる夫、若い男性とのほんのささやかな接触で夢想にふける妻、思いついたらすぐ転職してしまう夫に振り回される妻、妻のロハスな生活についていけない夫。どこの家でもありそうな話である。それをユーモアたっぶりに描いている。読後韓もとてもいい・どの作品も前向きな結末なので明るい気分になる。
考えてみれば夫婦って不思議。最も近しいのに何考えているんだかわかんなくなる。他人のはずなのにお互いに知り尽くしたつもりでいる。空気みたいな存在だなんて誉めてるのかけなしているのかわかんない事を平気で行ったりする。一緒に暮らしていても観ている方向がだんだんずれてくる。
夫婦にも定期点検が必要じゃないかな。修理できるとこ、できないとこ、リニューアルするとこ、保存すべきとこまず状態をきちんと把握しとかなくちゃね。以心伝心言わなくてもわかるなんて思っちゃダメ。わかってるだろうと思っていることでもちゃんと相手に伝えなきゃだめなんだなあとこの作品を読んで感じた。
家族って時に鬱陶しくて腹が立ってイライラするけどでもやっぱり自分の拠り所なんだなあ。