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かなりの良著。四〇〇字二〇〇〇枚、八七七ページに及ぶ大著。「予告編」、第一部「原型 ナショナリズムの由来」、第二部「変型 ナショナリズムの最後・後の波」、補論「ファシズムの生成」、結びに代えて「救世主について」。経験可能領域が普遍化してゆくはずの資本制の時代に、なぜ、全く逆の特殊主義=ナショナリズムが生まれるのか?という書物。第一部では古典的ナショナリズム、第二部では現代のナショナリズムが語られている。現代のナショナリズムは、特殊主義にアイロニカルに没入することによって普遍性を担保しようとする運動らしい。はじめとしては、普遍化しようとする社会的審級(普遍化しようとする資本制的な第三者の審級)を否認し続ける運動としての、非-審級的な特殊主義だったのが、反転して、反-審級的な特殊主義として、群れ出した。一見相矛盾するかのように見える資本制とナショナリズムの繋がりを、これほどまで見事に繋げた書物は、他に無いだろう。補論の?(ハイデガーとナチズムの対応の部分)、及び、結びに代えてのラストの最後のページの部分が、うまくよく分からなかった。ラストのラストの続きが気になる。この資本制の徹底された社会の先を描く、近刊予定『<自由>の条件』がとても楽しみである。もちろん星五つ。10.23-11.21.