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みんなのレビュー227件

みんなの評価3.8

評価内訳

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紙の本

舞城王太郎、西尾維新、そして桜庭一樹。21世紀初頭を飾るアヴァンギャルド・エンタメ三羽鴉。でも三人の中で桜庭だけが違っている。嘘だと思うなら出版社のwebでこの書名を検索して下さい。驚きます、一部の人は

2007/10/02 20:11

6人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

桜庭体験二冊目の私ですが、この人の登場は事件じゃないでしょうか。もしかして日本の21世紀初頭を代表する作家の登場じゃないのか、なんて思うんです。それはこの後に出た『桜庭一樹読書日記』を読んで、私の中で殆ど確信にまでなってしまったことですが、それを決定付ける作品、と言っていいと思います。

ただし、事情に疎い私は、いつもの伝でこの本、桜庭が薦める本の案内だと思ったんですね。要するに読書エッセイ。ま、それだと『桜庭一樹読書日記』になっちゃうんですが、この本の出版案内を見て、そう思い込んでしまった。装画 天羽間ソラノ、装幀 新潮社装幀室のブックデザインも大人しく上品で自分の先入観を全く修正できず、読み出して、???となりました。

ただし、嬉しい誤算です。特に娘二人がミッション系の女子校に通っていた我が家には、ピッタリ。しかもです、扱う時間のスパンが生半可ではありません。現在から10年後の近未来を含む学園の約100年の歴史です。学園ものによくある時代から切り離されたお話ではありません。人物の行動の背景に大きな時代の流れを感じさせる、雄大な物語なのです。

聖マリアナ学園は東京、山の手に広々とした敷地を誇る、伝統ある女学校です。幼稚舎から高等部までが同じ敷地内にある校舎で学び、大学だけが別校舎となります。学園風景には東京を感じさせる部分はあまりありませんが、五つの話び登場する様々な女学生の行動はまさに都会のものです。

ちなみに、この学園の沿革は十九世紀、パリに設立された修道会を母体とし、一九一九年に日本に派遣された修道女聖マリアナによって建てられたとあります。これ自体が話のなかで謎として提示されていきます。何々事件というタイトルのお話が二つあるように、ミステリ仕立てではありますが、それはあくまで味付け。基本は乙女心です。

どの話も好きですが、私がもっとも楽しんだのは最後の「ハビトゥス&プラティーク」。聖マリアナ学園のOGでも五本の指に入る著名人、五十年近く前に卒業し、東大に現役合格し、大蔵官僚を経ていまは保守党議員を務める女傑、妹尾アザミ議員がいいです。知らない間に、醜かったアヒルが白鳥になってしまったかのような颯爽とした姿は、格好いいとしかいいようがありません。

先ほど、時代を感じると書きましたが、中心にいるのはあくまで少女たちです。桜庭は『桜庭一樹読書日記』の中で繰り返し自分のことを不良学生のように書きますが、このお話に登場する読書クラブの面々は、空手の技こそ見せませんし、自分のことを「俺」ではなく「ぼく」と言いますが、いずれも彼女の分身といってもいいくらいでしょう。

大胆でありかつ繊細、マジメでありながらユーモラス、反抗的でいながら従順、育ちのよさを漂わせながら庶民的。固まりきらない若さゆえの混沌が、事件を巻き起こし、収束させていきます。五つの話はどれも痛快で、自然でありながら奇妙。山田風太郎『天国荘奇談』を連想させます。読みながら、少女たちの行動にピッタリの言葉を思い出しました。「風林火山」がそれです。それがどういう意味かは読んで確かめてください。

学園100年の歴史は、1969年のクラブ誌の文から始まりますが、次は1960年、次は1990年と戻ったり、ジャンプしたりしながら悠然と流れていきます。作品はすべて雑誌掲載ではなく書き下ろしもあります。執筆の状況は『読書日記』にも出てくるのであわせて読めば美味しさ二倍です。各話の初出、関連作品、内容、執筆者などを簡単に書いておきます。

・烏丸紅子恋愛事件 (「小説新潮」2006年10月号):エドモン・ロスタン著『シラノ・ド・ベルジュラック』。お嬢様学校の高等部に黒い風のように現れた美少女・烏丸紅子が最後に辿り着いたのは、野心にもえるアザミがいる読書クラブ・・・。1969年度 読書クラブ誌 文責〈消しゴムの弾丸〉

・聖女マリアナ消失事件 (書き下ろし):作者不詳『哲学的福音南瓜書』。1919年に設立された学園の創立者である修道女聖マリアナ。1959年の冬に姿を消した彼女の真実とは・・・。1960年度 読書クラブ誌 文責〈両性具有のどぶ鼠〉

・奇妙な旅人 (書き下ろし):シェイクスピア著『マクベス』。バブル時代に大量に入園してきた成金の娘たちは学園を自分たちの色に塗り替えようとします。貴族的な両家の子女が支配する学園に起きたクーデター。戦いで敗れた少女が逃れこんだのは・・・。1990年度 読書クラブ誌 文責〈桃色扇子〉

・一番星 (書き下ろし):ホーソン著『緋文字』。学園を席捲した伝説のロック・スター、山口十五夜は、読書クラブでも最も内気で、夢見がちの少女でした。彼女を変身させたのは・・・。2009年度 読書クラブ誌 文責〈馬の首のハリボテ〉

・ハビトゥス&プラティーク (「小説新潮」2006年10月号):バロネス・オルツィ著『紅はこべ』。一人の二年生しかいなくなってしまった読書クラブ。長い歴史を誇る部室も建物の老朽化を受けて立ち入り禁止。男女共学に学園が変わる前の女子校最後の年に現れた「ブーゲンビリアの君」・・・。2019年度 読書クラブ誌 文責〈ブリキの涙〉

最後になりますが、新潮社のWebでこの本を検索してみてください。桜庭に寄せる出版界の期待の大きさがよくわかります。書店員さんたちの熱い支持もですが、嶽本野ばらとの時に近づき時に離れるという絶妙な距離をとった対談も、そしてなにより新宿あたりの書店に夕方出没するという桜庭の顔写真までバッチリ出ています。ゲッ、桜庭一樹ってオ○○だったんだ・・・嬉しい!

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2007/07/13 11:27

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2007/08/30 20:21

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