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子供を産むってどういうことなんだろうと考えさせられました。欲しいけどできないというのは、子供を切望する女性にどれだけの痛みを与えるのか。体も心も傷つけてまで子供を欲する、狂気ではないけれどその覚悟にキリキリと心臓が悲鳴をあげそうになります。不妊治療の描写のせいだけでなく、苦しさで眩暈がして読む手を何度止めたことか。それでも読みきったのは、逃げちゃいけないという意識があったからのように思います。小説を通り越して問題提起されるとは思わなかった。
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三編の主人公は、
いずれも子供を産めない・産まない女たち。
不妊治療、代理母出産、女の性愛がテーマである。
同じ境遇の女性が読むと切ないかも。
同じ境遇でもそうじゃない人も、
すべての女性に読んでもらいたい。
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初読みの作家さん。
しかしですね、散見するキーワードから「優しい恋愛小説の名手」という印象があり、
箸やすめのように、軽くさらさらと気持ちよく読めるかと思ったんですが。
勘違いでしたかね。それとも自分のチョイスがたまたまだったのか。逆襲か(謎
ここ最近読んだ中で、一番むごたらしい本でした。消耗するくらい。
中編3本。テーマは生殖、で良いでしょうか。
冒頭「卵を忘れたカナリヤ」
あまりにも生々しい不妊治療の話。
煽るような感情的な筆致ではなく、淡々と理論的に、それが却ってグロテスクに、
心身ともに傷めつけられてすべてを失っていくヒロインの地獄を描写する。怖。
身も心も痛い。普通に生きている人の無神経さも淡々と責めつけられる感じ。
欲しいのに授からない人の苦しみは、配慮するよう努力せねばと常日頃心がけるが、
ああ、どうすりゃいいのかなあ、と、絶望的な気持ちになることもある。
庶民の暮らし、そんなに大して巨大な楽しみもない中で、
子どもにまつわる喜びと幸せは、ささやかながらも強い光の宝物だ。
それを楽しむことが他者を傷つける場合、どのあたりまで遠慮すれば良いのか。
ここまで病まれると、もう何をどうしたら良いかわからなくなる。
ただ、こういう本はあっても良いと、積極的に思う。
人は誰しも自分の痛みしかわからないのですから、
それぞれ疑似体験のうえで、見える風景が変われば対応も変わるでしょう。
表題作「玉手箱」
これも不妊治療と、その先の代理母の話。
物語としては、これが一番良くできていると思います。
生々しさを突きつけられるのでなく、一般的な距離感で筋と文体を味わえる。
オハナシとして起承転結もちゃんとあり、救いもあるので消耗も少ない。
3作の中でどれかだけ読むなら、断然これがお薦めでしょうな。
ラスト「おとぎ話」
主題は「逆」と言うか、生殖としての性を嫌う奔放なヒロインの話。
前の2作と違って、唐突にエロかったりして、切り替えに困る。
生殖が隠しテーマだろうから、一貫性はあるんだろうけど、どうしてもってこともない。
で、あまり印象がない。
というわけで、軽くは読めなかったし、正直イヤな気持ちにもなりましたが、
得るものもあったと言えばあったので、もう少し読んでみようかと思います。
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******引用******
ね、カオル、美しい作り話でしょう。まるでおとぎ話でしょう。こうしておけば誰も傷つくことはないんだわ。完璧なフィクションよ。どんな真実よりも嘘の方が人を救えるのよ。人生を、人が作るフィクションだと思えば、どんなことだってできるわ。
(中略)
わたしたちのやってることなんて、みんなほんとうで、みんな嘘なのよね。嘘とほんとうの区別なんて、ほんとうはないのよ。カオルと今、こうやって味わっているものだけが、ほんとうなのよ、きっと。だけどこのことだって、今はほんとうでも、あとで嘘になるのかもしれない。それでもいいわ。
―― 『おとぎ話』 p242
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夫婦ってなんだろう?家族ってなんだろう?
不妊治療、代理出産に関わる話。共感できる部分が多々あった。
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不妊治療を続ける女性を描いた「卵を忘れたカナリア」、代理出産によって娘を得た女性を描いた「玉手箱」、愛する夫がいながらも友人夫婦との性に惹かれる女性を描いた「おとぎ話」の3編を収録。
これらを読むと、どうしても主人公に作者を重ねてしまうのだが、作者自身は“子どもを産まない選択をした”のだという。(あとがきより)読む前は、もっと甘くてほんわかした作品を書く人だと勝手に想像していたのだが、実際はもっとシビアな作風であった。作品と、あとがきとを読むと、母性ってなんだろう、と考えさせられてしまう。
☆海燕新人文学賞
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不妊治療や代理出産や
女性独特の性と愛を描いた短編集と謳われていたので
かなりの前傾姿勢でページを開いたんですが。
うーん。
小手鞠さんはなにを描きたかったのかなあって
読み終わった直後も振り返っている今も掴めないままです。
不妊治療はこんなに苦しいんだぞという警告なのか。
はたまた
不妊治療を経験中の女性たちに
「解かってくれている人もいる」という空気穴を作りたかったのか。
産みの母と育ての母との葛藤も
うーん・・・・・・。
女性だからこその本能や欲求がものすごく具体的なので
既婚でも未婚でも出産経験があってもなくても
女性の読者はある程度頷けちゃうだろうなって描写は多かったです。
でもものすごく重いんですよねえ。
なかなか気が滅入る本だったので★2つ。
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なんとなく題名に惹かれ、その内容とのギャップにすごく興味を持って読んだ。淡々と、でも主人公の気持ちをとても丁寧に描いていて、難しいテーマをちゃんと捉えている。
ずんって、体の内部をえぐられるような衝動だったが、本当に読んでよかった。
石女の言葉についての生徒とのやりとりは、苦しかった…
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不妊治療、代理母出産。今の時代と密接に繋がった小説だと感じた。子どもを産むとはどういうことなのか、育てるとはどういうことはのか、自分ならばこの状況に耐えられるのか、様々なことを考えずにはいられなかった。