紙の本
認知考古学に基づく抑制的な筆致
2007/12/04 18:26
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
認知考古学、要すれば「モノ(=発掘物や遺跡)をして語らしめよ」という哲学で本書は貫かれている。その元で、モノの個別の制作者の意図は「分からないものは分からない」と、潔く諦めているのである。そのため、一部逸脱もなくはないが、全般的に実証的ですがすがしい著作となっている。これが、本書の読後感の第一。
さらに、本書では、決して「日本」という国家概念ではなく、「列島」という地理概念で叙述が進む(そもそもタイトルがそう)。ここがポイントで、旧石器→縄文→弥生→古墳と進む時代区分の中で、列島の域内に、文化の「まだら模様」が作られていったことを説得的に説明している。これを見ると、邪馬台国論争なんて、エネルギーを注ぐ価値のある論争ではないという印象を持つことができる。これが、本書の読後感の第二。
いずれにせよ、このシリーズが、新しい日本史像を切り開いてくれそうな、強い予感を感じさせる良書です。
紙の本
松木氏の最新の研究本
2019/07/26 14:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nobita - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読めば、旧石器~古墳時代までがよく理解できる。古代史ファンにはお勧めの本。
紙の本
読みやすく、充実の中身。
2018/09/23 20:18
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投稿者:たまがわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史の流れがよく分かる。
そして読みやすい。
特に、縄文時代から弥生時代への変化については、
列島の地域ごとに分けて考察されていて、面白かった。
遺跡から、人をあやめる道具としての武器がどれくらい発掘されるか、
ということの地域差についても、興味深い。
また当然ながら、日本列島内だけではなく近隣地域との関係性についても記されている。
本書が始まりを旧石器時代から、終わりを古墳時代である五世紀までとしたのは、
『五世紀までは残された文字記録(文献資料)の量や信憑性がまだ十分でなく、
列島の歩みを復元するためには、物資資料(考古資料)に
多くを頼らなければならないからだ。』という。
そのためか、本書の中で邪馬台国や卑弥呼に関する記述は本文にはなく、コラム内だけ。
日本書紀や天皇に関する記述は無い。
それらが個人的には、やや物足りなく感じた。
全体として、良い意味で教科書的な本。
紙の本
心の面からのアプローチ
2008/02/11 23:56
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つぶて - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年の元旦から読み始めたのですが、一年の始まりにふさわしい一冊となりました。
文字による歴史が始まる以前の日本列島の歩みが、発掘されてきたモノや、当時の気象などをもとに読み解かれます。
せまいナショナリズムとか、ふるい進歩的な史観とか、そういう思想的なものによらない、人の心の面からのアプローチ。
小学館によれば「まったく新しい列島文化史」という触れ込みでしたが、受けた印象はそうではなく、とても自然な考え方ではないだろうか、というものでした。
これが新しくて画期的なのだとすれば、この学問の領域はこれからどんどん面白くなる可能性を秘めていることになります。
期待に満ちた一冊です。
電子書籍
列島のあけぼののとき
2024/01/31 17:49
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
青少年向けに多くの書籍を公刊してきた
出版社が手掛けた、本編16巻、
別巻1巻からなる、日本通史叢書の
電子書籍版です。
第一巻の扱うのヮ、旧石器時代から、
巨大古墳の築かれる五世紀迄です。
紙の本
あけぼのの日本って
2024/01/31 17:47
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
青少年向けに多くの書籍を世に送ってきた
出版社が手掛けた、本編16巻、
別巻1巻からなる日本通史です。
第一巻が扱っているのヮ、旧石器時代から、
巨大古墳の築かれる五世紀迄。
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著者の松木武彦さんは1961年生まれ。
つまり、2008年現在段階でまだ47歳。
この若さで『日本の歴史』を執筆するとは、おそれいります。
さて、ページを開くと、まず文字が大きいですね〜(笑)。
少し大きすぎるとも思いますが、これは編集の方針なので仕方ないです。
内容的には結構、斬新で、歴史と気候の変化を絡ませる点は結構参考になりました。
ですが、旧石器〜古墳時代の事象を解くのに「凝り」だけでは、説明が付かないと思います。
そのほかにも、今までの自分の説を白紙にするような言説など、いろいろ問題が多いのですが、考古学が専門に分かれる傾向にある中、一人で旧石器〜古墳時代まで纏め上げることは並大抵の苦労ではなかったと思います。
あと、比較的文章が平易で読みやすいですね。
一般の歴史好きの方には良いのではないでしょうか?
値段も手ごろで購入しやすいしね(・∀・)。
この本を読んで、考古学を好きになる人もいるかもしれません。
というか
いてほしいな (*´・д・)(・д・`*)ネー
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旧石器時代から古墳時代までの約4万年が対象。
当時の気候や土器、墓等の出土品から人々がどのように歩んで行ったかを検証していく。
なによりこの本が特徴的なのが、上記要素に加えて「心の科学」認知科学を用いて既成の解釈に囚われずに、新たなアプローチでこの時代を検証しているところ。
文字による記録がないこの時代のことを、日本列島の形や気候、土器の形状等の証拠と、人間の普遍的な行動を説明している認知科学とを用いて、さながら事件のプロファイリングをしていくように、その時々を推理していく過程はかなり分かりやすく、且つ刺激的だった。
そしてなにより、土器や古墳程度の認識しかなかったのが、本書のおかげで当時を生きていた人々がぐっと人間味が増して身近になった。
そして今後綿々と続いていく日本の歴史の最初のご先祖様としての認識が深まったように思う。
今後のこのシリーズを楽しみさせるに十分の要素をもった第1巻です。
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2008.01.11
結構なボリュームで、ところどころ難解だった……。何年か考古学をやってた私ですらそう思うのだから、基礎知識がない人がいきなり読むときついかもしれない。
でも、この本は、これまでにない新しい切り口で書いていて面白い。考古学はどうしてもミクロな視点で物事を考えがちだけど(なにせ、土器の縄文文様の縄目の組み方がどうなってるかが時には重要だったりする)、著者の松木氏は意図的にマクロな視点で見ようとしている。東アジアの中の「列島」という位置づけであって、これまでにありがちな「日本」というくくりでないところに好感を持った。図や写真も豊富で説得力がある。
私が大学で教わった先生や、発掘でお世話になった先生や、卒論で真っ向から反対意見を書かせてもらった他大の先生(笑)等、懐かしい名前がたくさん出てきて、もう随分時間が経ったんだなあと思った(^^;
それと自分でも意外だったのは、遺跡の名前とその特徴をまだ自分がしっかり覚えてたこと!
遺跡名が出てくると、ああここは有名な絵画土器が出たところだ、高地性集落の代表例だ、でっかい掘立柱建物が出てる遺跡だ、甕棺が有名だ、水田跡が見つかったところだ、等々……。
もうすっかり考古学からは離れたつもりでいたけれど、根っこのどこかに残ってるんだなあと、少しばかりくすぐったいような気持ちにもなったのでした。
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[ 内容 ]
四万年の歩みを一気に描く新しい列島史。
[ 目次 ]
第1章 森と草原の狩人―旧石器時代
第2章 海と森の一万年―縄文時代前半
第3章 西へ東へ―縄文時代後半
第4章 崇める人、戦う人―弥生時代前半
第5章 海を越えた交流―弥生時代後半
第6章 石と土の造形―古墳時代
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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旧石器から古墳時代にかけての数万年を一人の著者が述べるという野心的な歴史書。まだ文字をあまり使わない時代であるため歴史の詳しい部分を語ることができないのはもどかしいが、異物や遺跡を通して断片的ながらと応じの状況を垣間見えることができる
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松木先生の書く文書はほんとにおもしろいです。
大学入学直前に読んで夢をふくらませた一冊。
しかしいざ発掘・整理作業・卒論等をやっていくと、なんだかこの本のイメージからかけ離れてしまっているのが現状 笑
もう一度読みたい。
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縄文中期の信州・諏訪のあたりがとても気になっている。
当時の日本全体の人口が仮に(通説で)26万人ほどだったとして、諏訪、茅野周辺から関東にかけて多くの縄文人が暮らしていた。縄文銀座のようだったのではないか。
黒曜石の採取地、それと気候、このあたりの謎を解く鍵がある。
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2014.2.10
新しい日本史
非文字社会を解いていく方法が示されている
何度もまとめてくれるので、読みやすい。まだ理解はできていないので、折った部分を読んで整理する必要がある。あとがきを読んでから、再読。
このシリーズは面白そう。
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文字による記録がほとんどない5世紀までの日本古代史について書かれた本。
文字資料がない、つまり物質資料しかない時代における社会のあり方や人々の心を読み解こうというのが、本書の趣旨となる。認知考古学という学問があるというのを初めて知った。読み物として非常に面白い。まさにこんな本を読みたかった。
たとえば。地球が寒冷化した時期には無個性なツルンとした土器が増える。なぜか?寒くなると食料が得にくくなるため、同じ場所に定住するのが難しくなる。結果、人の移動が増え、文化の交流が生まれる。これが土器の無個性化に繋がった。。。
面白いけど、推理ゲームの感はある。その説の裏づけとなる証拠を見つけるのは難しそうだ。同じ物的資料からでも、研究者ごとにバラバラな結論が出そうな気がする。