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紙の本
文字通りの「スター名鑑」、あるいは宇宙探査機たちの墓碑銘
2007/10/24 23:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スペースシャトル時代のおわりが見えはじめた現在、ふたたび「宇宙探査」が話題を集めるようになってきたようだ。先頃、打ち上げられた月探査機「かぐや」も順調であることが強く報道されている。それがどう何の役に立つのかはわからないけれど、商業主義の香りが強すぎたスペースシャトルにくらべて、なんだかロマンがありそうだ。そんな時期に、過去の宇宙探査機を一覧できる本書の刊行は、時宜を得たものである。
ただし、本書は網羅的なデータブックではないし、かといって宇宙探査の流れをまとめたものでもない。個々の探査機を3〜4ページ程度で紹介しており、著者があとがきにも記すように、探査機の「スター名鑑」である。著者の関心は、開発者や開発国、探査の成果というよりも、「機」そのものにあるようだ。図版はあまり多くはなく、白黒。探査写真集を期待する人にとっては不満足かもしれない。
しかし、こうして過去の探査機をまとめて紹介したものは、今まではあまりなく珍しい試みではないだろうか。個々の文章はやや不満足な点も残るが、一気に探査機の「人物伝」を回顧してみると、沢山の探査機がさまざまな天体に打ち込まれてきたことを改めて実感できる。米ソの競争があったとはいえ、「よくもまあ、こんなめったやたらに」というのが率直な感想である。
50年も沢山打ち上げていれば、それだけ様々な探査機がある。華々しい成果や映像を送ってきて世間的にも広く注目された者はごく一握りなのだろう。何の成果を送ることもできず、惑星上や宇宙空間、そして大気圏突入で果てた探査機も数多い。地味な働き者がいれば、打ち上げられただけで注目され・喜ばれた者もいる。世間に公開されることなくひっそりと人生をおえた秘密衛星もいる。なんだか人の人生模様を見るようで、そんな擬人化もしたくなる想像力をかきたてる。
日本最初の人工衛星「おおすみ」とは、寿命は1日もなかったとは初めて知った。一方で、ハレー彗星に突っ込んで果てたと思い込んでいたジョットは、その後も生きながらえ地球近くに戻ってきた後、ふたたび別の彗星を観測してその寿命を終えたという。なんだか健気な働き者で、しみじみしてしまう。
宇宙探査機は、研究上の必要性のみならず、国威発揚の役割も強いため、打ち上げ時は何かと派手な報道がなされやすい。しかし、改めてふりかえると、いくら派手な宣伝をしたとしても、忘れられていることのほうが多いようだ。人間も勝手なものである。そんな彼らの冥福を祈って、合掌。
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