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反米大陸 中南米がアメリカにつきつけるNO!(集英社新書)

反米大陸 中南米がアメリカにつきつけるNO! みんなのレビュー

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みんなのレビュー15件

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評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

16人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/03/08 19:30

中南米に左翼政権を続出させた新自由主義の矛盾

投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 米国(本書は中南米諸国家を扱っているので、誤解を避けるためにアメリカ合衆国をこう表記する)は民主主義の国だということになっている。無論、これを文字通りに、いわば純粋に受け取る人はほとんどいない。歴史をひもとけば、この地で黒人差別やアジア人差別が横行していた事実は歴然としているし、そもそも米国自体が、アメリカ大陸の原住民をだまし討ちにしたり虐殺したりして作られた植民地国家だからである。
 しかしそれを別にしても、米国が中南米でいかに横暴に振る舞ってきたかを知る日本人は多くないだろう。この点について分かりやすく解説した新書が出たので紹介しよう。
 現在、中南米には左翼政権を有する国家が多い。自由主義の権化である米国の身近な国家群がなぜ左翼政権になってしまうのだろうか? 答は米国の横暴のためである。米国が過去に中南米の諸国家にどれほど無法な口出しをし、それどころかCIAを用いた裏政治工作や海兵隊を用いた軍事介入を行ってきたかは、本書を読めば一目瞭然である。
 まず、前提として、米国が南北アメリカ大陸をどう見ているかを知らなくてはならない。世界史を高校でちゃんとやった人なら、モンロー主義という言葉を覚えているだろう。ヨーロッパがアメリカ大陸の政治的動きに対して口出しをするのを拒否し、逆にアメリカ大陸側もヨーロッパの政治には口出ししないとする第5代大統領ジェームズ・モンローによる演説のことだ。ふつう、モンロー主義は相互不干渉を訴えているから米国の孤立主義を表すと思われている。ところが本書によるとそれは誤りなのである。あくまでヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の相互不干渉を訴えているに過ぎないから、米国がアメリカ大陸の他国家に口出しするのは構わないのであり、むしろモンロー主義によって米国は自分がアメリカ大陸内の政治を仕切ると暗黙理に宣言していることになるという。
 実際、本書で米国の悪辣なまでの中南米への侵略・介入・政治工作を見れば、それもなるほどと思えてくる。典型がメキシコ侵略である。現在の米国テキサス州はもともとはメキシコの国土であった。しかし人口が少なかったので米国人の入植者が入り込み、お人好しのメキシコもそれを支援した。やがて米国人入植者が多数に及ぶと、テキサス独立の動きが出てくる。有名な「アラモの砦」は、テキサス独立を「応援」するためにデイヴィ・クロケットなどの米国人が駆けつけてメキシコ軍に殲滅された戦いである。この「アラモの砦」をいわば「真珠湾」のごとくに愛国心高揚の手段とした米国は、メキシコを攻めて大勝する。テキサスは独立するが、やがて米国に併合されて州となってしまう。現在は米国領であるカリフォルニアも、同様の手段でメキシコから奪ったものである。
 他方、中南米に左翼政権ができると米国は露骨な介入を行う。例えばチリに1970年、アジェンデ左翼政権ができた。新政権は銅鉱山など資源産業の国有化をはかった。当時銅山はほとんどがアメリカ企業の支配下にあった。それどころか銀行以外のチリの大企業18社はすべて米国多国籍企業の子会社だった。アジェンデ政権の前の政権がケネディ大統領の政策を受け入れて外資導入政策をとったためにそうなってしまったのである。さて、米国はアジェンデ政権の企業国有化政策に対抗して経済封鎖措置をとった。それだけではない。CIAによって反アジェンデ陣営と軍部に資金を供与し、軍部によるクーデターを起こさせる。こうしてチリには抑圧的な軍事政権が誕生し、17年間も続くのである。のみならずアジェンデ政権の閣僚だった人物を暗殺させるなどの工作をも米国はやっている。
 チリはほんの一例に過ぎず、また最近の新自由主義政策の前触れにすぎなかった。1990年代に入ると、新自由主義的な経済政策が米国の圧力によって中南米に浸透し、その結果として地場産業は倒れ、失業者は増え、格差は拡大した。せっかく育ってきた中間層が貧困層に転落してしまう。当然ながら国民の不平不満は高まる。こうして左翼政権が続々と誕生していった。新自由主義が格差拡大によって中南米にイデオロギー的に正反対の左翼政権を生み出しただけだったということは、日本人もよくよく覚えておいた方がいい。
 ことは中南米だけにとどまらない。ハワイにしても、もともとは独立国だったのが、戦略上重要な地点にあるために、テキサスと同じようなやり口で米国領となってしまったものである。当時、ハワイ王は米国の動きを封じようと、明治天皇に王位継承権を持つ王女と日本の男子皇族との結婚を申し入れたが、残念ながら実現しなかった。日本が米国に対する戦争を始めたとき、米国は「真珠湾」を合言葉にしたが、もともとハワイは米国の領土ではなかったわけで、戦争時点ではまだ準州扱いであり、正規の州に昇格したのは戦後になってからである。ハワイの先にある国、それが日本であることは言うまでもない。
 こうした一連の米国の行動を知っておけば、現在の新自由主義政策にともなう日本への要求が何であるかも見えてくるだろう。日本人の新自由主義者がディヴィ・クロケットの役割を果たしていることも明瞭だ。むろん、世界一の超大国をいたずらに敵視するのは賢明ではないし、本書もそんなことを主張してはいない。要するに世界は米国ではないし、米国の侍従でもないのである。米国のやり方に盲従するのは物事を考えない人間のやることなのであって、自国の政策はあくまで自分で決めるという基本を忘れなければいいだけの話である。政治の目標とはいつでも最大多数の最大幸福なのであって、一部の人間だけが富み栄えることではないのだから。

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低い評価の役に立ったレビュー

22人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/03/16 21:13

歪んだ反米本。親米大陸が増殖中であることもお忘れなく!

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

歪んだ本である。著者はいわゆる全共闘世代で、現在は、あの例の「週刊金曜日」にも深くかかわっている御仁である。こういう人物が書いたものであるから、またタイトルからしても、どういう内容かは想像がつくものであるが、読んでみて、まあ、げっそうりさせられるものであった。

まず、断っておくが、本書が己の趣旨に合わせて都合よく切り取った歴史の「事実」の切れ端一つ一つは事実であるということだ。米国の中南米政策は、一言で言えば、アメリカの外交官やCIA関係者が私利私欲と短期的利益のみを目指して、滅茶苦茶やった歴史であり、まあひどいものである。特に、チキータバナナの生みの親ユナイテッドフルーツ社が自社の利益増進のためCIAとつるんで米国の外交政策を壟断した歴史は、傍目に見ても「ひでえなあ」と思えるものヴぁばかりである。ただ米国は19世紀末までは「西部劇」を地で行く国であり、一流の人材は欧州しか向いていなかったので、中南米なんか「どうでもいい地域」と思っていたという事情もある。このあたりの米国の事情含む外交史もきちんと押さえておかないと、なぜ米国の中南米政策が、かくも低級なものに終始したかが理解できないであろう(特に無学のものには)。これは第二次大戦後に米国が行なった崇高な対欧州外交政策(マーシャルプラン等)と比較すれば、「これが同じ国の外交か?」と思えるほどのコントラストである。

米国の外交政策は一般に帝国主義を拒否したエヴァンジェリカルな「正義の政策の体系」であって、およそ私利私欲の政策体系(英国やフランス等の帝国主義)とはかけ離れたものであるといえる。その唯一の例外が米西戦争と、それにともなうキューバ・フィリピン領有の課程で、セオドア・ローズベルト大統領が主導した「棍棒外交」は、いわば米国外交史の鬼子であることは、学のある者には常識の話である。

本書を読んでいると、米国は一貫して私利私欲に駆られた「新自由主義政策」なる「悪の政策」を履行しており、それがゆえに中南米全体を敵に回し、中南米には米国に対する怨嗟の声で溢れかえっているように受け止められてしまう。しかし、こういう「反米史観」は事実は大幅に異なる。

私は1990年代前半に中南米を回った。驚いたのは中南米の貧しさである。当時のアジアは日本を頂点とする東南アジアの雁行的発展のピークあり、大東亜共栄圏が戦後約50年にして現実のものとなったかの状況であった。超円高が日本企業をして東南アジアに集中豪雨的工場移転をおこわしめたのが東南アジア発展の原動力であったのだが、東南アジアに工場を最初に移転し東南アジア発展の契機をつくったのは、実は日本企業ではなく米国企業であって、日本はアメリカの後を追ったに過ぎない。中南米は米国と丁度緯度でいうと日本と東南アジアのような位置付けにある。にもかかわらず私が驚いたのは中南米が経済的にあまりにも米国との関係が薄く、中南米、とりわけ南米は米国ではなく欧州の支配下にあったのだ。憎い憎いアメリカの桎梏を離れ欧州企業の支配下に入れば、じゃあ幸せになれたのかというと、およそそんなことにはなっていなかった。欧州というのは、今も昔も搾取の権化なのであって、アルゼンチンもブラジルも自動車産業はプジョー、フィアット、ルノー、VWの支配下にあり、彼らはとんでもない搾取を南米で行なっていた。償却が50年位前に終ったクズのような金型を持ち込んで時代遅れの自動車を製造し、独占をいいことにそれを法外な価格で現地の人たちに売りつけていた。「ここは共産主義下の東欧か?」私がアルゼンチンに降り立って、最初に感じたのがこの言葉である。南米が豊かになったのは、メキシコやブラジルなど留保条件をつけながらも独自のやり方で米国との交易を大々的に行なった国から順番に豊かになったのである。ブラジル、メキシコ、チリは豊かである。一方、ベネズエラ、キューバ、ボリビアなどは貧しくなる一方である。本書ではボリビアは米国企業に対し反対ののろしを上げたかのごとくかいてあるが、あのとち狂ったモラレス政権が狂気の刃を向けたのは米国だけではない。ボリビアに対する最大の投資国であったブラジルの天然ガス田に軍隊を派遣して接収したのもボリビアなのである。

暗黒の歴史のみをあげつらえば、どの国も極悪非道の国として描くことは可能である。欧州諸国のアフリカやカリブ海での悪行三昧、南米のインディオは人間でなくサルだ(だから殺しても罪にはならない)と真剣に議論した欧州人(アルゼンチンやパラグアイのカフェには今でも山のようなインディオの射殺体に誇らしげに足をかけるスペイン人の狩猟記念写真が飾られているという)、中央アジアで虐殺を繰り返し帝国領土を拡大していったロシア人(モスクワのトレチャコフ美術館にはヴァシーリー・ヴェレシチャーギンの戦争の結末という絵が展示してあるが、これはロシア人がトルコ系諸族の風習を真似て、虐殺した中央アジア人の生首をピラミッド状に積み上げたものを描いたものとされている)を見れば、それは明らかであろう。人類の歴史とは征服と虐殺の歴史なのであって、歴史とは「勝ったもののみが歴史を語る贅沢を許される」という面があるのである。何も米国のみが蛮行を行なってきたわけでない。

それでも、米国は世界中から支持されている。なぜか。米国のみが、フェアで、オープンで、チャンスを提供している国だからである。中南米諸国で豊かになっているのは、過去の恩讐を乗り越えて米国との関係を強化した国から順番に豊かになっている。これは冷厳なる事実だ。

先般、欧州で、あらたにコソボが独立したが、コソボ独立同時に高々とかざされたのはコソボの旗と共にアメリカ合衆国の国旗=星条旗であった。同じことはバルト三国でも起きた。ポーランドでも起きた。グルジアでも起きた。ハンガリーでも起きた。中南米のひねくれた連中が垂れ流す反米音頭をどこ吹く風と、世界には広大なる「親米大陸」が今日も増殖中であることも理解しておかないと、諸君の頭脳も週刊金曜日並みのレベルに留まることとなるであろう。

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紙の本

中南米に左翼政権を続出させた新自由主義の矛盾

2008/03/08 19:30

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 米国(本書は中南米諸国家を扱っているので、誤解を避けるためにアメリカ合衆国をこう表記する)は民主主義の国だということになっている。無論、これを文字通りに、いわば純粋に受け取る人はほとんどいない。歴史をひもとけば、この地で黒人差別やアジア人差別が横行していた事実は歴然としているし、そもそも米国自体が、アメリカ大陸の原住民をだまし討ちにしたり虐殺したりして作られた植民地国家だからである。
 しかしそれを別にしても、米国が中南米でいかに横暴に振る舞ってきたかを知る日本人は多くないだろう。この点について分かりやすく解説した新書が出たので紹介しよう。
 現在、中南米には左翼政権を有する国家が多い。自由主義の権化である米国の身近な国家群がなぜ左翼政権になってしまうのだろうか? 答は米国の横暴のためである。米国が過去に中南米の諸国家にどれほど無法な口出しをし、それどころかCIAを用いた裏政治工作や海兵隊を用いた軍事介入を行ってきたかは、本書を読めば一目瞭然である。
 まず、前提として、米国が南北アメリカ大陸をどう見ているかを知らなくてはならない。世界史を高校でちゃんとやった人なら、モンロー主義という言葉を覚えているだろう。ヨーロッパがアメリカ大陸の政治的動きに対して口出しをするのを拒否し、逆にアメリカ大陸側もヨーロッパの政治には口出ししないとする第5代大統領ジェームズ・モンローによる演説のことだ。ふつう、モンロー主義は相互不干渉を訴えているから米国の孤立主義を表すと思われている。ところが本書によるとそれは誤りなのである。あくまでヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の相互不干渉を訴えているに過ぎないから、米国がアメリカ大陸の他国家に口出しするのは構わないのであり、むしろモンロー主義によって米国は自分がアメリカ大陸内の政治を仕切ると暗黙理に宣言していることになるという。
 実際、本書で米国の悪辣なまでの中南米への侵略・介入・政治工作を見れば、それもなるほどと思えてくる。典型がメキシコ侵略である。現在の米国テキサス州はもともとはメキシコの国土であった。しかし人口が少なかったので米国人の入植者が入り込み、お人好しのメキシコもそれを支援した。やがて米国人入植者が多数に及ぶと、テキサス独立の動きが出てくる。有名な「アラモの砦」は、テキサス独立を「応援」するためにデイヴィ・クロケットなどの米国人が駆けつけてメキシコ軍に殲滅された戦いである。この「アラモの砦」をいわば「真珠湾」のごとくに愛国心高揚の手段とした米国は、メキシコを攻めて大勝する。テキサスは独立するが、やがて米国に併合されて州となってしまう。現在は米国領であるカリフォルニアも、同様の手段でメキシコから奪ったものである。
 他方、中南米に左翼政権ができると米国は露骨な介入を行う。例えばチリに1970年、アジェンデ左翼政権ができた。新政権は銅鉱山など資源産業の国有化をはかった。当時銅山はほとんどがアメリカ企業の支配下にあった。それどころか銀行以外のチリの大企業18社はすべて米国多国籍企業の子会社だった。アジェンデ政権の前の政権がケネディ大統領の政策を受け入れて外資導入政策をとったためにそうなってしまったのである。さて、米国はアジェンデ政権の企業国有化政策に対抗して経済封鎖措置をとった。それだけではない。CIAによって反アジェンデ陣営と軍部に資金を供与し、軍部によるクーデターを起こさせる。こうしてチリには抑圧的な軍事政権が誕生し、17年間も続くのである。のみならずアジェンデ政権の閣僚だった人物を暗殺させるなどの工作をも米国はやっている。
 チリはほんの一例に過ぎず、また最近の新自由主義政策の前触れにすぎなかった。1990年代に入ると、新自由主義的な経済政策が米国の圧力によって中南米に浸透し、その結果として地場産業は倒れ、失業者は増え、格差は拡大した。せっかく育ってきた中間層が貧困層に転落してしまう。当然ながら国民の不平不満は高まる。こうして左翼政権が続々と誕生していった。新自由主義が格差拡大によって中南米にイデオロギー的に正反対の左翼政権を生み出しただけだったということは、日本人もよくよく覚えておいた方がいい。
 ことは中南米だけにとどまらない。ハワイにしても、もともとは独立国だったのが、戦略上重要な地点にあるために、テキサスと同じようなやり口で米国領となってしまったものである。当時、ハワイ王は米国の動きを封じようと、明治天皇に王位継承権を持つ王女と日本の男子皇族との結婚を申し入れたが、残念ながら実現しなかった。日本が米国に対する戦争を始めたとき、米国は「真珠湾」を合言葉にしたが、もともとハワイは米国の領土ではなかったわけで、戦争時点ではまだ準州扱いであり、正規の州に昇格したのは戦後になってからである。ハワイの先にある国、それが日本であることは言うまでもない。
 こうした一連の米国の行動を知っておけば、現在の新自由主義政策にともなう日本への要求が何であるかも見えてくるだろう。日本人の新自由主義者がディヴィ・クロケットの役割を果たしていることも明瞭だ。むろん、世界一の超大国をいたずらに敵視するのは賢明ではないし、本書もそんなことを主張してはいない。要するに世界は米国ではないし、米国の侍従でもないのである。米国のやり方に盲従するのは物事を考えない人間のやることなのであって、自国の政策はあくまで自分で決めるという基本を忘れなければいいだけの話である。政治の目標とはいつでも最大多数の最大幸福なのであって、一部の人間だけが富み栄えることではないのだから。

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歪んだ反米本。親米大陸が増殖中であることもお忘れなく!

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歪んだ本である。著者はいわゆる全共闘世代で、現在は、あの例の「週刊金曜日」にも深くかかわっている御仁である。こういう人物が書いたものであるから、またタイトルからしても、どういう内容かは想像がつくものであるが、読んでみて、まあ、げっそうりさせられるものであった。

まず、断っておくが、本書が己の趣旨に合わせて都合よく切り取った歴史の「事実」の切れ端一つ一つは事実であるということだ。米国の中南米政策は、一言で言えば、アメリカの外交官やCIA関係者が私利私欲と短期的利益のみを目指して、滅茶苦茶やった歴史であり、まあひどいものである。特に、チキータバナナの生みの親ユナイテッドフルーツ社が自社の利益増進のためCIAとつるんで米国の外交政策を壟断した歴史は、傍目に見ても「ひでえなあ」と思えるものヴぁばかりである。ただ米国は19世紀末までは「西部劇」を地で行く国であり、一流の人材は欧州しか向いていなかったので、中南米なんか「どうでもいい地域」と思っていたという事情もある。このあたりの米国の事情含む外交史もきちんと押さえておかないと、なぜ米国の中南米政策が、かくも低級なものに終始したかが理解できないであろう(特に無学のものには)。これは第二次大戦後に米国が行なった崇高な対欧州外交政策(マーシャルプラン等)と比較すれば、「これが同じ国の外交か?」と思えるほどのコントラストである。

米国の外交政策は一般に帝国主義を拒否したエヴァンジェリカルな「正義の政策の体系」であって、およそ私利私欲の政策体系(英国やフランス等の帝国主義)とはかけ離れたものであるといえる。その唯一の例外が米西戦争と、それにともなうキューバ・フィリピン領有の課程で、セオドア・ローズベルト大統領が主導した「棍棒外交」は、いわば米国外交史の鬼子であることは、学のある者には常識の話である。

本書を読んでいると、米国は一貫して私利私欲に駆られた「新自由主義政策」なる「悪の政策」を履行しており、それがゆえに中南米全体を敵に回し、中南米には米国に対する怨嗟の声で溢れかえっているように受け止められてしまう。しかし、こういう「反米史観」は事実は大幅に異なる。

私は1990年代前半に中南米を回った。驚いたのは中南米の貧しさである。当時のアジアは日本を頂点とする東南アジアの雁行的発展のピークあり、大東亜共栄圏が戦後約50年にして現実のものとなったかの状況であった。超円高が日本企業をして東南アジアに集中豪雨的工場移転をおこわしめたのが東南アジア発展の原動力であったのだが、東南アジアに工場を最初に移転し東南アジア発展の契機をつくったのは、実は日本企業ではなく米国企業であって、日本はアメリカの後を追ったに過ぎない。中南米は米国と丁度緯度でいうと日本と東南アジアのような位置付けにある。にもかかわらず私が驚いたのは中南米が経済的にあまりにも米国との関係が薄く、中南米、とりわけ南米は米国ではなく欧州の支配下にあったのだ。憎い憎いアメリカの桎梏を離れ欧州企業の支配下に入れば、じゃあ幸せになれたのかというと、およそそんなことにはなっていなかった。欧州というのは、今も昔も搾取の権化なのであって、アルゼンチンもブラジルも自動車産業はプジョー、フィアット、ルノー、VWの支配下にあり、彼らはとんでもない搾取を南米で行なっていた。償却が50年位前に終ったクズのような金型を持ち込んで時代遅れの自動車を製造し、独占をいいことにそれを法外な価格で現地の人たちに売りつけていた。「ここは共産主義下の東欧か?」私がアルゼンチンに降り立って、最初に感じたのがこの言葉である。南米が豊かになったのは、メキシコやブラジルなど留保条件をつけながらも独自のやり方で米国との交易を大々的に行なった国から順番に豊かになったのである。ブラジル、メキシコ、チリは豊かである。一方、ベネズエラ、キューバ、ボリビアなどは貧しくなる一方である。本書ではボリビアは米国企業に対し反対ののろしを上げたかのごとくかいてあるが、あのとち狂ったモラレス政権が狂気の刃を向けたのは米国だけではない。ボリビアに対する最大の投資国であったブラジルの天然ガス田に軍隊を派遣して接収したのもボリビアなのである。

暗黒の歴史のみをあげつらえば、どの国も極悪非道の国として描くことは可能である。欧州諸国のアフリカやカリブ海での悪行三昧、南米のインディオは人間でなくサルだ(だから殺しても罪にはならない)と真剣に議論した欧州人(アルゼンチンやパラグアイのカフェには今でも山のようなインディオの射殺体に誇らしげに足をかけるスペイン人の狩猟記念写真が飾られているという)、中央アジアで虐殺を繰り返し帝国領土を拡大していったロシア人(モスクワのトレチャコフ美術館にはヴァシーリー・ヴェレシチャーギンの戦争の結末という絵が展示してあるが、これはロシア人がトルコ系諸族の風習を真似て、虐殺した中央アジア人の生首をピラミッド状に積み上げたものを描いたものとされている)を見れば、それは明らかであろう。人類の歴史とは征服と虐殺の歴史なのであって、歴史とは「勝ったもののみが歴史を語る贅沢を許される」という面があるのである。何も米国のみが蛮行を行なってきたわけでない。

それでも、米国は世界中から支持されている。なぜか。米国のみが、フェアで、オープンで、チャンスを提供している国だからである。中南米諸国で豊かになっているのは、過去の恩讐を乗り越えて米国との関係を強化した国から順番に豊かになっている。これは冷厳なる事実だ。

先般、欧州で、あらたにコソボが独立したが、コソボ独立同時に高々とかざされたのはコソボの旗と共にアメリカ合衆国の国旗=星条旗であった。同じことはバルト三国でも起きた。ポーランドでも起きた。グルジアでも起きた。ハンガリーでも起きた。中南米のひねくれた連中が垂れ流す反米音頭をどこ吹く風と、世界には広大なる「親米大陸」が今日も増殖中であることも理解しておかないと、諸君の頭脳も週刊金曜日並みのレベルに留まることとなるであろう。

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