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『カラマーゾフの兄弟』における『大審問官』のパートを抜き出した新訳。2007年にだされたもの。読みやすい。わかりやすい。ゆえに本質が掴めない! こりゃあ泥沼に足を踏み込んだなぁ。
16世紀のセビリヤ。神の子イエスがいくつかの奇跡をみせながら町を徘徊している。その様子を眺めていたのは、前日に多数の異端者を火炙りにした老審問官。彼はイエスを牢獄に捕らえ、そこで『自由とパン』について独りごちる。
イエスという人(神?)は、我ら子羊に『自由』を広めたかったのですね。しかし純粋に『自由』を欲するのはよほどのカルトだと審問官。大衆が求めるのは「パン」なんだと。つまりは効率良くパンを配分するリーダーの奴隷になりたいんだと。お前は子羊たちにとって最大の権力者なんだとイエスの矛盾をつく。
だよなぁ。まいったなぁ。完全にパンを目の前にチラつかせられた状況だものなぁ。だとしてもパンにありつけることができたらまだましで、悲しいかな今後きちんと届けてくれるのかしらん? そりゃスーパー行けば半額牛肉は売っているんだが……。
だからだろう、一介のキリスト者のリーダーである大審問官は、大衆の幸せを望んだとき、神ではなく人間を愛した。でもこれってイエスもそうなんだよなぁ。4巻を読み終えたとき、なんらかの答えはでるんだろうか? すべては許されているんだろうか?