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みんなのレビュー18件

みんなの評価3.8

評価内訳

18 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

崇高な仕事

2008/02/13 23:36

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書の主人公である脳外科医、ヘンリー・ペロウンは、嫌味なほどに幸福な
中年男性である。現代世界最高の都市・ロンドンの瀟洒な家で暮らし、
美しく知的な妻との間にはいまだ愛のあるセックスがあり、娘は詩人、
息子はブルース・ミュージシャン。仕事にも満足していて、週末には同僚と
スカッシュをしたりしている。成功して燃え尽きているわけでも、幸福に
飽きてるわけでもないペロウンを通して描かれるのは、現代の、至るところ
に存在する恐怖と、仕事だ。

911以降の現代では、見えない恐怖はいつもある。世の中には、分かり
合える人間ばかりではないことは、分かり切っている。見えない人間の
恐怖は、意識の構造が違う人間にどう対処するかという切実な問題を
突きつけてくる。炎をあげる飛行機は事故ではなくて狂信者のテロかも
知れず、イラク戦争は誰の恐怖を拭い去るために始めるものなのか、
わからないまま人は集まる。

満足しきったペロウンにさえ、恐怖は至るところにある。
恐怖の源泉は、暴力ではない。見えない意識だ。脳に障害を抱えた
ストリートギャング・バクスターは、暴力的だから怖いのではなく、
意識の構造が違うから、怖いのだ。そして、意識の構造など、
違う人間はいくらでもいる。絶望的なほど、人の意識はわからない。

そこで、仕事がくる。
ペロウンには崇高な世界観がある。物質である脳がなぜ意識を
持つのかを説明できる日が、やがて訪れるという信仰だ。どれだけの
時間が掛かるかはわからないが、科学者と研究施設が存在する限り、
説明は洗練され、人々に受け入れられていく、ペロウンはそれだけを
信じて、今日も手術に没頭する。

本書のマキューアンの仕事は、手術のように意識を執刀し、開示する。
そこには、意識に対する、あえて言えば言葉で意識を説明することに
対する、自負と執念がある。それはさらに、人間に対する深い信念と
言い換えてもいいと、私は思う。その仕事には崇高なものがある。

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紙の本

前作『贖罪』で到達した「様式美」「官能性」「文学的野心」の調和、それを別の形と価値で再現させた現代英国人紳士の一日を描く小説。ダロウェイ夫人さながらに……。

2008/05/13 13:08

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 世界的ベストセラーとなった前作『贖罪』が「つぐない」という邦題のついた映画として公開されている。美しい映像になっただろう、しかし、あの生々しい戦争描写はどう撮られているのかなどと思いながら、まだ観に行けていない。
 マキューアンの小説は『アムステルダム』『愛の続き』だけ読んで、書かれた中身よりもむしろ、どういう表現で、また、どういう構成で書くのかという「様式美」の追求の方が気になってしまった。「イースト・アングリア大学創作科で修士号取得」という経歴って、いかにもそれっぽいよなあ、アカデミー臭ある小説だよなあとイメージを固めてしまった。
 しかし、『贖罪』は、その様式美の骨張り具合が奥に引っ込み、「官能性」を享受する肉体の豊かさが前面に出てきて、さらに、もう一歩というところで生理的嫌悪にもつながりかねない生々しい調子で酷いものも書かれていた。その酷いものとは、肉が腐り、血が凝固して放つ匂い、尊厳もなく滅び行かされる人間たちの無念といった、戦争がもたらす悲惨である。戦争を舞台に恋愛や人間関係のドラマを書こうというのではなく、その生々しさにどこまで迫れるのかという「文学的野心」が見て取れた。
 これら「様式美」「官能性」「文学的野心」が最高のバランスを取って、『贖罪』はマキューアンの最高傑作として君臨したのではないかという印象を持った。そのあとにきた『土曜日』はどの程度のものなのか、読んでいてどうしてもチェックしたくなるのは、その3点である。

 判定結果を明かすように先に書いてしまうのも野暮な振る舞いだが、最高傑作と同程度とは言えないまでも、書く素材を現代のものとし、「今読む価値」を付加することで、『贖罪』と同じ尺度での比較を阻む――それにより『贖罪』に劣らないパフォーマンスに持ち込んでいる。これはやはり小説のアルチザン、マキューアンの知的勝利だとシャッポを脱ぐ。いや、そう言うよりも、そのような文学的野心で新作を出してくる気概ある小説家の作品を同時代人として読めることを光栄だと言って良い。
「様式美」は、精緻だがごく自然なプロットの流れのなかで、ときどき光を放つように計算されている。「ああ、あれがここへこうつながってくるのか」……と。
 ロンドン未明、土曜日の午前4時半、脳神経外科医のヘンリー・ぺロウンは充実感と愉しい感覚ですっきりと目覚め、寝室の窓のシャッターを開ける。そこで彼が目にした異形の物体は、現代の先進国人、とりわけ知識人層が共通して抱える「世界への不安」へとつながっていくものである。朝の異変に対するこの不安から始まり、その日の夜が、翌日曜日の朝の彼方へと過ぎ去って行くまでの丸一日の出来事がじっくりと描かれているのだが、出来事の合い間には、ぺロウンという人物、彼を取り巻く家族や同僚、友人、新たに登場する敵などについての執拗なまでの描写が差しはさまれる。
 成功した50歳目前の男性の一日を描くという試みは、社会的地位のある女性の一日を「意識の流れ」から書いたウルフ『ダロウェイ夫人』をどうしても思い出させる。ダロウェイ夫人の生きた前世紀前半1920年代のさわやかな6月の一日ではなく、9・11テロの1年半後のある冬の一日を書いてみようということに、作品内でのみ完結させる様式美だけでなく、他作品との対照をも含めた様式美も意識されているのではないかとも思う(誰か確かめてみてくれるといいのだけれど)。例えば、ダロウェイ夫人は50歳を2つ越しており、ぺロウンは50歳の2つ手前。この年齢の設定、そして、ふいにその日現れることになった人物との絡み、功成り名遂ぐような立場となっても決して拭うことのできない不安とおびえといった共通点だけでも十分ではないか。このような名作の投影も、あるいは「文学的野心」につながっていくのかもしれない。
 次に「官能性」という点。『贖罪』では、これから人生がどう転んでいくのかが伺い知れない若いふたりの情熱が、一気に火柱となって燃え盛るさまを劇的な場面のなかに描いた。情熱が結ばれる場所がふたりにとって意味ある場所だということのほかに、結ばれた事実が人に知られるところとなることが、運命の転変へとつながっていく。そういう意味での劇的要素もある。一方、『土曜日』で描かれるのは熟年夫婦の日常的に繰り返される性の営みである。これが極めて官能的で幸福に満ちたものとしてけろりと書かれていることについて、少なくはない読者が「本当かよ。世のなかには恵まれたヤツがいるな」と揶揄したくなるほどの官能性で(笑)、それにより、どこかハレの祭儀めいた若い性とケの習慣めいた年配の性との幸福感の違いを描き分けることにマキューアンは成功したのだと思う。
「文学的野心」については先ほども名作の投影ということで触れたが、それが一番強く感じられるのは、外科医の手術室で2年にわたり見学をし、詳しい取材をこなした上で書いたという脳神経外科の処置の描写だ。言葉でどこまで描き切れるかという気迫が感じられる。脳のなかをぱかっと開けた映像を見せられるよりも気持ちにぐっとのしかかってくるのではないかというぐらい細緻、且つ生々しく書かれた部分もあり、その方面は苦手だという読者にお薦めできる本ではない。
 そして、おそらく手元が1ミリ狂うことも許されない脳外科医の生活と意識を借りてまでマキューアンが表現したかったのは、現代につきまとう、このそこはかとない不安である。これから数年先、数十年先、私たちの暮らしはどうなるのか。私たちが生きる社会はどのように変貌するのか。それも好転はあまり望めそうになく、次第に閉塞していく気配が感じ取られるなかで、私たちはうまく堕ちて行けるのか。だが、しかし、そういった不安と恐怖をうまくすくいとりながらも、マキューアンが最後に出す答えは決して否定的ではない。
 前に私は別の場所で書いた。同志よ、共に朽ち果てるまで、それぞれの場所でがんばろう――これ的な思いが伝わってくる結末が、悪いものではない。

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紙の本

突然の墜落

2020/07/16 09:19

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

社会的な地位と家族に恵まれた主人公が、あの朝に見た燃える飛行機が不吉です。ある日突然に崩れ去る日常と、人生における成功の儚さを痛感してしまいました。

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紙の本

読んでいて不快になる本にはいくつか種類があります。文章が下手、考え方が嫌い、でも一番は主人公に魅力がない。娘が犯されそうになっても指をくわえている父親、そりゃないでしょ・・・

2008/06/03 19:44

11人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

大きな勘違いをしていました。マキューアンって男性だったんですね。『アムステルダム』を読んだのが1999年ですから、ほぼ10年間、気づきませんでした。『贖罪』で分ってもよかったのでしょうが、あれは少女の罪を扱っていたので、素直に女性が書いたと思っていたし。今度だって、著者の写真を見なければ、女の人が書いたお話だと思い込んだままでした。

桜庭一樹の性別は案外早く特定できましたけど、マキューアンの10年というのは長い。パンダの赤ちゃんじゃないんだから、なんて反省しきり。こうなると夫と娘たちのことも何だか確信がもてなくなってきて・・・。閑話休題。

大変難航した本です。何度か読むのを止めようか、と思ったほどです。といっても小山太一の翻訳が悪いわけではありません。清潔感溢れるクールな訳文は、この本に相応しいものといえます。問題は、物語の展開にあります。ともかくテンポが緩やかで、ジェットコースター・ノベル漬けの私には合わないとしかいいようがありません。

すわ、航空機事故か、それならアニータ・シュリーヴの『パイロットの妻』になっちゃうけど、カバー折返しのMichiko Kakutani(ニューヨーク・タイムズ)の言葉に「9.11以降を扱った小説の中でもっとも力強い。」とある以上、それっきゃないでしょ、なんて思うと、これがどうもそうなりません。

ともかく、その表現がまだるっこしい。事故じゃないなら、そうはっきりと書けよ!なんて思うわけです。文章全体がウジウジしている。なんていうか、こういう男の腐ったような文を読んでいると、どこまで話が進んだかも分らなくなって、ただ機械的に目が頁の上を流れるだけ。それが嫌で、二度ほど積読状態に戻しました。

で、この度、やっと完読したわけですが「ウジウジ」「男の腐った」といった印象は間違っていませんでした。主人公のヘンリー・ペロウンという48歳の脳神経外科医、これがヘタレなわけです。優れた技術を持った医師であることは確かですが、そしてそれに見合った優雅な生活を送っていることも事実ですが、この男には社会に対する責務とか、夢といったものは微塵もありません。

ともかく、自分さえ安全であればいい、そういう人間です。妻となる女性との出会いもそうですし、自動車事故の処理も、家族に加えられる暴漢たちへの対応も、その体現としかいいようがありません。読みながら、男性への嫌悪感ばかり募ってしまい、読書の楽しみは少しも感じられないのです。バカか、お前は?と何度も言いそうになります。

無論、それを楽しむことはできます。これぞ現実、という人もいるかもしれません。でも、後半の暴力シーンなどはリアルというよりは絵空事といったほうに近い。確かに、巷に暴力は溢れ、家で住人が殺されるといった事件も相次いでいます。でも、こうして書かれるとどこか作り物めいています。小説より映画のほうが表現方法としては合っている、私はそう思います。

装幀関係のデータを書いておけば

Object by Yoko Inoue
Photograph by Tatsuro Hirose
Design by Sinchosha Book Design Division

です。カバー後ろの文章は

ロンドン未明、午前4時。
ざわめく心を秘めて今日が始まる。
安らかな日曜日へと到るはずのその日は、
だが不安な予兆に満ちていた――。
名匠の優美極まる手つきが冴えわたる最新長篇。

で、その下に出ている若島正の要約がすばらしいので、そのまま写しておけば

土曜の一日、優秀な脳神経外科医として幸せな生活を送っている男に、様々な想念が去来する。グローバルなテロの脅威から、国内の政情、さらには妻や子供たちのこと、認知症を患う母親のこと・・・・・・。彼の心理にこっそりと忍び込み、やがては具体的なかたちとなって目の前に現れてくる恐怖を、マキュアーンはあざやかな筆致で描き出す。そのデリケートな指先は、不安に満ちた現代の世界に生きる人間の病巣を、的確に探り当てているのだ。

となります。カバー折り返しの案内からは、内容がわかりやすい Saturday の文章をコピーしておきましょう。

ある土曜日の朝4時。ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向う飛行機を目撃する。テロか?まさか?弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘・・・・・・充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた――。名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きる全ての人に贈る、静かなる手紙。

感動はありません。胃が痛くなるような不快さを感じるお話といったほうがいいでしょう。自分でお確かめ下さい。

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2008/11/18 22:43

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2010/05/10 16:38

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2010/06/08 23:30

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2010/09/12 17:36

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2010/10/02 17:28

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2011/02/27 00:14

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2011/05/17 22:23

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2011/07/01 16:21

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2009/11/14 09:25

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2012/03/24 23:14

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