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ジョン・ディクスン・カーを連想させる作家。全編を縁取る怪奇趣味、謎解きへのプロセス、さらにはキャラの雰囲気から読みやすさまで、“カー色”に溢れているが、決して猿真似というわけではない。むしろ、作品全体の統一感という点では本家に勝るのではなかろうか。これだけガチガチの本格で勝負されると、読むほうも無意味に身構えそうになるのだが、その辺を軽妙な筆致でうまく逸らしてくれるため、ラストまでいいテンポを持続したまま読み終えることができた。難を言えば、事件そのものが少し小ぶりの割りに、それ以上の展開を書こうとして無駄なシーンが目立つことだろうか。トリックは平均レベルだが、舞台設定や構成が巧みなので、それ以上の効果を感じてしまう。自己プロデュースの上手い作家だと思った。
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ツイスト博士シリーズ
ハットン荘に残された呪われた部屋。かつて家族の歴史を書いたハーヴィーが死に濡れた絨毯の謎。現代の当主・ハリス・ソーンの死。呪われた部屋からの転落死。こめかみの傷。妻・セイラの気絶の秘密。
1年後当主となったセイラと婚約者メドウズ医師の存在。死んだはずのハリスの陰。呪われた部屋で何者かに殴打されたセイラの兄・フィリップ。呪われた部屋でのセイラの死。濡れた絨毯の謎。呪われた部屋にあらわれたハリスの死体。死後4日程にしか見えない遺体の謎。
2010年11月3日読了
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怪奇趣味が横溢している、カーが好きというのが全編通じて感じられる作品。
殺害現場(遡って、大叔父が死んだ部屋)の絨毯が濡れていた理由については、三者三様の理由が提示されていて、上手い。
特に第一、第二に関してはかなりスマートで、登場人物が驚いた逆説的な理由とも相俟っておもしろい。
そして問題の三つ目の理由……読んですぐは頭が理解を拒んだなぁ。
ここだけ違う作者のトリックみたいだった。
それしか考えられないとはいえ……いいのか、これで?って印象。
でも、最後までプロットが練られていて、しっかり読めた。
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訳者によるとアルテの最高傑作とのことだけど僕にはそう思えなかった。僕自身の体調があまりよくなかったせいで、数名のメインの登場人物が出てくるけど、作者の視点があちこちに飛んでしまっていて、誰が誰だか区分けするのが難しかったのだ。それにしても、このような偶発的な要素が強い物語はアンフェアな感じがした――そう思ってしまったから作者に敗北したことは、プロローグからはっきりしてしていることだけど。なぜならば、このトリックこそが作者の思惑だったのだから。でもこのようなトリックならば、泡坂妻夫の有名作の方がよくできていると思う。☆☆☆というところ。
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めずらしいフランスの本格ミステリ。ツイスト博士のシリーズで、舞台はイギリス。
おどろおどろしい伝説や予知能力といった超自然的なものと、論理によって(一応は)明快に解かれる謎とが、お互いに引き立てあっている、なかなか面白い作品でした。
ラストでまた冒頭に戻ってくるやり方も秀逸だと思いました。
男女関係の描写などには、どこかフランスの小説らしい雰囲気があり、そっちが面白くて謎解き役の博士がなんとなく影が薄かった気もするけれど、それはシリーズの途中から読んだからなのかもしれません。
もうちょっと読んでみたいシリーズです。
2010/6/24 読了
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忌まわしい過去を持つハットン荘で、今また起こる奇怪な事件。
正統で古典的な本格もの。
最後にすべてのピースがはまり謎解きのパズルが完成するときの美しさ!ラストもよかった。
楽しめる1冊だった。
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2008年版このミス7位。
シリーズ物なのを知らなかったのですが
特に困ることなく読めました。
この作家の特徴なのか、
(事件にはそれ程、関係無く)1人称と3人称が
混ぜこぜな感じで、途中、読みづらいなぁ、と思ったのですが
読み進めるにつれて気にならなくなった。
さて、内容についてですが、サスペンスとオカルトの融合が
うまいことできているのではないでしょうか。
他の作品も読んでみたくなったので、星4つ。
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やっぱ殺人事件だけ起きてそれを名探偵が解決するだけじゃ味気ないよねぇ。だから裏にはラブストーリーは突然にあっても良い、ってこれじゃ火サスか。
でもコナンみたいに最初から最後までほとんど事件に関わってるのに何ら役に立たずに何人も死んでしまうような展開ではなく、その場に居合わせなかったからしょうがないぜよ、という探偵なら許せるよね。
そんなこんなで今回は好きなのに気持ちを伝えられずに紆余曲折を経て最後にはハッピーエンドというわりかしオーソドックスなストーリーにさりげなく殺人事件をまぶしてみたという、そしてその二人を結び付けるためになんか都合よく人が死ぬっぷりが、全体的に硬派な流れに反してちょっと適当じゃね?ってのがむしろ良かった。
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タイトルから示唆されるように、過去に不自然な死が起こった書斎を舞台に、謎の事件が続く。
取り憑かれたように、書斎に閉じ籠り、物語を書き綴っていた、館の現当主の大叔父。
彼の突然の書斎から出た瞬間の死、書斎の暖炉のそばだけ絨毯が水浸し、疑問は解かれることなく、不審死のまま、書斎と共に封印されてきたが、当主の結婚を契機として、封印が解かれる。
この館を舞台として、2組の結婚により住むことになった人々の間で、書斎の開放とともに、過去の不審死を彷彿させるような事件が起こる。
登場人物の因縁めいた関係が絡まり、事件は暗礁に乗り上げるが、地元の警察署長から個人的な依頼を受けたロンドン警視庁警部が、犯罪学者ツイスト博士を担ぎ出し、謎の解明へと向かう。
読み終わる段階になって、プロローグとエピローグに驚くべき秘密が隠されていることを知る。
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全体的にゴシックやオカルト風味たっぷりの雰囲気の中、不可能犯罪?が起こる。
トリック(?)は少し物足りない+力業な気もするが、総じて面白く、安心して読める一冊だった。