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漫画映画の志 『やぶにらみの暴君』と『王と鳥』 みんなのレビュー

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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.2

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紙の本

幼い日の夏休み、たまに空いた午前中。クーラーなどない頃。

2007/08/07 07:09

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る

なんとなくつけた足付きTVにはいつも、古めかしい長編アニメが流れて居たような気がする。そのうち誰かが呼びに来て。そそくさとTVを消して、ビー玉かなんかしていたような。そんな長編アニメの中でも記憶に残っているのは「西遊記」、「白蛇伝」、そして「太陽の王子ホルス」。正確な題名を知り、みんな東映動画の長編アニメだ、などということを知るのは随分あとのこと。ましてや「ホルス」が宮崎駿・高畑勲コンビの最初の傑作という認識など持つわけもなく。
 「母を訪ねて三千里」、「アルプスの少女ハイジ」、「赤毛のアン」(ともにカルピス提供のTVアニメ)から「カリオストロの城」至る作品群を宮崎氏ともに作り上げ、映画「じゃりんこチエ」において西川のりお氏の声優起用、「火垂るの墓」での戦慄すべき演出、「となりのヤマダくん」という4コママンガの劇場映画化という一種異様な取り組みを見せ、ジブリに属しつつも、宮崎氏の路線とは一線を画した活動を続ける、高畑勲氏。 本書はそのアニメ演出家としての出発点を与え、現在に至る宮崎氏とのスタンスとの違いを生み出した、フランスのアニメ映画「やぶにらみの暴君」(1953年:日本公開1955年・現在は観ることができない)、そして「やぶにらみの暴君」バージョンに納得できず、裁判に訴えてまで版権を取り戻し、30年後「王と鳥」(1985年日本では限定公開:2006年ジブリにより再公開:DVD入手可能)という別バージョンを公開した詩人・脚本家ジャック・プレヴェール氏(シャンソン「枯葉」作詞者、映画「天井桟敷の人々」脚本担当:高畑氏は彼の詩集「ことばたち」(ぴあ)を自ら訳出している)とアニメーター、ポール・グリモー氏の、これら二つの「作品」をめぐる苦闘と、この二つの作品の制作過程・比較・作品分析からなる。
 思い切りつづめて言えば、高畑氏がこの二人の試みに賭けているのは、どのようなテーマであれ「観客」を画面:スクリーンに吸い込み、主人公の視点と一体化させ、陶酔させる「同一化手法」(アニメのみならず、現代娯楽映画の基本ともいる手法)とは、全く異なる、観客を画面:スクリーンから突き放し、観客自身の頭で考えさせるアニメ:映画の可能性である。近年松たか子主演:串田和美演出で上演されることがあった(「セツアンの善人」、「コーカサスの白墨の輪」)1920~50年代のドイツ(→東ドイツ)の劇作家、ベルトルト・ブレヒトが「異化」効果で目指した方向の復権である。
 観客を感動させて「すっきりさせる」のではなく、逆に「もやもや」を与えて新たな思考を刺激すること。アニメに限らず、全ての商業作品にはあまりにも困難な課題である。
 たとえば「千と千尋の神隠し」における「カオナシ」を私たちはどう捉えたか。ある一定数の人々はそこに自らの有り様を観てしまっただろう。しかし「カオナシ」は物語の中で解決されてしまう。人々は電車に乗って安心して家路に着く。宮崎氏がもっとも「観客」に対しシビアな時、高畑氏はそのシビアさが映画の中で完結してしまうことに耐えられない。
 はっきり言えば「アナクロ」であり。「頑固」であり。
 しかし、プレヴェール氏とグリモー氏の「頑固」が30年かけて造りあげた「王と鳥」が、メッセージ性において「やぶにらみの暴君」を超えていることを賞賛しつつ、作品的にはやはり後者の方が優れていることを、プロとしての細かい分析描写を経て高畑氏は本書で描き出す。
 さまざまな反論を呼んでしまうであろう本書。高畑氏が作品を通してさらなる答えを述べる日をただ待つのみである。

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