投稿元:
レビューを見る
成長物語の反対の転落物語という言い方があるとすればそんな感じ。しぶとく一代で成り上がった親父さんと、何もかもを捨てていく息子たちの対比。武器や移動手段を獲得するほど破滅に近づいていき、「下りる」機会を振り捨てて大渦の中心に自ら飛び込んでいくような、相当に苛烈だけど、最初から最後までこれ以外ないというような運びの見事さ。
これにくらべると『天使』や『雲雀』はまだ上つ方の話のようにも思え、ここではそんな優雅さもほとんどなく、それだけに、廃屋に響くピアノの音や土の上に書かれた飛行機の設計図が哀切。
ところどころにある方言の会話が、もしかすると作者の郷里の言葉ではないかと思うけど、すごい生命力。
投稿元:
レビューを見る
昼の食事中に本を読む習慣なんですが。
これは読んじゃいけないです。
いえ、ご飯中にさえ読まなければいいんです。読んでてしんどかった。でも読み進むのはしんどくなかった。
投稿元:
レビューを見る
●はー、ほへー、なんてこったい、とか言いながら読了。
●舞台は20世紀初頭、ロマノフ朝の弱体化が急速に進む中、社会主義勢力が勃興し、対外的には第1次世界大戦に参戦したことにより、よりいっそうの社会的混乱の下にあるロシア。
ちょっと要領がよくて賢くて、贅沢ざんまいに育った地主の次男坊“ぼく”の目を通し、その混乱が映し出されてゆく。
突き放した文体で、鮮やかに描写される冷酷非常きわまりない内容に心胆寒からしめられた、とか書くと、それっぽいですな。
実際、ほんとに整った小説です。
昔ながらの世界文学全集に、しれっと1巻載ってそうなくらい端整な筆致だし。
・・・でもねー、これ、ほんとは×ウス・パークみたいな話なんじゃねえの?(笑)
いえ観たことないんですけどねサウ×・パーク。あれ、すげえロクでもないガキどもが、とんでもない悪さばっかしする話なんでしょ?
したら、この小説と一緒じゃん。断言。←なんて乱暴な・・・・・。
特に後半、いろいろやらかした後、逃亡生活に突入した“ぼく”と、ドイツ人少年兵(?)の鬼畜系クソ餓鬼ウルリヒと、農奴根性満点の卑怯卑屈な少年フェディコの極悪残虐三人旅のパートが、そんなイメージです。
いやー、とってもすがすがしいスタンド・バイ・ミー☆ だよねー。(´∇`)←嘘つけや。
●アゴタ・クリストフの『悪童日記』あたりが好きな人は、読んでみてもよいかも。
ただし、アレよりもなお救いがないっつか極悪っつか倫理観に欠けるっつか、ときに実に普通の人間らしい反応だよなあ、と思う箇所もあるけど、全体的にはさすが『ミノタウロス』を名乗るだけのことはある。
なお、ミノタウロスは牛頭人身の怪物だが、この場合は人面獣心て四字熟語がより適合する感じ。さてはて。
投稿元:
レビューを見る
面白い読み物が読みたいなーと思ったら、文芸書の新刊コーナーにおいてあったので買ってみた。バルタザールの遍歴は面白かったし。ついでに雲雀も買ってみた。
でもこれ、五月の新刊なんですね。
投稿元:
レビューを見る
読み始めたらやめられない止まらない。つねに笑ったみたいな顔で読んでしまった。( ゚∀゚)o彡゜ウルリヒ!ウルリヒ!
投稿元:
レビューを見る
帯に、「圧倒的筆力、などというありきたりな賛辞は当たらない。これを現代の日本人が著したという事実が、すでに事件だ」と書いてありましたが、確かにそんな感じはするかも。なんか、外国の昔の文学を世でいる感じはしなくもないかも。 ただ、やっぱり、どこかしら、読んでいて、囲炉裏端を想像するというか、日本男子的なところもある気がしますがね。 でも、日本人が書いたのかぁ、と、確かに後でしみじみと思わされる感はありました。
投稿元:
レビューを見る
主人公はロシア農村地帯に生まれた次男である。一文無しのどん百姓の小倅と云う訳ではない。ある程度の知能を有するが、自らを「本質的にけだもの」だと思っていた。彼はロシア革命後の混乱と云う迷宮に放たれる。これを虚無と呼ぶのだろうか。いずれにせよ、驚くべき作品である。
投稿元:
レビューを見る
ダヴィンチのオススメ20世紀初頭、戦争に巻き込まれていくロシア。人を殺すことによって生き延びていく時代に生きる猛獣と化した、若者を描いた作品。最初はただただ冗長な話しだなぁと思ってたけど、徐々に面白みが分かってきた。戦争なんて理不尽なものに巻き込まれた若者たちのロードムービー的な話であり、彼らの本能的な生き方に自然と引き込まれていった。面白いのかどうなのか判断はつかないけど、読んで失敗はしてないと思う。初めての感覚かも。
投稿元:
レビューを見る
ロシア人が書いたみたい・・・でも日本人が書いたのね。
お父さんの部分は、面白かったけど、ちょっと飽きちゃた・・
投稿元:
レビューを見る
久々におんもたい読後感。やっと死んでくれたか。ある意味それはオレ自身の死なのだ。
なのだ、じゃねえ。
投稿元:
レビューを見る
『本の雑誌社が選ぶ2007年ベスト10』第1位。
2008年4月26日(土)読了。
2008−42。
投稿元:
レビューを見る
見事にけだもの。しかし圧倒的に「粋」。たいていの書き手が寸止め、もしくはぼかしてしまうところを躊躇なく手加減なしでどんどんすがすがしいまでに書いて、書ききるのが佐藤流。胸がスカッとしないかわりに陰惨さも薄暗さも感じない。ラストはただ呆然とする。憎いくらい佐藤ワールド。アレクサンドル兄が好きです。とくに顔面を削りとられた後の佇まいが。
投稿元:
レビューを見る
暴力の話。
そこらのハードボイルドが潤いたっぷりに思えるほどどこまでも乾いている。
主人公が最初から最後まで無目的で、物語も無目的に始まって終わる。
投稿元:
レビューを見る
伯父のスラヴの大義は、落第生よりは優等生と、病弱な奴よりは身体強健な人間を、次男よりは長男を、子沢山の家の末っ子よりは一人息子を、つまりはより貴重な、より愛される、より有用な人間を犠牲として求めていた。伯父にとっての国家はいつの間にか、所有を保証したり、通貨を流通させたり、詐欺師や強盗を捕まえてぶち込んだり、時々は外国から土地を分捕ったりする統治の機関ではなく、信者たちが喜んで我が子を車輪の下に投げ込むインドの女神の山車のようなものに化けていたのだ。(p339
革命前後のウクライナ。成り上がり地主の息子「ぼく」は、土地を追われ、無政府状態、無法地帯の中ですさまじい暴力と強奪にまみれながら生き抜こうとして…、という全然私好みのお話ではないのだが、佐藤亜紀さん、いつもながら日本人の、同世代の、しかも女性の著者がこれを書いているというだけで、読みながら驚嘆し続け感服せざるを得ない。「女はぶん殴るに限る」って、石川達三ですか。一人称で書いてきて、最後の一ページの描写にはしびれる。
投稿元:
レビューを見る
+ + +
すごく読みたいんだけど「これを読むとしばらく新作がないんだよねー‥」なんて思うとなかなか手に出来ない。。。(あほ)
はい。好物は最後までとっておくタイプなんです‥。
2008.06.17.