投稿元:
レビューを見る
人間関係においてハラスメントという状況がなぜ起きるのか。心理学により分析し、ハラスメントが拡大していくメカニズムを解説している。
投稿元:
レビューを見る
読後のモヤモヤ感をなかなか取り去ることができません。本書で扱われているハラスメントが私の思考よりもはるかに広範囲にわたってしかも学際的に展開されている点があり、最初のうちはその新しい視点に新鮮味や驚きを感じる部分もありました。ですが、そのうちに既視感が立ち現れ始めました。既にどこかで説明されていて、私も理解していた内容が「ハラスメント」という言葉で焼きなおされているだけなのではないか?とさえ思えてしまいました。
この本の冒頭部分を担当している安冨氏のハラスメントを構造的に分析する視点、さらには人格形成にあたり自己と外部環境がどのような関係性をもって影響しあい、生成されていくのかを解説する部分にはなるほどと思わせるところもあります。でも、一方でそれを受けて本條氏が解説する「魂」と「インターフェイス」という単語の定義をうけた解説が、とても人間の心象を機械的に分割、処理しているようにも感じられ、本当に自分もそうなのかな?と受け入れるだけの素養がないゆえに彼の断定を拒否したくなる気持ちにもなるのです。
機械的に分析された人のこころを構成する「魂」(人間が生まれたときから持っている本来的な運動状態のこと)と「インターフェイス」(受信したメッセージを自分の理解できる形に変換し、自分の送りたいメッセージを相手に分かる形に変換する装置)に外界が加わることで人間が生きていく環境が出来上がるとして、それぞれが悪化するとどのような行動が生まれるかをパターン化した第5章のあたりは、理論上の説明だけで、現実世界に沿った解説ではないとも思えました。
本が終盤に向かうにつれて、世の中で起きていることの諸問題(戦争や環境破壊など)にはハラスメントの要素が見て取れるとの指摘から、ハラスメントへの対処法を身につけた人間がこうした問題を捉え、分析していくことで解決できていくという論理展開もすごく飛躍的な感じを受けました。冒頭で安冨氏が解説した理論が雲散霧消していくような感覚を覚えました。
そして、万能薬のように取り扱われるハラスメント対策も、「怒り」による被害者からの脱出と「謝罪」による加害者からの脱出であるとの語られるだけです。それまで自己の心理状態と外部環境との間で起こることを指摘しておきながら、世界的な問題の解決を論じる際には自己の内的なものにばかり焦点が定められているようにも感じられるのです。
冒頭の理論や対人関係を構築するコミュニケーションがどのようなプロセスを経て生成されるかを解説したところはためになりましたが、それが現実世界に応用可能かどうかは今後さらなる研究が必要なもの、本書はその中間報告であるようにも思えました。
投稿元:
レビューを見る
タイトルと内容が日本語としてはマッチしていない気がするが、コミュニケーションにおけるharassmentという意味です。
私にとっては、対人関係における今まで目に見えなかった不快な謎、仕組みがクリアになった画期的な指摘でした。
投稿元:
レビューを見る
ここで取り上げられる「ハラスメント」の概念は一般的なそれよりもかなり広範囲なもの。単なる「嫌がらせ」ではない。
本書は「ハラスメント」の構造を解き明かしつつ、人間の「学習」機能を解明してみせる。人間の情動・感情を理性的に見詰める視点は面白いが、記述が曖昧な部分もある。ただ、解明する対象の性格上、これ以上の厳密な記述はかえって理解を難しくするかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
ひとのコミュニケーションに、ハラスメントの悪魔はいつでも忍び込む。
気鋭の研究者による画期的な論考。
[ 目次 ]
第1章 ハラスメントとは何か
第2章 ハラスメントの伝播
第3章 フィードバックと学習
第4章 愛情の役割
第5章 感情の衰退
第6章 ハラスメントの構造
第7章 呪縛からの脱出
第8章 呪縛なき秩序
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
安冨歩と本條晴一郎のハラスメントは連鎖するを読みました。「しつけ」「教育」という呪縛、というサブタイトルがついていました。帯には、ひとのコミュニケーションに、ハラスメントの悪魔はいつでも忍び込む、と書かれていました。この本ではハラスメントとは、相手とのコミュニケーションを一方的に遮断し、罪悪感を抱かせた上、「おれの言うとおりにしてればいいんだよ」「私の命令に従っていればいいのよ」と支配しようとすること、と定義されています。ハラスメントとはどのようなものかを考察した上で、人間のコミュニケーションにはいつでもハラスメントが発生してしまう可能性がある、と主張しています。例えば、(1)健康な状態とは異なる「正常な状態」という精神病質の状態がある。(2)子供に暴力とうわべだけの愛情という矛盾したハラスメント(「闇教育」と呼ばれる)を仕掛けることにより、子供の自然な学習能力が死んでしまう。(3)ハラスメントの現場では第三者により、加害者も被害者もどっちもどっち、というような主張をされることがあるが、それは全くの誤りであり、それ自体がセカンドハラスメントとなっている。(4)戦前の、夫や子供をお国のために死なせろ、という教育はハラスメントの典型である。(5)ハラスメントを受けた人は、抵抗できないと魂が死んでしまうので、その人が新たにハラスメントを仕掛けてしまうという、吸血鬼が増殖するように魂の死んだ人が増えていく状況になる。(6)ハラスメントで事件がおきたときは、加害者と被害者とは別にハラスメントを仕掛けている真犯人がいることがある。などという結構過激な主張が繰り広げられています。私の感想としては、結構荒削りだけどこの主張は正鵠を射ているのではないかなあ、というものです。何度か読んでみて、その主張が本当に正しいかどうか考えてみたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
図書館から借りて読んだ本でしたが、買いですね。これは買い!手元に置いて折に触れ自分の在り様や世間との関わりを確認し、自戒し、反省し、向上していくためのとても有意義な指南書です。とりあえず明日早速本屋に足を運びたくなりました。
この本が本の中であげられている事例のすべてが完璧に正しいとも思いませんが、それでもかなりの点で、普段感じていることの多くが謎解きのように明かされていて興味深いです。
投稿元:
レビューを見る
ハラスメントは伝播する。ハラスメントはハラスメントを生み出す力を持っている。この悪魔の伝播を止めることが何よりも大切なことである。ハラスメントとは「人格に対する攻撃」「人格に対する攻撃に気づいてはいけないという命令」の2つの合わせ技であり…
投稿元:
レビューを見る
自分の中の前提が狭すぎたというか、自分がとらえることのできる一面(と少し)しか理解できていなかったのだと気づいたら、そりゃもう、目からウロコというか、何かが崩れ落ちました。
今も昔も、愛されていないと感じている子供は多いと思います。
私の中では、子供を愛していない親は稀であって、「多くは愛し方を知らない」または「愛情の示し方と受け取り方に問題があって、伝わっていない」のだと考えていました。
だから、親子関係に問題のある知り合いのお子さんには、機会があれば「愛しているけれどうまく伝わっていない」と伝えてきたのです。
が。
「これをすれば(しなければ)お前を罰する」というメッセージと、「これは罰ではないから、そのように感じる悪いお前を罰する」という二重の抑圧のメッセージというものを子供は浴びているというのです。
ここに「親が愛してくれないのは、自分がいけないからだ。もっとがんばれば愛される」と子供が思う落とし穴につながると。
子供がそう思うのは、今までも理解できていたし、自分もそうでした。
うまく書けないのですが、今まで私が問題があるととらえていた親子より、実はもっと問題のなさそうな親子に大きな問題があると気づかされたのです。
あぁ、だから「自分は普通の家庭に育ったので、インナーチャイルドなどない(キッパリ)」と言える大人が育つのだ。とわかりました。
本当は「愛していない」のに、「あなたのためを思って」と装って「これをすれば(しなければ)お前を罰する」といい、「愛していない」ことを見抜かれぬように「これは罰ではないから、そのように感じる悪いお前を罰する」という二重の抑圧のメッセージを発するというのです。
私自身も、幼少のころには「姉の方が愛されているに違いない」という妄想でがんばったり投げ出したりいろいろありました。
幸いなことに、両親はこのような二重の抑圧のメッセージを発する人でもなかったし、「自分」というものをしっかり持つことができたので、そういう感覚と、少し知っていると思った世間のことしか認識できていませんでした。
コドモを愛していない親は(ほとんど)いないという妄想を抱いていた私には、本当に衝撃的でした。
『星の王子様』が、ハラスメントについての物語だったとは・・・
感じたことを、自分の感覚で受け入れるということの大切さを再確認しました。
そして、そもそも自分の感覚を信じることができなかった人たちの多さ・理由を理解できました。
ずっと疑問だったんです。
幸い、私自自身はハラスメント構造にはまっていないし、自分の感覚を信じ切ることができる状況です。
それで、この衝撃度でしたから、もし、ハラスメント構造にはまっていたり、自分の感覚を遮断しているような方は、『生きる技法』から読まれることをオススメします。
この本は、ネットの書店では今売っていない(2007年初版)ようなので、あしからず。
入手しやすいのも、『生きる技法』ですしね。
自分を愛せない人間が、たとえコドモでも愛せるわけがないのだ。
と思ったら、なるほど、そういうことだったのか。
とすっきりしました。
無条件の愛、というのは、まず自分が自分に対して与えられるものでしたね。
あ〜すっきり。
自分を愛していないことを、だからコドモでさえも愛せないことを、気取られないために針を真綿にくるむのか。
真綿にくるんだ針を受け取ったコドモだった大人でも、針だったと認識できれば、大きな一歩が踏み出せますよ。
CHhomでもかなり力をいれてインナーチャイルド癒やし(解放)をしていますが、本当に重要なんですね。
真綿にくるまれている針、ひょっとしてまだ持っているのかも。
今度はそういう観点でインナーチャイルド癒やしをやってみようと思います。
投稿元:
レビューを見る
新刊、古書でも入手困難な状況で図書館にて借りる。
内容は結構高度で読むスピードは当然スローになるが、よく読むとなるほどなぁと思える書き方です。
本條さんの書いてる章がちょっと文章についていくのに苦労した。
『複雑さを生きる』や『生きるための論語』どう繋がっていくかをこれから核にしようと思うが、再読の為に古書でも発見したら是非購入したい。
ちなみに重版の予定はないとのことです。
投稿元:
レビューを見る
表記がカタカナの文字が多く、理解しにくかった。もっと分かりやすく書いてくれたら、著者達の思いも伝わるのか?かなり限定された読者相手の内容。
投稿元:
レビューを見る
モラルハラスメントのメカニズムから、モラルハラスメントにおける加害者、被害者、被害者的加害者などの特徴や対処方法まで著されています。途中、概念の理解が難しいですが、実用的な本かなって。
投稿元:
レビューを見る
やけに生々しい「大学教授」ハラスメント被害描写に心を痛めていたら、「花火に行けなかった幼児」から激流! 速い速い、ついてけません先生ー!な、滝下りのような本でした。この本を読むと、現代日本にハラスメントに毒されていない場所なんかないじゃん、もはやスタンダードじゃん、とわかり、絶望できる。でも、処方箋もちゃんとあり、激流の終わりには論語とガンディーです。一人一人でやらねばな、という希望がもてる(2019-09-18)
投稿元:
レビューを見る
ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛。安冨歩先生と本條晴一郎先生の著書。セクハラ、モラハラ、パワハラ、アカハラ、マタハラと、ハラスメントだらけの日本社会。でもハラスメントは連鎖するもので、ハラスメントの被害者が同じようなハラスメントの被害を繰り返し受けることもあれば、今度はハラスメントの加害者になってしまうことだってある。ハラスメントなんてどこで起きているの?実際にそう思っている人は多いし、そう思える人は幸せなのかも。