紙の本
「地獄」の風景
2020/08/29 19:18
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な異世界を描いた水木ワールド。表題の「テレビくん」に加え、「河童」、幼くして亡くなった妹と会える死後の世界を描いた「丸い輪の世界」、地底の国に逃れた化木人を探す「化木人のなぞ」、超古代文明を描いた壮大なスペースオペラの「コロポックルの枕」、米の伝来と古代神話的な「最初の米」。とにかく秀作揃いの6編でした。特に超古代の宇宙戦争の顛末を描いた「コロポックルの枕」がお勧め。我々が知っている「地獄」の風景は、宇宙戦争で太古の人類が経験した実話というオチが良かったです。
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SFは得意じゃないと水木しげるは言っていた気がするが、この中に出てくる数編は、SFなんじゃないのかしら??
絵のタッチといい、作品といい、不思議な世界でした。
テレビくん自体も、不思議な発想から出た作品。 テレビの中に米粒大の人間か~~。 奇抜なおもしろい発想だ~。
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■テレビくん 1965年
出世作。
水木式「風の又三郎」。
布枝さんが泣いて喜んだという講談社漫画賞。
■河童 1965年
三平ではない河童もの。
63p、65p、と風景主体のコマが、美しい。
水木の風景好き。
■丸い輪の世界 1966年 ★
幼い妹が行ってしまった死後の世界への入り口。
これは涙腺に来る。
ツイッターで今回知ったが、2016年の水木しげる先生のお別れ会、献花台がこの丸い輪のイメージで作られたんだとか。
しかも京極夏彦発案なんだとか。
■化木人のなぞ 1969年
なんと小栗虫太郎「人外魔境」が原作。
思う存分アマゾンの樹々が描けて嬉しかったことだろう。
そして地下で、諸星大二郎「生物都市」を彷彿とさせる造形のモノと。
調べてみたら、手塚治虫が「黄色魔境」、松本零士が「有尾人」を描いていて、ブームだったんだな、と。
また、マックス・エルンストの『慈善週間または七大元素』を真似ているコマがあるんだとか。編集編集。
■コロポックルの枕 1970年 ★
扉絵にしてから、あ、つげ義春の筆じゃん、と笑ってしまうくらい、好色顔。
浪人生が誂えたように「よさげな女性」と出会うので、いつ一線超えるのかと期待してしまった。
が、話は奇想天外、大情況的SFへと発展し、果ては小松左京や、アイザック・アシモフ「地球幼年期の終わり」かくやという地球の真相が明らかになり、しかも星野之宣にありそうな抒情的壮大さで締めくくられる……こりゃ凄い。
■最初の米 1967年
ヨギとモギという少年の話と思いきや捻られていて、亡者側の視点が結構描かれる。
そして古事記っぽい話へと。
宮崎駿「シュナの旅」も連想できる……共通する何かがあるんだろうな。
なんでも近藤ようこは本作が一番好きな水木作品なんだとか。小学生で読んで以来だとか。しぶい。
◇この世の確からしさへの懐疑 呉智英
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水木先生の漫画は、救いがなくても卑屈になってないところがいいです。
私もテレビくんみたいな生活がしたいなー