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自身の経験から予測する今後の世界経済と米国の地位についての記述が中心。
上巻同様金利の動向に注意を払っているところがデフレ時代に生きたものとしては
新鮮な視点だった。
キーワード「オランダ病」
米国の保険制度、中等教育の貧困は懸念されるが逆に言えばそれくらいしか弱みがない。
民主主義が新自由主義にNOを突きつける可能性を低く見すぎている。
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経済を安定的に成長させるには、インフレを抑え、物価を安定させることが必要。
政府が市場を規制することで、健全な成長が妨げられる。
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下巻は、50年に及ぶ筆者のエコノミストとしての「学習」から得た
知見について述べられている。
資本主義経済が如何に優れたシステムであるか、
経済のみでなく社会全体の不均衡状態に対して如何にこのシステムが
「神の見えざる手」によって調整されるのか?
FRB議長という行政部門にありながら、彼が政府の力でなく市場の力
をより信頼していることが読み取れる。
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さてさて、FRBの元議長のアラン・グリーンスパンの本の
紹介です。
知らない人のためにいくつか解説を入れます。
FRB=アメリカの中央銀行です。英語ではFEDっていう事が多いような印象です。
グリーンスパン=マエストロ(名指揮者、巨匠)と呼ばれ、その一言一言が
経済を動かすと言われていた方です。
そんなグリーンスパンさんが議長を退いてから
経済やその他の事に関して振り返っています。
英語の本の訳って適当な事が多くてあまり好きでは
ないことが多いのですが、この本は訳がまずよかったですね。
それと、大統領と議会の関係、大統領の気質、その他
政治的なものの経済に与える影響から
その他もろもろのところまで非常に詳しく説明が
あって良かったと思っています。
金融に興味がある人、金融業界に進む人一回読んでみると
良いと思います。重いけどw
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世界経済の司令塔として活躍したグリーンスパン前FRB議長が、資本主義や金利についての「哲学」をあますところなく述べる。また、中国の未来、広がる格差、エネルギー危機など重要なテーマを論じ、今後の世界を予測する。(TRC MARCより)
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「オランダ病」:天然資源が豊富でその輸出に頼っていると、その国の通貨が強くなり他の輸出産業は競争力が低下して経済発展が進まない。
フェビアン協会:資本主義の破壊ではなく抑制を目標にして社会民主主義の基礎を築いた。
オランダ病への処方箋:自国通貨を売って外国通貨を買い、市場主導による自国通貨の上昇に対抗する。しかし、これによりマネタリー・ベースが拡大 しそのために通貨供給量の伸び率が上昇してインフレリスクが高まる。
経済的ポピュリズム:第二次大戦後、ブラジルやアルゼンチン、チリ、ペルーで何度も失敗を重ねてきたが、新世代の指導者は歴史から学ばず引き続き ポピュリズム的な単純な解決策に訴えようとしている。
市場機能:個々の市場は複雑に絡み合っているため、ひとつの不均衡を封じ込めると意図せず別の不均衡を次々と引き起こすことになる。 例)ガソリン価格に上限を設ければ供給が不足し長蛇の列ができる。
所得集中の主因:イノベーションと競争の急速な拡大による。技術の進歩に適応できる人材の供給が不足して、スキルの低い人材に対して相対的に上昇 した。
イノベーションのペース:生産性の伸び率は価格の下落率に反映される。つまり、ハイテク製品価格の下落のペースが鈍化しているのは先端技術を応用して生産性の伸びを加速する機会が低下していることを表す。
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難しい。再読しないと。
今後の世界経済・金融市場についての分析。
2030年、世界各国はどうなっているのか?
今、何をしないといけないのか?
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おすすめ度:90点
世界経済の司令塔として活躍したグリーンスパン前FRB議長の初の著作の下巻。
本書では、「新しいグローバル経済を理解するための概念的な枠組み」を提示している。
啓蒙主義者による資本主義の思想の確立から、現代の経済に関する主要な論点をつぎつぎに取り上げている。
特に興味深かったのは「第25章 未来を占う」。
現在の金融市場は、「世界中がネットワークで結ばれ、24時間の取引が可能になるなかで、派生商品やCDO(債務担保証券)などの複雑な商品が増えて、金融商品、地理、時間の枠を超えてリスクを分散できるようになった」と論じているのは注目される。
「(金融市場が麻痺した時期は例外として)市場は、どの時間にもどの日にもスムーズに調整」され、「アダム・スミスの言葉を借りれば『国際的な見えざる手』に導かれているようだ」という。
そして、「市場は巨大化し、複雑になり、動きが速くなっているので、二十世紀型の監督や規制では対応できなくなっている。」「とりわけ優秀な市場参加者ですら、その全貌を理解できない」とする。
そこで、氏は「危機を防ぐためにもっとも有効な対策は、最大限に市場の柔軟性を維持すること」「主要な市場参加者が自由に動けるようにすることである」と論じている。
ジョン・ロックなどの啓蒙思想、アダム・スミスらが発見した人間行動の基本原理は、いまなお市場の生産的な力の働きを司っているのである。
「財産権や個人の権利が効率的に保護されていれば、不確実性が低下し、物質的な豊かさをもたしうるリスク・テークと行動を取る余地が大きくなる。」
「自由市場、財産権、法の支配の拡大が、経済的豊かさにつながらなかった例や、中央計画の強化よって経済的豊かさが増した例は見当たらない。
しかしながら、繁栄を持続するには、法の支配は必要条件であっても十分条件ではない。
文化や教育、地理がそれぞれに重要な役割を果たす。」
資本主義は文字通り「主義」である。資本主義は経済に関する事実である以上に、追求すべき理想なのだ。
そして、「その根源は人間の重要な側面にある」のである。
グリーンスパン氏が将来に対して極めて楽観的なのは、「適応力こそが、人間の本性であり、」「この事実があるからこそ」だといえる。
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訳者がいいのか、この手の本としてはかなり読みやすい方だと思う。
FRB議長を長年務めたグリーンスパンの回顧録。
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下巻は米国を中心とした世界経済の現状と今後の分析に充てられている。目立つのは「創造的破壊」という単語の頻出ぶりで、本人も認めるようにある程度荒々しい、自由な資本主義を信奉しているためなのかもしれない。こうした世界では陳腐化してリターンの低い資本がリターンの高い先端技術に投資されなおすことで社会が発展してゆく。賃金統制や物価統制などの介入は歪みをもたらすだけだとして忌避している。米国の負債が多いことについてはよく議論のまとになっているが、これは金融の発達により、リスクを高めることなく負債を増やせるようになったためで、資産も同じように増加している限りは心配ないという。むしろリスクプレミアムが低くなっていることの方を懸念しているようだが???原油については価格の高騰とは言っても、先物の買いであり、これはまだ産出されていない原油の所有者が先進国に移っただけだとしてあまり危険視していないようだ。インフレはもはや世界的に見られなくなってきており、これは東側諸国をはじめとする新たな労働力の供給による部分が大きい経済の舵取りをする者としては、低インフレ率こそが持続的な成長、繁栄を約束するという信念に基づいて行動しており、目先の景気のために利下げを望む政府とは全く意見が異なる。このへんは日本の状況も同じで、FRBに対してもやはり議会からの圧力は強いそうだ今後については労働時間の伸びが0.5%、生産性が2%弱で実質成長率は2.5% 程度というのが先進国の成長率の限界であろう。インフレ圧力、ポピュリズムの台頭が予想され、FRBがこれに(必要な利上げで?)対処しきれない場合、国債の利回りは2030年には二桁をうかがう展開になるだろう。また、リスク・スプレッドと株式のプレミアムは大幅に拡大し、株の利回りは大幅に高まり、不動産市況は低下する。■市場はウォール街でいう「安眠できる水準」を超えて保有株の時価が変動するのに耐えようとする者に対して、プレミアムを支払う。
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上巻の回顧録調から打って変わって、下巻では著者から見た世界経済の現在と未来が語られている。まずは日本や欧州、中南米など、世界経済のキーとなるような国の経済政策のこれまでの傾向について語り、エネルギー問題や高齢化問題など、今後の世界経済の大きな課題の原因を、新自由主義的な視点から分析している。日本の経済政策に対する分析や、アメリカの教育問題に関する分析など、かなり率直に思ったことを語っているように見受けられる。
ただ、大きな課題設定としては適切だとは思うのだが、その解決は全て新自由主義によるのが適切だと言う単純さは、心霊現象の原因は全てプラズマだ、という思想に似た危うさを感じる。確かに、経済は市場を無視して成立するものではないが、市場は非常に大きな力には容易に屈するものである。市場はその過程において正しいかもしれないけれど、結果が最善とは限らないと思う。
物理学では、古典力学で大きな物体の動きが説明できるようになり、量子力学により非常に小さな物体の動きが確率論的に予測できるようになった。そして古典力学は量子力学の近似として説明できることも分かった。つまり、非常に小さな原子の動きも、それが寄り集まって出来た星の動きも、根本的には同じ理論で説明できるわけだ。この理由の一つは、同じ種類の原子は全く同じ性質を持つことにあると思う。つまり、どの原子を選んでも、種類が同じならば挙動は同じなのだ。
一方、経済学は人間の行動を予測する学問だ。そして経済の構成要素たる人間はそれぞれ異なる。このことが予測を難しくしている。確かに大部分の人は同じ状況では同じように行動を取るかもしれない。しかし、他人より儲けようと思い実行できる人は他人と違う行動を取る。これが経済学が理論として完成し得ない理由の気がする。
さらに問題なのは、大金持ちの経済に対する影響力は、普通の人たちの経済行動をほとんど無視できるほど大きいということだろう。こう考えると、経済における人の集団は必ずしも均質とはいえず、寡数の大資本家の影響によって左右されることもありうるだろう。だから、市場が全体にとって最善の結果をもたらすわけではないと思うのだ。
市場は確かに正しい。しかし、正しくない行動をする人にも最良の結果をもたらすために、より良い経済政策のあり方を探す姿勢は失わない方が良いだろう。
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これを自伝とするべきかは難しい。各地域・国の経済・社会の分析はためになるが、やはり経済危機を招いた認識ではあるだろう。
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中央計画経済(社会主義)もはや経済体制として信頼できない。かたや、自由主義型の資本主義経済がグローバル化して勝利したとも到底いえない。たとえ物質的な豊かさが向上し、過去二世紀において6倍に増えた地球の人口を支えられるようになったとしても、資本主義は依然として受け入れがたいものがある。
資本主義は安定や確実性を求める人間の欲求と衝突する。また資本主義の成果の配分は不公平だと感じ、競争においての原動力は人々に不安を呼び起こす。不安を感じる要因のひとつには、常に失業する恐れがつきまとうことにある。競争により現状、生活様式が大きく変化することで心地よさが奪われることにある(参照P26~)
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大変勉強になった。いろいろと考えさせられた。
資本主義における創造的破壊はやっかいだなあと
感じた。これのおかげで今の裕福な生活があるのだと
しても、これから先もっと裕福な生活があるとしても、
創造的破壊を乗り切れるだろうかと不安になる。
それにしても、グリーンスパンはすごすぎる!
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上巻では主に回顧録の形を取り、グリーンスパン氏の謂わばライフヒストリーを扱っていました。
本下巻では彼の経済観・経済論、国際情勢、今後の世界について等々の、幅広く彼の思想が披露されています。
・・・
もっとも印象が強いのが、彼が強固な自由主義者、レッセフェールを愛する男だという事でしょうか。
その深度たるや、FRB議長にあって、時代が下って陳腐化した不要な規制は定期的に廃止するべきで、実際そうしていたと回顧する部分すらありました(箇所忘れました)。例えばヘッジファンドについてもバランスシートを当局に提出する点については彼は大の反対だということ。曰く、頻繁にポジションを変更するヘッジファンドのバランスシートを、たった一時点の記録を当局に出したところで数分後には変化している可能性が高い。つまり意味がないという話です。
彼はマーケット、神の見えざる手の篤い信奉者です。きっとヘッジファンドに対する規制が無いとして問題にならないと考えているのでしょう。逆に問題になる場合はどういう場合でしょうか。ファンドが過度なリスクを取る場合? でもリスクとリターンが相関することから、ハイリターンを求めるならばリスクを負う側が気を付ければよいだけかもしれません。
ファンドにも購入者にも足りない部分はあるかと思いますが、それこそがマーケットで互いに傷つけあいながら(!?)「ベストプラクティス」が積み上げられることを期待しているように見えました。これまさに自己責任。
但し詐欺はいけません(氏が言っているんですが)。詐欺を防止するルールは当局は厳に取り締まり、それ以外はマーケットに任せるというようでした。
・・・
面白いのは、このレッセフェールをグローバリズムやマクロ経済学にも結び付けていたことでしょうか。
例えば、米国の経常赤字。かつて学校で習ったとき、この原因として高品質で低価格の輸入品を受け入れたためだということでした。グリーンスパン氏の解釈は「イノベーション」ということに見えました。あるいは投資。
日本は経常黒字が多い国ということで、これまた投資した米国債の配当金や利金が多いことが説明として多かったと多いと思います。ただグリーンスパン氏的に説明するならば、もはや日本国内に有望な投資先がなく、投資先がグローバルになったと言えると思います。逆に米国サイドから見れば旺盛な資金需要を国内だけで満たすことが出来ず、海外からの資金を受け入れているということになります。
こうした自由な資金の移動が米国でのイノベーションを生み、そして外国の投資を成功させた、そして地球全体として繁栄を形作った、ということですね。
上手く表現できませんが、とにかく知的好奇心がすこし刺激されました。マクロ経済学は20年前に証券アナリストを取るときに勉強したっきりですが、何か間違えていたらごめんなさい。
・・・
また、今後米国に影響を与えることになりそうな国々にも章を割いていました。
中国、ロシア、インド、そして中南米です。全般的には、個人の権利が確立し、資本主義という市場という「神の見えざる手」が働くところにこそ繁栄があるという見方でした。中国は財産権が曖昧で不確か、ロシアは財産権の概念は為政者により変動する、インドは因襲的で規制が多すぎる、そして中南米はポピュリズムが資本主義に規制を与える、というのが発刊当初の氏の考えのようです。
結構しっかり見ているんですね、という印象。
グローバリズムとか新自由主義とか、弱い人の立場からはけしからんと考えていました。ただ、本作を読むと市場に任せる効率性、規制によるコストを撤廃しマーケットに還元するという考えも理解でき、なるほどと思った次第です。
・・・
ということで戦後では最長の18年以上FRB議長として金利政策をリードしたグリーンスパン氏の回顧録でした。
下巻は氏の思想が中心でしたが、含蓄のある面白い内容でした。哲学科出身にはちょっと難しかったのですが、経済をしっかり勉強した方にはより面白く読んでもらえると思います。
金融関連に興味がある方、経済学(特にマクロないしは計量経済学)に興味がある方、米国や関連の地政学に興味のある方等々にはお勧めできる作品かと思います。