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紙の本
予想していた以上に面白かったんですが、どうも母親の人物設定がイマイチだったのと、犯人が簡単に分かるので★四つ。でも、この主人公は好きですよ
2007/08/08 19:26
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
長い間、勘違いしていました。「永井すゑみ」さんだと思っていたんです。1996年に第1回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞したとき『枯れ蔵』を読んで以来のことですから10年間、間違っていました。理由、ですか。勿論、字の形が一番ですが、「するみ」っていうのが名前とは思えなかったこともあります。だから、読みにくいけど「すゑみ」。
それともう一つ、『枯れ蔵』が面白くなかったんです。期待し過ぎもあったんでしょう。だって、第1回新潮ミステリー倶楽部賞なんですから、凄い作品だろうって思い込んじゃった。で、裏切られた反動でその後、全く読まなかった。でも書店や図書館では彼女の本が着実に数を増やしているのを見てはいたんです。
ただ、手にはしないから、いつまでたっても私にとっては「永井すゑみ」のまま。柳広司さんの時にもかきましたが、永井も装丁には恵まれていません。少なくとも『枯れ蔵』以降、今回の『カカオ80%の夏』までの間、物理的な本としての魅力で読者に訴えたことは一度としてなかったはずです。でも今回は違いました。
そう、私が現在デザインをもっとも評価している理論社の理論社のミステリーYA!で本がでたんですから。柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』の時に書いた言葉がそのまま当て嵌まりますので、我田引水というか我文引用してしまいます
「でも、今回は得しました、柳さん。なぜって、理論社のミステリーYA!は、シリーズを通じてのブックデザインが抜群なわけです。佃二葉の装画も、谷山彩子のマークイラストレーションも、丸尾靖子のブックデザインも文句なしなわけです。しかもタイトルがね、日本人が無条件で反応する「漱石」「猫」でしょ。今までの三つの平凡のうち、二つがレベルアップしたわけです。」
違うのは、装画が松尾たいこ、であることとブックデザインが森先正ということ。マークイラストレーションは谷山彩子のまま。それにタイトル「カカオ80%」っていうのが時代をうまく拾っています。つまり装幀、タイトルが魅力的で、著者名のフツーさを見事にカバーしている。ま、ミステリーYA!でなかったら、手を出さなかったことは確かではあるんですが。
で、書いておきます。面白かった。見直した、と言っていい。もう名前を間違えることもありません。あまりによかったので、思わず娘二人にまわしてしまったほどです。ただし、ミステリとしては平凡。犯人、出てきただけでわかっちゃうし。じゃ、なにがいいか。勿論、主人公です。
主人公は私は三浦凪、17歳。一応、英文科志望の高校二年生。好きなものは、カカオ80%のチョコレートとミステリー。代官山近くのマンションで暮らしています。母子家庭ですが、父親は生きていて、アメリカでIT関連の仕事をしています。家庭崩壊の原因の一端は、父親のアメリカ出張ですが、その大半は母親の他人への、特に男依存症にあることは主人公もよく知っています。
ここでついでに書いておけば、そこらあたりはリアリティを感じません。ましてその母親が大学教授、なんていうのは全く理解できません。むしろ慰謝料をもらって遊んで暮らしている、くらいで十分だったと思いますし、ここまで他人に依存する、っていうのが「アリエネー」って印象を与えます。
で、私がよく出入をしているのが代官山近くにある、昼はカフェ、夜はアルコールをメインに出す店〈ズィード〉で、マスターは29歳の国府真之介です。24,5歳の時から、叔父から店を任されているということになっています。いいのは、真之介と主人公の距離感です。YA本では、ここが安直にベタベタしてしまうのですが、それがありません。ま、後半はそれに近くなるのですが、許容範囲。
で、失踪したのが笠原雪絵、私と同じM大学付属高校の二年生です。彼女は福祉学科志望、性格は地味ですが、将来を見据えて地道に勉強をしています。母親と幾分痴呆気味の祖父との三人暮らしですが、雪絵の失踪は、彼女の母親からの一方的な決め付けから凪に告げられます。こういった親は、現実にいます。ボケ始めたおじいちゃんも・・
で、その無礼な母親にお願いされたかたちで、凪の探偵が始るのですが、そこで出会う人たちがこれまた素適です。一人が、ブログで雪絵SNOWYとやりとりをしていた『MIRI'sルーム』の高校二年生のミリ、モデルをしています。もう一人が『お嬢様学校に通う、わたし的なセレブな日常』というHPをもっている本物のお嬢様、紀穂子です。
話の核となる凪、ミリ、紀穂子、そして真之介の造形が、無理がなくてとてもいい。理想がかなり入っていても、その程度が自然です。設定に無理のある凪の母親のマイナスをカバーできる、十分に魅力的な登場人物たちのおかげで、ありきたりのYAものをクリアしています。ま、個人的には、高校二年生っていうよりは大学一年生のほうがしっくりくるかな、と思いますけど。
それから、ディヴァーのリンカーン・ライム・シリーズについてたびたび言及がありますが、あんなに詰まらない夜郎自大ミステリのどこがいいんだ、今時の女性はああいった尊大な男は嫌いだぞ、なんて異論反論オブジェクション。でも、ライムと依存母が束になっても凪、ミリ、紀穂子、真之介には敵いません。謎は陳腐でも、人物で読ませるミステリの好例といっていいでしょう。
最後に、カバー折り返しの紹介文と目次です。
「私は三浦凪、17歳。
好きなものは、カカオ80%のチョコレートと
ミステリー。
苦手なことは、群れることと甘えること。
夏休みに、ラスメートの雪絵が、
書き置きを残して姿を消した。
おとなしくて、ボランティアに打ち込む
マジメな雪絵が、
いったいどうして・・・・・・?
カレでもできたのか?
気乗りはしないけれど、私は調査に乗り出した。
ひと夏のきらきらした瞬間を封じ込めた、
おしゃれなハードボイルド・ミステリー。」
プロローグ
一日目
二日目
三日目
四日目
五日目
六日目
エピローグ
あとがき
紙の本
女子高生、一夏のハードボイルド
2008/04/12 21:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書、理論社が最近立ち上げたシリーズ「ミステリーYA!」の中の業書です。
一応、YA(ヤングアダルト)向けですが、
大人も楽しめる好作品に仕上がっていました。
主人公の三浦凪は友人の雪絵に誘われて、洋服を買いに行きます。
マジメで地味だった雪絵がなにかちょっと変で、
どうやら雪絵はイメチェンしたいみたい。
すると、雪絵が行方不明に、、、。
凪は、友人探しに向かうのですが、、、。
YAや、児童書もののミステリってあんまり悪というか、犯罪を
シリアスに且つ大きくしてしまうと子どもや、大人でない学生たちが
扱えなくなるので、読者や、編集者のもっと盛り上げてのインフレに対し
、着地点なんかが難しいなぁなんて勝手に読者側で要らぬ心配をしてしまうのですが、
本作は、大丈夫、丁度いいところに設定してあり
謎解きもよく出来ていて、かつ解決も丁度いいと
ほんとよく出来た作品です。
簡単に本書を説明すると、三浦凪を主人公にいや、語り手にしたハードボイルドでして、サラ・パレツキーのウォシャウスキー・シリーズを女子高校生に
もってきた感じです。
(女性のHBってこれぐらいしか思い浮かばなくて、、、。)
で、HBなので、語り手の趣味思考センスなんかもいっぱい語られていまして
好きなものは、カカオ80%のチョコにJ・ディーヴァーのライム・シリーズ
となっていて、ミステリ・ファンにはにやりとさせられます。
夏っていつもと違うことをやるんだよという書かれている箇所があり
そういえばそうだなぁ、、と。
割と自然でおしゃれな女性いや女子学生HBです。
広く皆さんにオススメできる好作品です。